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「そうそう。もう一つ理由があった」

「何ですか？」

夕は立ち上がる、こうして見ると分かるが少年のほうが背は高いらしい

少年はニヤリと人より鋭い犬歯を覗かせる

「お前が美味そうだな〜と思って」

「え？」

突然こんな事を言われたら誰だって混乱するに違いない。実際夕もそうだった

「そ、それってどうゆう・・・」

「そのまんまの意味だ」

少年が歩き出し一歩一歩夕に近づいてくる

「俺さ・・・昔は人喰ってたんだよなぁ・・・。守り神に祀り上げられても人の味が忘れられなくてさ・・・そこにお前が来た・・・本当に嬉しかったよ」

「最初からそのつもりで・・・！」

迫ってくる少年に夕は後ずさりで距離を保つ

夕の問いに頷いた直後少年の体が光に包まれた

その光の塊はどんどん大きくなっていく

それを見た夕はとっさに走り出していた

「冗談じゃない！！」

叫びながら足を動かすと、少年の姿はすぐに闇に包まれ見えなくなる

「ウォオオオオオオォォォォォォンン！！」

背後から狼の遠吠えが響き、後ろを振り返ると・・・

高さが夕の身長の３〜４倍位ありそうな狼が、闇の中から現れ銀色の毛並みを揺らしながら追いかけてきていた

「逃さんぞ人の子。止まれ」

「うわっ！」

ドシャ！

止まれという言葉を耳にした瞬間足がもつれ転ぶ

そこに狼が追いついた

「まったく・・・大人しく喰われろ」

「う・・・ああ・・・」

狼の巨大な右前足で仰向けに押さえつけられると、銀色で巨大な顔が目に入る

二つの黒いまなざしは怯える獲物を映し出していた

「さて、どうやって喰ってやろうか」

「た、たす・・・助けて・・・・」

狼は舌なめずりをしながら顔を近づける

夕は必死に足の下から抜け出そうとしているが、それがかなうはずもない

「まずは味見だ」

ベロリと夕の顔を舐める

「うう・・・」

「中々だな」

ベロリ・・・

唾液に嫌悪観を示しているとさらに舐められる

「どれ、歯応えは・・・」

「や、やめろ！」

「うるさい・・・」

狼は夕の右腕を深く銜え込むと牙を突きたてた

「うあっ！痛い！！」

牙が腕の皮膚を突き破り血が流れ出す。狼はその血を一滴も逃さんと言わんばかりに執拗に舐め取る

「もうそろそろ私の口に収まってもらおうか」

「嫌だ・・・嫌だ・・」

狼は拒絶の言葉を無視し右足をどかすと夕の上半身にがっぷり噛み付いた

「うわああ・・・」

狼はそのまま上を向き口に収めると夕をその鈍重な舌で舐め回す

その舌使いに夕の体力はそがれていった

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