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【保】敵討ち − 旧・小説投稿所A

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【保】敵討ち

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「しかし意外と気持ち良いな」

「何を馬鹿なことを!」

王の言葉を聞いた大魔導師は声を荒げるが、実際のところ気持ち良かった。
ただ認めたくはなかった。
何故ならここは――

「うぼッ……!」

不意に自分たちを取り囲む柔らかい壁が動き始めた。
全身を揉まれ、喘ぐことしかできない二人。
しばらくは極楽のような時間であったが、やがてそれが逆転する時がやってきた。
何やら液体がどこからともなく滲み出てきたのだ。

「熱ッ!ギャァアァーッ!」

それは胃に入った食べ物を溶かすための胃液であった。
そう、二人は言わば食べ物。
食べ物が辿る運命はただ一つ。

「くっ……!」

大魔導師はそれに抵抗しようと攻撃系の魔法の呪文を唱えようとする。
しかし

「カハッ……!」

口を開いた瞬間に胃液が入り込み、大魔導師の喉を焼き尽くしてしまった。
どうやら王も同じように喉を焼かれてしまったらしい。
二人は悲鳴を上げることすら許されずに、ゆっくりゆっくりと溶かされていく。
胃液に麻酔作用などあるわけもなく、二人に筆舌しがたい激痛を与える。
だがやがてその苦痛から解き放たれるときがやってきた。
……まあその時二人は原形を留めていなかったのだが。

「……そろそろ体を戻すぞ」

まるで二人が完全に消化される頃合いを見計らったかのように黒竜は口を開いた。

「分かりました」

少女は静かに目を閉じる。
それから数秒後。

「元に戻したぞ」

本来の姿に戻った黒竜は、同じく本来の姿に戻った少女に手を差し伸べた。

「ありがとうございます。おかげさまで復讐を果たせました」

少女は黒竜に深々と頭を下げる。

「……ところで、これからどうするつもりなのだ?」

黒竜は少女に問い掛けた。


「では最後にもう一つだけお願いしたいことがあります。私を食べてください」

少女の願いに、黒竜は目をぱちくりとさせる。

「……それはどちらの意味だ?」

黒竜の戸惑う様子に今度は少女が目をぱちくりとさせた。

「……!文字通りの意味の方です!」

「なんだ、そっちの意味か」

黒竜は少女を優しく掴み上げた。

「では聞くが、お前はもう“この世”に未練は無いのだな?」

「はい。家族も召喚士一族もいなくなったこの世に未練なんてありません」

「ならばお前の命は私の手中に委ねられたと解釈していいのだな?」

「……?はい、そうです」

少女は黒竜の回りくどい言い回しに疑問を感じる。
しかし頭上の黒竜の口が開いたのを見て、それ以上深く考えるのはやめることにした。
すごい迫力であったが、不思議と恐怖を感じていなかった。
大きな舌が少女の体にそっと巻き付く。
そしてそのまま口の中へと引き入れた。
いったいどうやって私を食べるつもりなんだろ?
どうせなら一思いに噛み砕いてほしいな。
食べられる前にその辺りも希望しておけばよかった、と少女は後悔した。
そうしないうちに舌が動き始めた。
温かくて大きな舌が少女を包み込ま、やがて愛撫するかのように丁寧に少女の全身を舐めあげていく。
少女は徐々に心に温かい何かが入っていくのを感じていた。
それは復讐のために捨て去った『優しさ』であった。
黒竜の愛撫によって少女のボロボロになって心が修復されていく。

「ありがとう……」

少女の意識はそこでぷっつりと途切れた。



<2011/12/09 22:22 とんこつ>消しゴム
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