2.


 ――雀の鳴きわめく声で、目が覚めた。
 朝チュンとはこのことか、と恐れ戦いたが、そうでもないらしい。
「ん……」
 寝惚けた吐息は鳥の鳴き声と木の葉のざわめきにかき消され、喉の震えだけが微かに残る。視界は良好だが、緑と青と白しか見えない。数秒もすれば、それが木の葉と空と雲であることが解り、蓮子は野外に寝転がっているのだと容易に理解できた。
 いやに身体が重く感じられるのは、布団の代替なのか、巨大なグレートピレニーズが覆いかぶさっているせいである。
「……と思ったら、ただのメリーでした」
 無駄に幸せそうな寝顔が妬ましく、起き上がるついでに地面に転がす。それでも覚醒しないのは放っておくことにする。まずは現状の把握を優先したい。
 いつものブラウスとスカートに付着した雑草を払い、立ち上がって周りを見渡しても鬱蒼とした森が広がるばかり。獣道を見抜く目を人は持たず、生憎と空は晴れて揚々と陽が昇っている。つまり、月を拝んで自分たちの現在位置を特定することも難しい。
 足元には、見慣れた帽子がふたつ仲睦まじく寄り添い合っている。ポケットをまさぐれば、探索のために常備している方位磁針とメモ帳が収まっていた。
 ここがどういった世界なのかよく解らないが、随分と気の利いた展開である。メリーの異常性欲も、とんとん拍子で解決できれば僥倖なのだが。
「さて」
 一人ではどうもこうもないと気付いたところで、呑気に惰眠を貪っている友人を叩き起こす。揺さぶっても声を掛けても意味がないのは百も承知なので、初めから全力でほっぺたを抓る。
 待つこと数秒。メリーの眉間に皺が寄り、そして。
「――あだだだだ!」
 色気もへったくれもない悲鳴を上げ、マエリベリー・ハーンは強制的に覚醒を促された。蓮子はメリーの目が覚めるとすぐに指を離し、腰に手を当てて再び周囲を望む。
「え、なに、ここどこ? 私は」
「メリーだと思うわよ。たぶん」
「そこは確信を持ってほしいところね」
 草の葉を払うこともなく、メリーはスカートを広げて地面に座り込んでいる。おはようの代わりに、メリーの頭にふわふわの帽子を被せてあげる。当のメリーは寝惚け眼を擦り、焦点の定まらない瞳で蓮子を見上げた。
「あ」
 メリーが何かに気付いたらしい声を上げ、蓮子も何事かとメリーを見る。
「蓮子、指」
「指? ……あぁ、ちょっと草で切ったのね」
 見れば、左手の薬指からわずかに出血が認められた。鋭利に裂かれた肌の傷は浅く、放っておいても問題はない。
 が、メリーはそう思わなかったようだ。ごく、と唾を飲む音がする。
「大変だわ」
 言葉とは裏腹に、瞳が輝いているのは何故だろう。考えている隙に、メリーは蓮子の左手を引いてその薬指を躊躇いもなく口に含む。
「なっ――に、を」
「ん、ちゅぅ……」
 吸う。凍りつく蓮子をよそに、傷口から零れる他人の血を啜る。薬指の第二関節まで深く咥え、舌と唾を絡ませて血と汗をない交ぜにする。普段、使う機会の少ない指のこと、触られることに慣れておらず、他人の良いように弄ばれる感覚たるや、恍惚のあまり息を飲むのも致し方ない。
「ぷちゅ、ちゅく……んん、どんどん溢れてる……」
「調子に乗るな」
 薬指のみならず小指にまで舌を伸ばそうとしていたメリーの頭に、わりと強めのチョップを喰らわす。「むぎゅ」と舌を噛んだらしい喘ぎ声が響き、しばらくは静かになるだろうと蓮子は安堵した。
 出来れば指を洗いたいが、水辺を探すよりも人影を探すのが先決だ。涙目のメリーからハンカチを強奪し、乱暴に指を拭ってメリーに返却する。
「行くわよ。私たちは遊びに来たわけじゃないんだから」
「はぁい……蓮子のけち」
「聞こえてるわよ」
 さっさと立ちなさい、とメリーの背中を叩く。拗ねるメリーは蓮子の腕にしがみつき、肘の関節に爪を立てて抗議の意を示す。痛いことは痛いが、文句を言わずに付いて来てくれるだけ良しとしよう。みずからも帽子を深く被り、意志を強く持って前を見据える。
 森を歩く際に注意しなければならないのは、現在位置を見失うことである。体力の消耗、精神の疲弊、食料の漸減、絶望は一歩ずつ確実に忍び寄る。
 だが、楽観的かもしれないが、蓮子はあまり心配してはいなかった。根拠は不明だが、蓮子が足を進める方向はメリーが指示している。こっちは危ない、と思えばメリーが蓮子の腕を引き、別の方角を指し示す。蓮子は黙ってそれに従う。最初に居たゼロ地点と、進んだ道を手帳に書き記し、木の枝に目印のハンカチを括り付け、方位磁針と太陽の位置、時間を目安に少しずつ行動範囲を広げていく。
 そうして、紆余曲折ありながら、ようやく人が歩いた道を発見する。何度も踏み締められた地面は草も生えず、整備されているとは言い難いが、道筋を示すには十分すぎる道標だった。
「よっしゃ!」
 蓮子が小さく拳を掲げると、メリーも蓮子の腕に込めていた力を緩める。緊張していたのはどちらも同じ。自然と表情が綻ぶのを感じ、ふたりとも小走りで小道に入る。
 平地に下る道を進み、徐々に森の密度が薄くなってくると、ようやく解放されるのだと感慨深いものを覚える。今や樹木の枝葉は太陽の光を遮らず、突然の来訪者を祝うように暖かな陽光を浴びせかけている。
 歩きながら、蓮子は大きく伸びをする。メリーの手が不意に離され、寂しげに顔を曇らせる。
「うぅ――ん。やっと、スタートラインに立てるわね」
「もう終わりにしたいくらいだわ。くたくた」
「我慢なさい。手がかりを得ない限りは、帰るに帰れないんだから」
「はぁい……」
 苦虫を噛み潰したような表情を浮かべながらも、先を行く蓮子の後に続く。腕にしがみつくことはないが、付かず離れず、手の届く範囲に収まっている。
 登山用の靴ではないにしろ、活動範囲の広い秘封倶楽部のこと、徒歩には向いた靴を履いている。それでも足の裏は木の根や武骨な石ころを踏み続け、土を踏むだけでも軋みを上げていた。
 だから、低い屋根の民家が遠巻きに窺えた時は、知らずと歩調も速まっていた。ここがどこか、という問題は二の次で、一刻も早く休息を取りたかった。流石に、何が出るかわからない森の中で腰を下ろすのは避けたかった。
 故に、多少なりとも気が抜けていたことは否定できない。
「おー、煉瓦の屋根よ。台風が来たら大変だわ」
「そうね」
「うちらの住処も高層ビルが乱立してるわけじゃないけど、流石にここよりは高いわね。建物が高くなろうと、別に空が近くなるわけじゃないんだから、ロマンチストの視界からすれば得心の行くところだけど」
「かもね」
 足取りも軽く、時代がかった集落を観察する蓮子に対し、メリーは虚ろに生返事を返すばかりである。不思議に思った蓮子がメリーを見ると、どうも内股になって歩き辛そうにしている。むしろ、歩くたびに顔が歪んでいるといっても過言ではない。
 同様の経験がある蓮子は、その姿勢にピンと来た。
「……お手洗い?」
「ごめんあんまり喋りたくない」
 表情は真剣そのものである。あまり茶化している余裕はないようだ。
「承知仕りました。急いで厠を借りましょ」
「走らないで」
 ダッシュを仕掛ける蓮子、その襟を掴むメリー。「うぎょ」と呻く蓮子を睨みつけ、首を撫でる彼女の前を行く。蓮子も黙ってその後に続く。
 メリーの速度は、蓮子が風景を観察しながら歩く速さとほぼ等しく、畑の手入れをしている住民の視線に気付かない程度には、メリーは周りが見えていなかった。蓮子は、察してはいたが殊更意識することはなかった。
「あ」
 最初にそれに気付いたのは、メリーだった。
 メリーの声につられて、蓮子もその方向に目をやる。
「お、公衆トイレ。かな? 多分」
 お誂え向きである。民家に辿り着く前に発見できたのは、幸運というべきか。
 一見、ただの物置小屋のようにも見えるが、蓮子が戸惑いながらもそう結論付けたのは、遠目からもわかるように『公衆便所』という札が立っていたからである。
 居ても立ってもいられないといった様子のメリーは、蓮子に小さく目配せをして、声も上げずに便所へと駆けこんでいった。蓮子もその背中に頷き、優しく手を振る。
「ごゆっくりー」
 見た感じ、男女の仕切りもなく、清掃が行き届いているわけでもないようだが、最低限の機能は備えていると解釈すべきだろう。ただの物置である可能性も否定し切れないが、一分待っても帰ってこないところを見ると、そこがどこであれメリーは任務を果たしたと考えられた。
 紙は無いかもしれないが。
 だからといって、すぐさま救いの手を伸ばしはしないのが蓮子である。
「ふう」
 腕組みをし、目線は公衆トイレから離さないまま、先程視界に入っていた人影の数を思い浮かべる。
「一人、二人……三人、かな」
 どれも中年の男である。畑いじりに精を出している様子で、蓮子とメリーの存在に気付いてはいるものの、特に何か行動を起こすでもない。揉め事になると厄介だと思っているのは、どうやら蓮子に限らないようだ。
 警戒は怠らず、二の腕をリズムよく人差し指で叩きながら、じっとメリーを待つ。
 一緒に行くべきだったかな、でも狭そうだな、良い天気だな、妊娠検査薬持ってこさせるべきだったかしら、もし巻き込まれたらどう対処しよう――
「……なげえ」
 あれこれと考えを巡らせて、時計を見れば、およそ十分が経過している。
 用を足すのに必要な時間の平均値など知る由もなく、ましてメリーの平均が何分なのか知るはずもない。
 待たせることには慣れている蓮子だが、待つことには慣れておらず、痺れを切らすのもまた早かった。足音を立てて歩き始めてから、メリーに危険が迫っているかもしれない、と後付けの理由を考えて、やや小走りに現場へと接近する。
 近付けば近付くほど臭いも強くなり、けれども我慢できないレベルではない。一人が限界だろうと高を括っていた小屋も、近寄ってみればいくらか余裕はありそうだ。壁に手を当ててみると、何やら物音がしている。耳を澄ませば、呻いているような、喘いでいるような声が聞き取れる。
 確信にも匹敵する嫌な予感が蓮子の頭蓋に叩き付けられたが、一応、確認してみないことには始まらない。もし、扉もない処でメリーがしゃがみ込んでいるだけなら、蓮子は己の浅はかさを恥じてその場を辞するつもりだった。
 だが、現実は非情である。
「ん、んふぅ……」
 自慰に耽っていただけならば即座に押し入っていただろう。けれど、メリーはあろうことか年端もいかない少年の性器を口に含んでいた。十二、三か、二十歳には届くまい。幼さの残る表情を、苦悶か、あるいは喜悦に歪ませて、何かに耐えるように拳を握り締めている。
 またしても、である。
「ちゅぅ……ふふ、可愛いわねぇ……ぺろぺろー」
「あぁッ……! お、おねえちゃん……!」
 聞いているこっちが恥ずかしくなる。それでも目を逸らせない。壁に添える手にも力がこもる。覗きは犯罪です、でもこんな場所で行為に耽ってる方がいけないと思います、と蓮子の善悪が相克し、結局全員覗きに走った。
 子どものモノといえども、硬く勃起していればかなりの太さを持つ。その亀頭をぺろぺろと舌で舐め、泣き出しそうにも見える少年の表情を窺うメリー。次第に、ぴちゃぴちゃと水音が増していき、メリーが舌を離せば、肉棒と舌の間に透明な粘液が伸びる。
「はぁ……あつくて、おいしいわ……はむっ」
「うッ――だ、だめだよ……もう、変なのが……」
「にちゅ、ぷちゅ……じゅぷ、ぐぽっ……んんぅ、ねぇ、変なの出ちゃいそう……?」
 ペニスは鼻の下に擦り付けたまま、メリーは少年に問う。唾にまみれて鈍く光るペニスと、それを愛しげに擦り上げる金髪の少女に少年は戸惑う。
「じゃあ……」
 一旦、少年から身を離し、立ち上がったメリーはゆっくりとスカートに手を掛ける。制止の声など響くはずもなく、軽い音を立ててスカートは落ち、メリーの下半身は下着一枚の無防備な姿となった。
 案の定、というべきか、その陰部は既に濡れて染みを作っている。
「立ったままじゃ大変だから……ね、こっち来て」
 早々と腰を下ろしたメリーに招かれるまま、少年はメリーの身体にのしかかる。母親を除き、このような豊満な肉体に触れること自体初めてなのか、何をどうしたらいいのか解らず、メリーの胸に手を置いたまま目を白黒させている。
 全てを見透かしたようなメリーの瞳が、小さく細められる。
「指は、ここ」
 少年の手を取り、みずからの局部に導く。屹立したモノを受け入れる準備は万端だが、その前に、少年の経験値を上積みするべきだとメリーは考えたようだ。
 生理的嫌悪感から、少年は女性の股間に触れることを躊躇する。
「でも、きたないよ……」
「あら。私はあなたのおちんちんを舐めてあげたのに、あなたは触ってもくれないの?」
「そ、それは……」
 詭弁である。が、今の少年にメリーの屁理屈を跳ねのけるだけの理性はない。
 渋々といった手つきで、彼はそっとメリーの下着に指先を当てる。想像以上に熱く、すぐに指を離すけれど、その温度が忘れがたく、その柔らかさが甘美すぎたから、今度は興味深げにメリーの大切なところを改める。
「ん、はぁ……ぱんつ、下ろしてもいいのよ」
 熱っぽく、みずから下着の端に指を引っ掛けて、メリーは提案する。少年も息を呑むと同時に、メリーの動きに合わせて下着を引き下ろす。
 露になる女陰の形状は、少年にとって初めて見るものに違いない。よく見えるようにわざわざ中を開いてみせて、少年の反応を愉しんでいる。
「ほら……指、入れてみて」
 抵抗の意志は完全に失せた。細くとも節だった人差し指が、導かれるままメリーの中に埋没する。
 ――ちゅぷん。
「んん……!」
 喘ぐ。少年は驚いて指を抜こうとし、すぐさまメリーの手に掴まれる。このままでいい、とメリーは首を振って微笑む。
「ご、ごめんなさい」
「謝らなくても、いいわよ……ん、はぁ、ちょっと、刺激が強くて」
 もっと動かして――と、少年の耳元で囁く。愛液に濡れた穴はとても温かく、女性の中にいるのだと実感させられる。迷った挙句、少年は更に奥深く指を突き入れ、限界までメリーの膣に差し込んでいった。
 ――じゅぷ、ぐちゅ……
「ふぁ、深いわぁ……ね、もっと、ぐちゅぐちゅって……して?」
 初めは一本だった指も、興が乗ると二本に増え、躊躇いがちに抜き差しを繰り返す前戯も、円を描いたり、肉の襞を抉ったりと、種類に富んできた。
 元から溢れ返っていた愛液も、描き回されることで外に飛び散り、少年の手首までも激しく濡らす。
「はッ、はッ……」
 次第に、少年の呼吸も荒くなる。硬く勃起した逸物は、寸止めを喰らってからも全く硬度を損なわず、それ以上の熱を伴ってぴくぴくと震え続けている。先走りの液体も、鈴口からこぼれ出して亀頭を濡らしている。
 少年は、メリーの膣から指を抜き、まとわりついた粘り気のある液体をどうすべきか迷い――そうしているうちに、メリーが少年の指を丹念に舐っていた。
「はむ……ちゅ、れろぉ……ん、ちゅぷ、くちゅ」
「お、おねえちゃん……」
 濡れた指を一本ずつ、愛液を舌で掬い取り、唾で濡らして唇から解放する。陶然として、放心状態にある少年は、もはや快楽の虜といっても過言ではなかった。
 頃合いと読んだメリーは、少年の性器に手を添える。いいこいいこ、と冗談めかすような手つきでも、少年の防波堤を決壊させるには十分すぎるくらいの刺激だった。
「あなたの、かたくて、ふといおちんちん……」
 手のひらに付着した先走り液を舐め取り、メリーは空いた指で自分の膣を開く。
「わたしに、ちょうだい」
 艶やかに、笑う。
 ――ぷち、と理性の糸が切れる音を、きっと誰もが耳にした。
 無論、覗きに耽っていた蓮子も例外ではなく、少年が性欲の赴くままメリーに覆い被って数秒後、傍観している場合ではないと結論付けた。
 このままメリーが中出しされれば、妊娠する確率が格段に上がる。冗談じゃない、一体何のために夢の世界まで足を運んだのか。メリーの変調の原因を探り、こういう事態に陥らないために行動を起こしたはずだ。
 ならば、自分のすべきことはただひとつ。
「あんたたち――!」
 決意も新たに、意気込んで現場に足を踏み入れようとして。
 突如、背中に鈍い衝撃が加えられ、蓮子はつんのめって奥の壁に激突する。
「むぎゅ!」
 幸い、受け身は間に合ったが、軽く頭を打ったせいかその場に座り込んでしまう。いけない、隙を見せてはならないと思っても、身体は上手く動いてくれない。被っていた帽子も床に落ち、一瞬、前後不覚に陥る。
 横を見れば、今まさに少年の分身を受け入れようと身構えているメリーの痴態。不意に、目が合う。
「あ、蓮子」
 緊張感も危機感もない、呑気な呟きの直後。
 ――ずちゅっ。
「んあぁぅ……!」
 メリーの膣を、少年の若い剛直が深々と貫く。一心不乱に、奥へ奥へと突き入れる愚直な前後運動にも、メリーは少年の背中を抱き締めて優しく応じた。
 ぐちゅ、ぶちゅ、と水気のある場所にはお似合いな、卑猥な結合音が響く。男女の喘ぎ声が重なり、荒い吐息と、傍観者にまで伝わりそうな心臓の鼓動と熱い体温が、蓮子の肉体と精神を焦がす。
「――あ、ちょっ、メリー!」
「はぁ、あッ……あっついわぁ、あなたの、おちんちん……」
 聞いちゃいない。
 完全にふたりだけの世界に没した彼女たちを、どうやって現実に引き戻すか。あれこれと考える余裕は、今の蓮子には残されていなかった。
 即ち。
「よぉ、ねーちゃん」
 野太い男の声が聞こえて、蓮子は咄嗟に振り返る。いつの間に接近していたのか、蓮子を突き飛ばしたのも彼なのだろう。やけに気さくな口調だが、状況が状況である。警戒は怠らず、まず体勢を整えるのが先決だ。
「そっちのねーちゃんは、うちの息子が世話になってるみたいで」
「……あ、そうなんだ」
 見比べると、外見も似ていないこともない。確かめる術もないから、ひとまず信用するしかないが。
 この中年の男は、先程蓮子が発見した、畑いじりをしていた男性の一人である。蓮子も彼らの視線に気付いていたから、蓮子とメリーの存在は既に認知されていると考えていい。
 彼は、畑仕事で鍛えた太い腕をまくり上げ、さも当然といった様子で、汚れたズボンを下ろす。蓮子はきょとんと目を丸くして、眼前に現れた巨大な男性器を他人事のように眺めている。
 仕事をしていたせいか、とても汗くさい。
「……ぁ、え?」
 逃げ出すことも忘れ、訝しげに首を捻る。中年の男は、気恥ずかしそうに頭を掻き、ずいっと前に出た。勿論、性器と蓮子の距離も近くなる。鼻先に突きつけられた性器からは、今や明確な意志が感じ取れた。
 即ち、「女を犯す」と。
「……えぇっ!?」
「いやぁ、あんたみたいな可愛い子に誘われちゃ、俺たちだって我慢できないよなぁ」
「いやいやいやいや。全く誘ってないし、これっぽっちも可愛くないし、えっ、しかも『おれたち』って何よ!」
 壁に背中を押しつけ、少しでも肉棒と口の距離を離そうと試みるも、所詮は無駄な足掻きに過ぎない。何故なら、彼が後方を手招きすると、新たに二人の男が登場したからである。どれも、さっき見た顔だ。
 逃げ場は、ない。
 つーん、と、汗の臭いが鼻についた。
「でも、隣のねーちゃんはやる気満々だぜー。見ろよ、あの乱れよう」
「あ、あれは、期間限定の淫乱モードというか……んぷうぅっ!?」
 言い終わるより早く、蓮子の唇は呆気なく男の肉棒にこじ開けられた。
 頭を抱え込まれ、有無を言わせず強引に蓮子の口を犯す。何も準備していなかった蓮子は、噛んだり叫んだりといった抵抗らしい抵抗をすることもできず、もごもごと呻き顔をしかめることしかできない。
「ふぎゅ……あぐ、むごぉ……」
「ほら、もっと唾を絡ませて。舌も使わないと」
「へうぅ……」
 蓮子の目尻に浮かんだ涙を、男の指が丁寧に拭う。男の逸物は喉の奥に達しておらず、異物感はあるものの嘔吐感はそれほど強くない。だからといって、積極的に舌を使って男に奉仕するなど御免被りたかったが。
「ちゅる……んぁ、ちゅっ、んむ……」
 無理やり男の意のままに頭を動かされるよりは、みずから口淫に勤しんだ方がいくらか楽だ。比較の問題でしかないけれど、何もかも諦めて全てを成り行きに任せるよりはマシだと信じたい。
 ぬちゅぬちゅ、と唾の音も次第に大きくなり、蓮子も自然に首を振り始めていた。朱色の柔らかい唇で、男根の幹を擦り上げ、カリ首に引っ掛けたまま尿道口を舌の先端で突く。
 そして男の表情が辛く歪むさまを見る。
「じゅる、むちゅぅ……ふぁ、れるれろぉ……」
 口を半開きにして呻く男を見上げ、蓮子は奉仕を続ける。亀頭から唇を離し、根元の方から上に舐めていき、ついでに際限なく溢れてくる先走り液も残さず吸い取る。
「おぅ……なんだい、最初は嫌がってたくせに、もうその気になってるじゃないか」
「ち、ちが……」
 否定の言葉は、蓮子の耳にも空々しく聞こえた。何故、こんなにも熱心に見知らぬ男の性器を咥えているのか、まことに理解しがたい状況である。メリーの痴態があったとしても、流石にこれはやりすぎなのではないか。
 漲る怒張を頬に擦り付け、蓮子はとろけた瞳のまま荒い呼吸を繰り返す。その一所懸命な姿に、興奮を覚えない男はいない。
「ひゃあ! もう我慢できねえ!」
「きゃあぁっ!?」
 既に下半身を露出していた男のひとりが、堪え切れずに蓮子を後ろから押し倒し、そのスカートをめくり上げてお尻に顔を埋める。すぐさま決して大きいとは言えないお尻を揉みしだき、突然の衝撃に身悶える蓮子など気にも留めずに己の欲望を満たそうとする。
「ふぁ、そ、そんなぁ、いきなりぃ……!」
「いいじゃないかよ、こっちの方も濡れてるしよー」
「うぅ、だから、ちがうんだってばぁ……」
 弱々しく首を振り、次々に襲い来る過酷な現実から逃れようと足掻いても、結局は何も変えられない。前後を男たちに挟まれ、肉棒に囲まれ、異能の瞳も役に立たない。
 そして最も憂慮すべきなのは、今まさに犯されようとしているのに、大した危機感を抱いていないことである。わけがわからない。
「ほら、口が休んでるぞ」
「むぐぅ……!」
 ――ずぽっ、くぷっ、じゅぽ……
 抱えられた頭を引き寄せられ、再び口に性器を突っ込まれる。性器も咥内も十分にぬめり気を帯びていたから、ピストン運動に支障はない。突き入れれば舌に巻き取られ、引き抜けば唇の感触が幹とカリ首に引っ掛かる。わずかながらの抵抗か、舌を動かし頬をすぼめる動きも、男の性感を高める効果しかもたらさなかった。
 四つんばいにされ、手は床に付いているから男の身体を押し返すこともできない。スカートどころかパンツまでも既にずり下ろされ、下半身は随分と風通しがよくなっている。
「うほっ、きれいな色してるなーおい」
 ――ぐちゅっ!
「んむうぅ!?」
 下腹部から脳天に突き抜ける衝撃。蓮子のお尻を揉み続けていた男が、彼女のうぶな穴に指を突き入れた。長らく、メリーと少年の絡みを覗いていた蓮子は、自分でも気付かぬうちに男性器を受け入れる準備を整えていた。中指程度の太さならば容易に奥まで呑みこみ、ぐちゅぐちゅと卑猥な音を立てながら蓮子の頭の中までも掻き回す。
 上の口と舌の口を同時に刺激され、どちらに意識を割くべきかも判らず、蓮子は混乱の極致にあった。抵抗するなどもってのほか、何にしろ、こういう経験をすること自体、蓮子には――。
「さてと。そろそろいいかなー」
「……っ!? んぅ、むぐうぅ!」
 目を白黒させ、振り返ろうと首を動かしても男の腕力は緩まない。花弁にぴたりと当てられる熱い物体が一体何であるのか、今更考えるまでもなかった。
 万事窮す。
「う、はぁ……もう、そろそろ出すぞ……!」
「んぶぅぅっ!」
 ――じゅる、ぐぷっ、ぐぽっ!
 頭を振る速さが増し、思考が散り散りに引き千切られる。何も考えられない。どうにでもなれ、と半ば自棄になって意識を手放そうとさえ思った。が。
「ん――、っ!」
 ずぷぷ、と自分の内側に侵入してくる異性の性器が、蓮子を現実に引き戻した。
 熱い、太い、硬い、感想はいくつかあるが、何よりも異物感が激しい。満たされた、ではなく、入って来られた、という違和感。拒絶したい、でも抜きがたい、奇妙な感覚が蓮子を支配する。
「うっは……すげーあったかいわぁ、ねーちゃんの膣」
「んぐゅ、んぷぅ……!」
 ゆっくり、じっくりと性器を挿しこみ、蓮子の最奥まで亀頭を突き入れる。潤滑液に溢れた膣内は、いくら男の荒々しい棒で抉っても粘膜を傷付けることはない。ただ、蓮子に受け入れる覚悟さえあれば、苦痛は瞬く間に快感に転変する。
 その瞬間は、刻一刻と迫っていた。
「ぐっ、いくぞ……! むちゃくちゃ濃いのが出る……!」
「んぶ、むぐぅ……!」
 ――じゅぶぅ、ずぽっ、ぐぽっ!
 手の動きが加速度を増す。唾は蓮子の唇からぼたぼたと垂れ、板張りの床に次々と染みを作る。呼吸は何とか可能だった蓮子も、こうも頭を揺さぶられては満足に息もできない。
 汗臭さが鼻に抜け、射精の予感が咥内に充満する。
 息苦しさに目を瞑り、膣を埋める肉棒の熱と、口腔を往復する乱暴な肉棒の熱が、蓮子を上から下まで貫いていた。
 そして、男の手がぴたりと止まり。
「おうぅぅっ!」
 蓮子の舌の上で、亀頭が急激に膨らむ。直後。
 ――びゅるるるっ! どぷっ、ごぽっ!
「んぼぉぅ!?」
 想像を遥かに超える量の精液が、蓮子の口の中に吐き出される。喉の奥まで突き込まれていれば咄嗟に吐き出せたものを、中途半端に舌の上で射精されたものだから、小刻みに溢れてくる白濁液が口腔に溜まっていく。なまじ舌の上だから、その苦みも生臭さも余すところなく感じ取れて、蓮子は思わず顔をしかめた。
 ――ぴゅぅ、びゅく……こぽっ、とぷっ……
「じゅるぅ……んむ、むぐぅ……」
 脈動が幾度となく繰り返され、鈴口から放出される精液がようやく打ち止めになった頃には、蓮子はほっぺたをいっぱいに膨らませて、なるべく精液を飲み下さないよう努力していた。けれど、口の中に溜めているだけでも涙が出てくる。それくらいに濃く、生臭い。確かに、物凄く濃密な精子ではあった。
 ちゅぽ、といくらか硬さを失った男根が、蓮子の唇から引き抜かれ、その感触にまた男は身震いする。蓮子は、憤怒を越えた怨嗟の眼差しで男を睨むが、男はへらへら笑うばかりであり、かつ蓮子に口答えする時間など残されてはいない。
「じゃ、動くぜー」
 何故なら、蓮子の膣にはまだ男のペニスが挿入されたままだからである。
 ――ぐちゅっ! ぢゅぽっ!
 引き抜き、打ち付ける。単調な動きでも、経験の浅い蓮子には最上の衝撃であった。不意打ちにも等しい一撃に、溜めていた精液をいくらか飲みこんでしまう。苦味の極致が喉を伝い、眉間に幾重もの皺が寄る。
 蓮子は思う。どうして、すぐに精液を口から出してしまわなかったんだろう。
「うえぇ……ぺっ、ぺっ」
 だらしなく口を開け、口いっぱいに溜めた白濁液を床に垂らす。だが、濁り切った精液の粘性は、落ち切るのにも時間がかかる。白い粘液がゆっくりと舌の上を滑り下りるのを、蓮子は壮絶な苦みと共に実感する。
「く、はー……やばい、ねーちゃんの中、最高だわ……ずっと挿れてたいぜ」
「あ……あんた、ねぇ……」
 やっと意味のある文句を吐けるようになったものの、咥内射精と生ペニス挿入を同時に喰らい、普段の豪放磊落さはすっかり鳴りを潜めている。視線を巡らせば、いつの間にか一対二の多人数プレイに突入していたメリー班が目に入った。
 途端、少年の腰がメリーの下腹部に押しつけられ、呻き声と共に動きが止まる。
「あ、うあぁっ……!」
 ――どくんっ! びゅぶ、びゅくっ!
 快感に翻弄され、少年は成す術もなくメリーの中で果てた。よくよく見れば、少年とメリーの結合部からは既に大量の白濁液が零れ落ちていて、これが最初の射精でないとわかる。二度、三度、メリーに咥えこまれたまま逃げ出すことも叶わない。
 メリーはその他にも、口元に突き出された肉棒を丹念に舐め回していて、竿を擦りながら亀頭に舌を伸ばす仕草は、蓮子から見ても様になっていた。誰が見ても素人ではないと判断するであろうその妙技を、彼女はいつ習得したのだろうか。
 こちらを見て淫靡な微笑みを浮かべるメリーの顔が、鏡を見ているようで、少し寒気がした。
「おら、よそ見してる余裕ねえぞー」
「んにゃあぁっ!?」
 ずんずんと音がするくらい、愛液に満ちていてもなお襞を削り取られるくらい激しい前後運動が、蓮子の膣を深々と抉る。先っぽは子宮口に接しているかと思うほどに深く、腕の力も抜けて床に突っ伏す。ちょうどそこには、口から出したばかりの精液が残っていたのだが、そんなことを気にしている余裕は勿論なかった。
「おー、可愛らしい声出すじゃねーか。そういうの聞きたかったんだよ」
「ひゃぅん! だ、か、ら、やめなさ、いぃぃ!?」
 髪の毛を猫のようにぐりぐり撫でられ、腰の角度を変えて肉棒を突き出され、未曾有の快感がありとあらゆる方向から押し寄せてくる。使う機会のない声域がその真価を発揮し、普段の蓮子からは想像もできないほどの喘ぎ声が放たれる。
「あぁん! や、やだっ、もういやぁー! きゃう! へ、へんなこえ、出ちゃうからぁー!」
「あふ、きゅんきゅん締めつけてきやがる……なんだかんだいって、おれたちをこってり搾る気だろ、ねーちゃんよー」
「ち、ちがうっていってるでしょう! もー!」
 罵声も徐々に幼児化していき、声も次第に大きくなる。もはや蓮子の嬌声はメリーのそれより甲高く響き渡り、蓮子も自分の声がうるさくて仕方なかった。でも、止められない。肉棒を身体の奥深くまでねじこまれると、お腹の底から声を出せと指令が来るのだ。それは高らかな声で叫べといい、いやらしく泣き喚けと笑う。
 ぶちゅる、と、ぬめり気のある音が鳴る。
「はー……では、おれももう一回」
「ば、ばっかじゃないの! あんた、いっかい射精した、でしょ! ふあ、んむうっ!」
 抵抗も虚しく、蓮子の唇を押し分けて入って来る逞しい男性器。一度発射したとは思えないほど、それは硬く勃起してぴくぴくと期待に震えている。
 噛み千切ってやろうかと思える程度には覇気が戻ってきたが、如何せん顎が疲れた。舌を巻き付けて唾を絡ませるのが精々で、肉棒を吸う力はずっと弱まっている。けれど、男はほっぺたの裏の肉に亀頭を押しつけたり、ほっぺたに押しつけたり、髪の毛に擦りつけたりと、様々な手段を用いて蓮子を犯す。
「ちょ、やめて、よぉ……あぁん! やだもう、べとべとするぅ……」
 これは蓮子もたまったもんじゃない。イラマチオよりか呼吸は楽だが、先走り液が顔や頭に付着し、出し漏らした精液もおまけにこびり付いているから、後のことを考えると気分が沈む。
「うっ、くぉ……こっちも、もうすぐ出すからなー。そっちのねーちゃんみたいに、活きのいい精子で腹ん中ぱんぱんにしてやるよ」
 堂々と布告し、男は腰の動きを更に速める。体内に満ちた他人の熱と裏腹に、蓮子は背筋に冷たいものが走った。
「や――、はぁ、だめ! それはだめ、ほんと、中には出さないでよ! 絶対、ぜったいだめなん、ひゃうぅ!」
 首を振りながら必死に叫んでも、蓮子の肩を掴んでまで腰を打ち付ける男は聞く耳を持たない。がくがくと蓮子の身体を揺すり、下手に喋れば舌を噛む震動の果て、呼吸をしているかどうかさえ曖昧になった行為の結果。
「いっ――」
 びくっ、と男のペニスが、蓮子の最奥に突き刺したままの状態で、停止する。
 刹那。
 ――どぷっ! びゅるるっ、びゅくっ!
「は、ぁ――!」
 膣を満たす、純粋な性欲の塊。半固形状の元気な精液が、蓮子の子宮に向けてまっしぐらに駆けのぼっていく。溜めに溜めていたのか、それとも蓮子の膣があまりに気持ちよかったのか、放たれる精液の量は異常に多く、二度、三度脈動を繰り返してもなお、確実に蓮子を孕ませようと精子を送りこむ。
 ――ごぽっ、ぐぷぷぅ……ごぷっ、ぶりゅっ!
 性器の繋ぎ目から、膣を満たしてもまだ余りある精液が逆流する。男は、ペニスが柔らかくなってさえも蓮子の膣内に留まり、その熱を堪能しているようだった。
「はー……すげえ、むちゃくちゃ気持ちよかったよ……」
「ううぅ、信じらんない……ほんとに、本当に中出しするなんて……」
「んじゃ、もう一回いくぞー」
「えぇっ!? うそ、冗談でしょ!? ――あ、やだ、動かさないでよ! まだ、あそこが敏感なん――、んゃあぁっ!」
 膣の中に収まっていたペニスが、前後に動き始めると同時にその硬度を取り戻していく。そして、蓮子の頭で擦り続けていた男が、限界だと言わんばかりに蓮子の唇に己の分身を突き付けた。
 ぷにゅ、と柔らかいもの同士が接吻し、その感触が引き金となった。
 ――ずびゅるっ! びゅっ、どぴゅっ!
「んぷぅ! ひぅ、んぁ……いやぁ、また、口に入っちゃった……」
 口のみならず、二度目とは思えぬ量の粘液が蓮子の顔を隅々まで汚す。髪、額、鼻、頬、唇、顎の下まで、狙いを定めたとしか思えないほど狭い範囲に射精された。なおかつ、尿道口に残っている精子を吸い取れと言いたげに、唇へと半勃起の男根を差し向ける。
 この狭い一角に、精子の臭いが充満している。隣ではまだ、メリーが少年と中年の男性相手に激しく喘いでいる。まさに、乱交と呼ぶに相応しい光景だった。
「やぁ……もう、ゆるしてよぉ……」
 知らず、目尻に溜まった涙が零れ落ちる。頬に塗りつけられた精液が、涙の川を中途半端に遮り、それは混じり合って半透明の液体に変わり果てた。
 肯定も否定も困難な現実に苛まれ、いっそ何も考えずに意識を手放してしまおうかと、蓮子が諦めかけたその瞬間。
「あーあ」
 カツ、と、高らかに靴の音が鳴り、呆れ果てた溜息がひとつ。
 白濁の間と化した公衆便所に、一人の乙女が颯爽と姿を現す。
「何をやっているんですか。あなたたち」
 おかっぱ頭に、紫色の花弁を飾り、組んだ腕を袖に通す立ち姿はまだ幼い。しかし、凛とした口調は幼女のそれと一線を画していた。
 視線が、少女のもとに殺到する。彼女はそれら全てを一瞥し、存在する男の数と同じだけ頷きを返すと、瞳を閉じて手のひらを小さく上に挙げる。
 そして一言。
「撤収」
 直後、壁があるとは思えないほどの、突風。
 蓮子はすぐに意識を失い、それからは何もわからなくなった。
 ただ、視認すら叶わぬほどの何かに、目の前の男が吹き飛ばされたことは、辛うじて理解できたのだった。

 

 






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2010年3月14日 藤村流


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