ちょっとした、なんてことない異変の起こる幻想郷











<本文抜粋>

「阿求様! 大変です!」
すぱあんと景気のよい音を立てて開かれる障子。
日中にも関わらず無防備にうたた寝していた阿求は思わず、ほえ、と具にも付かない擬音を発してしまった。
「寝ている場合ではありません阿求様! これを見てください!」
 障子を開けた従者が差し出してきたのは、見事なほど真っ二つに折れた筆。
 御阿礼愛用の、代々受け継がれてきた大切な筆である。
「なっ!?」
 寝ぼけまなこだった阿求もこれはさすがに驚いた。柄をご神木から切り出し、毛先を龍の尾に似せた由緒正しい筆である。今代で華麗にぶち折ってしまったとなれば、千年前の自分に全く申し訳が立たないのだ。
 一体全体何が起こったというのか。これはすぐさま原因を究明し、犯人を捕まえようものなら相応の強制土下座を課してやらねばならないだろう。
 阿求はすぐさま怒声をあげた。
「一体誰が!」
「すみません私です」
 従者はしたたかに土下座した。

『はじめに』
文章:うにかた
挿絵:なし
メインキャラ:阿求

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今回は、そんな幻想郷の一年を綴ります。











 あれだね、暑いのが駄目なんだ。だから小町もやる気が出なくて、三途の河を泳いだり、チルノを使って涼もうとしたりしちゃうんだ。怒られる。これは怒られる。閻魔だけじゃない、もっと凄いのにも怒られる――。
<本文抜粋>

「あ、それじゃーあたいも乗る!」
 チルノが勢いよく挙手する。
 小町は、へのへのもへじを絵に描いたような顔をしていた。
 芸達者である。
「悪いことは言いませんから、やめておいた方が賢明ですよ」
 映姫も気を遣う。が、チルノは譲らない。
「あんたに言ってるんじゃないわよ。あたいは、この死神に言ってるんだから! えー、えーと」
「小野塚小町ね」
「そう、小町!」
 誇らしげに指差し確認するチルノの指を、当の小町は軽く握り締める。か細く冷たい指は確かに子どものそれと似ていて、悪戯好きなところも我が侭なところも、なんとなく許せてしまいそうになる。
「ねー、さっきはちゃんと手伝ってあげたじゃないー」
「駄目だ」
「えぇ……な、なんでよ、けち! そこのちっちゃいのは運べるのに、もっと軽いあたいはどうして駄目なのよ!」
「うーん、そりゃあ四季様はちまっこくて軽いけどさ……そういう問題じゃないんだよ、そういう問題じゃあ」
「話に関係ないところで傷ついたんですけど」
 映姫が悲しそうに呟く。小町は無視して続けた。
「えーと……なんだ、何の話だったかな」
「ちっちゃいじゃん! えんま!」
「そこうるさいですよ!」
夏 『スイマー!!』
文章:藤村流
挿絵:枡狐
メインキャラ:チルノ、小町、映姫

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各季節で勃発する、取るに足らない出来事。











 どうも妹様が反抗期のようだ。以前からスカーレット姉妹の距離感を憂えていたパチュリーは、これを機に一計を案ずる。そこに秘封倶楽部の面々が乱入してきて?
 我侭レミリアと秘封倶楽部のガチバトル。
<本文抜粋>

 広間の扉がはじけるようにして開いた。力いっぱい押されたそれは古めかしい音をたてながら入り口を全開にする。廊下の赤が目に入り、あわただしい足取りが聞こる。内外の気温差で起こった気流が、伸ばしたレミリアの羽をかすかに揺らし去っていき、気付いたときには広間に人間のようなものがひとつ転がり込んできていた。
 人間のようなものは、滅茶苦茶な息遣いでその場にへたり込む。自分が入ってきた入り口を伺い、左右を見回してから天井へ向かって大きな息を吐き、眼前へ視線を戻して、
「あー……」

 しまった、という顔をした。

秋 『秋っぽい何か』
文章:うにかた
挿絵:KOTO
メインキャラ:レミリア、フランドール、蓮子、その他

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のんびりと流れていく時間











 温泉脈の召喚に張り切る魔理沙、呆れつつもそれに付き合うアリス。いつもの冬の光景は、しかし月の光の悪戯か、奇怪な歪みを孕んでしまう。
 魔理沙とアリスのどきどき温泉旅行。
<本文抜粋>

 魔理沙は亀裂の周辺を何度か蹴ると、手応えを得られたのか「ふむ」と薄く笑って、懐から小さな火炉を抜いた。
 すぐさまアリスの手が、その腕をきつく掴む。
「やめなさい」
「なんだよ、まだ何もしてないだろ」
「してからじゃ遅い。何をするつもりなのか、よぉく分かってるから。だからおやめなさい。めっ」
 アリスのみならず人形たちにまで睨まれ、魔理沙は押し切られる形でミニ八卦炉を懐へ戻すこととなった。理不尽だ……としょげる彼女に、アリスは苦笑を見せる。
「あなたにやらせたら、落盤起こすのは請け合いだもの。ちゃんと加減できるのならともかく、常に百の力しか出せないじゃない。オールオアナッシング、潔いのはいいけれど、時と場合を選んでほしいわね」
「人をぶきっちょみたいに言うな。ちゃんとマスタースパークのほかにも、ダブルとかファイナルとか、色々取り揃えてるぞ」
「百を超えてどうするのよ」

冬 『Kick the Earth, Shake the Moon』
文章:日間
挿絵:KOTO
メインキャラ:魔理沙、アリス、その他

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そうして季節は、また一巡り











 永遠亭の月のウサギは、積もりに積もった花びらの中に首吊り用の縄を見付けます。縄を片手に、空虚な想いを胸に抱き、彼女は地面を跳ね回ります。くるくると舞う花びらの中を、踊るように、ゆっくりと。
<本文抜粋>

「これ……なんだろ……」
 それは、やはり縄だった。ただ、初めから形は定まっていた。
 ちょうど首が収まるくらいに丸く括られ、支点になる部分は何重にも縄で縛られている。使い方は、全くこれっぽっちも見当が付かない――なんて言えるほど、品行方正な生き方を送ってきたわけじゃないんだけど。
 あまり、積極的には理解したくなかった。
「それ何なの?」
「うょわぁっ!?」
 てゐだ。
 聞き慣れた声であるはずなのに、状況が状況だけに耳がピンと立ってしまうくらい驚いた。それからまたへなへなと萎れる私の耳をてゐがぎゅっと握り締め、なんだかよくわからない状態で例の縄の説明を求める。
「これはつまり、ウサギの耳をふん縛ってうまいこと運搬するための道具?」
 ウサギの敵め! と憤り、ついでに私の耳に対する握力も増す。痛い。
「ああ……痛いし、言いたいこともわかるけど、違うと思うよ。多分」
「うん。私も知ってる」
 てゐは私の耳から手を離し、縄を指先でくるくると回し始めた。呑気に回転する縄の動きを見ると、本来の用途とあまりに懸け離れていて、忌まわしい気持ちも次第に薄くなる。
 けれども。
「これ、首吊り縄でしょう?」
 教師が与えた問題に答えるような、誇らしくも嬉しそうなてゐの仕草に。
 私は、胸が痛んだ。

春 『今日まで、そして明日から』
文章:藤村流
挿絵:枡狐
メインキャラ:鈴仙、その他












もし、少しずつでも変わってゆくことが出来たのなら、それはとても素敵なことなのでしょう











<本文抜粋>

 転生の儀はなかなかに複雑であるが、中でも阿求が一番嫌っている手順が存在する。
「阿求様、日が暮れてしまいますよ」
 まだ昼なので日が暮れるというのは大げさなのだが、共同墓地の中でうんうん唸り頭を抱えている阿求を見ると、そう言いたくもなってくるのだ。
「あ、うん、ちょっと待って」
 当の阿求はといえば、先ほどからこのような言葉を繰り返すばかりで埒が明かない。
「阿求さまあ……」
「うーん……」
 墓参り。
 転生の儀の最も始めの手順が、歴代御阿礼の墓を訪ねることなのである。
 そして阿求は、百数十年に一回程度行うこの墓参りが苦手で仕方が無かった。

『終わりに』
文章:うにかた
挿絵:枡狐
メインキャラ:阿求、他






そんな幻想郷







ふじつぼの東方不敗小町3新刊、『夏秋冬春』
200P、新書サイズ、スペースG‐12bで頒布予定です。



※注:秋と冬に掲載されている絵に関しましては、
告知に当たってKOTOさんに書き起こしていただいたイメージとなっております、
頒布する本には挿入されいる挿絵とは別のものです、ごめんなさい



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