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幼さ故に − 旧・小説投稿所A
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幼さ故に

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「なんで帰ってこねぇんだよ……」

研究所のトイレの個室で、研究員は恨めしそうに呟いた。
リーダーが研究室に向かった後、残された男と研究員は車で逃げようとした。
ところが車のキーはリーダーが持っており、逃げられなかったのだ。
今となってはそのまま走って逃げれば良かったと思うも、気が動転していた二人はその考えにいたらなかった。

「あの野郎、まさか逃げたのか?」

研究員は手に持っている銃を見つめる。
もともとこの銃は男が持っていたのだが、車のキーを取りに行かせるために隙を見て奪って脅したのだ。
ひょっとしたらリーダーと男は二人で逃げたのかもしれない。
畜生、だとしたら今の俺はあの化け物と二人っきりだ!
どうする?
このままじゃジリ貧だ。
よし、移動するか。
そう思った研究員はドアの取っ手に手をかける。
ところがその時、外から物音が聞こえてきた。
もしかして奴が来たのか、と研究員はガタガタと身を震わせる。

「オイ、俺だ。車のキー持ってきたぞ。早く出てこい」

それはキーを取りに行かせた男の声だった。
なんだ、あいつかよ。
研究員はドアを開いて外に出た。

「さっさとずらかろ−−」

トイレから出た研究員は絶句した。
何故ならそこには返り血で赤黒く染まったコタロウがいたからだ。

「ば、馬鹿な……」

研究員はその場にへたり込む。
あれはあの男の声に間違いなかった!
でも現実はこうしてコタロウが目の前にいる!
有り得ない!
何故だ!?

「オイ、お前。オイラは犯罪者は絶対許さないからな」

コタロウはもはや元の色が何色だったのか分からないほど返り血に染まっている顔を研究員に近づけた。

「どうしてここが分かったんだ?」

「匂いだ。オイラは色んな生き物の良い所取りしてるからな」

その台詞を聞いた研究員は驚愕した。
確かにコタロウは様々な生き物を掛け合わせた合成獣だが、まさかこんなに能力を使いこなせるとは。
おまけに知能は人間並み。
おそらくさっきの声はコタロウがあの男の声を真似したんだ。

「よくもオイラを売り飛ばそうとしたな」

コタロウは憎悪に満ちた目で研究員を睨みつける。
そしてコタロウは研究員を抱き上げ、ぐぱぁ、と口を開いた。
牙にはところどころ血が付着しており、吐く息は鉄のような血の臭い。

「あ、が……」

研究員は命乞いをすることすらままならなかった。


コタロウ「次は佐藤さん視点に切り替わります」

佐藤「私のトラウマタイムか……」
<2011/07/26 23:02 とんこつ>
消しゴム
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