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エンペラーフェスティバル − 旧・小説投稿所A

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エンペラーフェスティバル
− Anaconda and Dust room −
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三人のボスが崩れ、路頭に迷うメンバー達。悲運にも逃げ遅れ
た者は、あと始末係(自称)のカイオーガの腹に収まる。非力
な団員は問題なく胃へ流し込むが、抵抗する輩は・・



「な、なんだこりゃ…出せ、オイ!!!」

「う〜ん…気が向いたらね?」

80mの舌が収納される、胃袋とほぼ同じ大きさの空間、舌袋へ
送り込まれる。ピンク色の大蛇がぬぷぬぷと蠢いており、まさに
舌肉の海だった。蛇の飼育ケースに放り込まれたような感覚に、
団員はパニックになって肉壁を叩く。


ちゅぷ…ぬよっ…にゅちゅ…っ…

「き、気色悪い….や、っやややめろぉぉぉっ!!」

ただでさえ息苦しい袋の中だ。身動きなど満足に出来はしない。
その上、舌肉の海に引きずり込もうと、唾液をかぶった舌が体当
たりしてくる。一瞬でも油断して捕まれば….もう、逃げられない。


むぎゅっ…ぷぅ…どちゃぁ…にぷっ…

「ああっ…!!!」

悲鳴を上げたその理由。ふと膝の辺りを見ると、舌が螺旋状に
巻きついていたのだ。人間では太刀打ちできない力に締め付けら
れ、脚がミシミシと唸りを漏らす。でも…柔らかい。


「はひっ…だめだ….やめて…えっ…」

命の危険を感じ、舌の他の部分に抱きついて耐える。
だがこの舌袋は…ヒトの命を奪うような行為はしない。ただ
獲物を永久的に埋もれさせ…保存するのだ。毎日、催眠効果
のある唾液を塗りたくって・・



ずぶっ!!

「あっ…」

ぬちょぬちょと嫌らしい音を奏でる海に、とうとう踵が呑み込ま
れてしまう。そして連鎖的に、膝…太もも…腰…腹…胸までが、
重い風船のような肉質の海に埋まった。必死でどこか取っ手になり
そうな部分を探すが、体内環境にそんな所はない。



「ぶはぅ…だ、誰か…!!」

ぶにゅ…!ぶにゅ…!
くちゅっ…ズブブ…


吸収されてしまう衝撃を与えながら、団員の顔は舌海の中に
沈んだ。顔面に柔らかい肉の感触が押しつけられ、勝手に心地
いい声を出してしまう・・

最後に伸ばした腕も、舌はしっかり巻き取ってから呑み込む。
舌肉の海面には、ついに誰もいなくなった。過去に沈められた
獲物も含んで、みな永遠のマッサージを施されている。






「さてと…そろそろ眠ってくれたカナ?」

心臓の反対側に位置する、ぷくっと膨らんだ舌袋。カイオーガは
そこを撫で終わると、さらなる夜食を求めて廊下をさまよう。
南館のメンバーはほぼ全員狩り尽くしたため、やる事がなくなったのだ。


「一応、連絡しとこうか」

脳に意識を集中させ、強い念力を送り飛ばす。





===========


「お…!」

「どうかしたか?」

「南館のカイオーガから伝言だ。こっちは任務完了、だとさ」

「ぶ…無事だったのか….」

「…フフ…あいつは隕石が落ちてきても生き残るぞ、きっと」

軽い冗談に口元も緩む最中….笑いあう二匹の眼が、いきなり
変貌した。どちらも周囲に気を配り、見えないその何かを探し
出そうとしている。

「….感じるか?」

「当然だ….この覇気、確かロケット団の…」

二匹の身に染み渡ってくるオーラ。それは言うまでもなく最後
の敵・サカキの物だった。霊タイプのギラティナはもちろん、
バビロンにも全属性の力がプログラムされている。ただ・・・


「場所が分からないな…この部屋の中か?」

「いや、おそらく隣だ。確か倉庫だった気がするが…」

いくら繊細な能力でも、巧妙に隠された姿までは見つけられ
ない。二匹は漂ってくるその気配を頼りに、扉を抜けて隣の
部屋、『ポケモンリーグ 122号倉庫』と書かれたプレートの
前に立った。ゴクリと唾を呑み、息を合わせて扉を吹き飛ばす。


ドギュゴォオオオオン!!!!
…バタン!!!

金属製の重いドアはいとも簡単に蹴破られ、盛大な音を立てて
床に倒れた。二匹は呼吸を止め、素早く中に入り込む。倉庫と
言うだけあって、電池の切れた蛍光灯がチカチカと不規則に点滅
していた。ホコリだらけの窓からは、月明かりが寒々しく射し込んでいる。


「ゲホッ…ど、どうなってるんだここの清掃管理…!!」

「私に言うな….おい、大丈夫か!?」

バビロンが突然、床に手を着いて咳き込む。喘息でも起こした
ように息は荒く、ゼーゼーと喉から妙な音もしている。ギラテ
ィナはとっさに原因を見つけると、急いで倉庫からバビロンを連れ出した。


「…ホコリは人工竜の天敵だな。お前も所詮はコンピュータ…という事か」

「な…ゲホッ…ゲホッ!!」

電子機器にホコリは禁物だ。バビロンをクリーンな廊下で休ませ
たまま、ギラティナは再び倉庫の中へと足を踏み入れた。額の金の
リングが、キラリと蛍光灯の光に煌めく。



ガチャガチャ…ギシッ…ガチャン!!!

「(何か踏んだか…?)」

しかし気にかけている時間はない。ロケット団最強の砦が、この
ボロ倉庫の奥に潜んでいるのだ。『Gaia Memory』と書か
れた箱を蹴りとばし、ギラティナは更なる闇へと進んでいく。
ふと振り返ると、入口の光が別世界のように遠くに見えた。




「懸賞金ゼロ。それにして戦闘力はカイオーガを上回る危険因子…か。
君もなかなか手強いようだな」

「な…どこだ…!!」

幽霊のように囁かれる声。それは聴き間違いなく、あのサカキ本人
の声だった。ギラティナは即座に辺りに目をやるが、あるのは薬品
やドラム缶ばかり・・

「どこを見ている。捜索能力は乏しいのかね?」

「…好きに言えばいい。
いずれ姿を見せないと、お前も私に攻撃できないぞ」

眼を閉じ、全神経を働かせて居場所を探る。声の方向から探知
しようとしたが、まるで全方位から響いている声だった。ふぅと
諦めの溜め息をつき、ゆっくり眼を開ける。


「…逃げずに出てこい。一騎討ちしようじゃないか」

「ほう…意外と勇敢だねギラティナ君。敵ながら敬意を表するよ」

「それはどうも」


瞬時に感じた……上だ。
ギラティナは赤い爪を輝かせ、天井にシャドークローを見舞った。
強烈な一撃を受け、コンクリートの天井がゴロゴロと砕け落ちてくる。




「いやーたいした腕前だね君は。
噂ではあのカイオーガの師匠…とも聞いているが?」

「…お前は世間話をしにきたのか?」

「おっと失礼、ご機嫌を損ねたのなら謝罪しよう。
お気付きだろうが目的はもちろん…占拠だ」

白い銃弾が二発三発と飛んでくる。ギラティナはそれを軽快に
かわすと、右翼をバサッと広げて回転した。

『四面楚歌!!』

翼による遠心力を使った斬撃は、円のように周囲に広がっていく。
鉄壁をスッパリと切り裂く威力だったが、サカキはそれを避け切
ったようだ。



「期待どおりの相手だ…久々に本気を出させて頂こうか」

サカキは清楚なネクタイを締め直し、
スーツの懐からメモリを抜き取る。



「…….消える覚悟は、できたかね?」

「お前がな。」


キチッ…『ATOM(原子)!!』





<2011/07/26 23:39 ロンギヌス>消しゴム
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