『It takes two to tango.』03

 神代に相談を持ちかけたその日の帰り、急に雨に降られて、全速力で家に帰った王は何 とか肩を濡らす程度ですんだ。それよりも通学路を走り抜けただけで、息が上がってしま ったことに落胆した。  日々の運動は欠かしていないはずだが、部活動に励んでいた頃と比べて体が重い。もっ ともここ数日は食事が喉を通らなかったぶん、体力が落ちていることも原因ではあったが。  そろそろ目指す高校の受験に備え、本格的な体力作りを始めるべきだと、王は自覚した。  家に上がると、台所で夕飯の準備をしている母親にここ数日心配をかけたことを謝れば、 元気になった娘の顔を見て喜んでくれた。  そして、王は自分の部屋に戻って、何よりも先に携帯電話の着信履歴とメールの受信欄 を見た。だが、校舎を出る時に確認したのと同様、そこに渡瀬からのものはひとつもなか った。 「光……だいじょうぶなの?」  いまだに渡瀬の状況がわからないことが王には不安だった。学校に連絡があったとおり、 連日、体の調子を崩して登校できないのか、休む日の前日にあった出来事が原因でふさぎ 込んでいるのか、その両方なのか。  どんな事情にしろ、いつもの渡瀬からはありえない休み方だった。そうさせているのに 間違いなく自分が関わっていると思うと、昼間の決心とは別に心がかき乱される。  王は渡瀬が学校に来るまで待っていられない。今すぐにでも会いたい気持ちはかわらな かった。  しかし、時間と距離を置くことも必要だということも考えてはいた。  今までそばに近寄りすぎて見えなくなっていたことが、離れてようやく見えてきたから。 「くしゅんっ」  制服を濡らしたまま、考え事をしていたせいか寒気を覚えた。とりあえず手近にあった タオルで体を拭いた。 「そういえば、このタオルって光の……」  それは渡瀬に別れ際に投げつけられたもので、いまだ返しそびれていた。  メジャーなスポーツメーカーのロゴが刺繍されたそのタオルは吸水性に優れることで評 判だったが、渡瀬が日頃使いこんでいるのか、布地が荒れて快適とは言いがたい。 「でも、光の匂いがする」  そっとタオルを顔に近づけてみれば、渡瀬と隣に並んで歩いていた時に感じた懐かしい 匂いが香って鼻孔をくすぐった。  ただ汗臭いと言えばそれまでだが、王にとっては最も渡瀬の存在を身近に感じられるも のに違いなかった。 「光っ……」  王はベッドに横たわると、さほど大きくないタオルに体を縮こまらせてすり寄った。そ うすることで少しでも渡瀬を抱きしめているような気分を味わうために。 「ん、ふ……」  荒めの生地が胸の上でこすれると、それだけで欲情の火がついてしまった。王が手の平 にタオルを被せて、程よく成長した乳房を揉みたてれば、渡瀬に愛撫されているような感 覚に背中を反らした。 「こんなことしてる場合じゃないのにっ……」  今すぐにでもやめて頭を冷やすべきだった。だが、一度始まった性欲は止まらない。王 が渡瀬のことを思えば思うほど、感じる部分に自然と手が伸びた。  ここ数日、ご無沙汰だった自慰だったが、肉体はその快楽の味に飢えていたのか、王の 意思に反して刺激に敏感になっていく。 「やだっ、ダメだって……んっ」  口でどれだけ躊躇いを見せても、王は両手の動きを止められなかった。制服の上から硬 く張りつめた胸を交互に揉みながら、すり寄せた内股に手を差し込むと、そこは湿り気と 熱をこもらせて下着を濡らしていた。 「ちがっ……これは汗が出てるだけだから……ぁっ」  そううそぶいてタオルで股の間を拭いたが、次から次へと汗とは違う粘り気を帯びた露 が溢れてくる。それが愛液だと知れると、王は沸き起こる劣情に抗うのをやめて、快楽に 身をまかせた。 「あっ、ああぁっ」  まだ乾いているタオルの表面で下着越しに恥丘を擦ると、ざらついた感触が快感を走ら せ、あられもない声を上げてしまった。  すでに白布は濡れそぼり、しぼるまでもなく雫を垂らしている。  これ以上は制服も汚れそうだったのを嫌って、王はスカートを脱ぎ捨てた。恐る恐る視 線を開いた脚の間に向けると、そこは愛液が下着を透けさせて、生えかけの陰毛を浮かび 上がらせていた。 「いやっ……」  我が身のことながら、あまりの淫猥さに王は目を閉じた。だが、久しぶりの秘め事に性 感が高まっているのか、性欲の濃密な匂いが鼻をつき、興奮度はいや応にも増していく。 「くふぅ、んっ、んんんっ」  階下にいる母親に気づかれないよう、王が指を噛んで喘ぎ声を漏らさないようにするさ まは中学生ながらも女を感じさせるほどに艶かしかった。  王は使い物にならなくなった下着を抜き取り、仰向けになって恥ずかしげもなく脚を広 げ、局所を責め始めた。  へそから恥毛をかき分けるように手を這わせると、知らぬ間に包皮から顔を出していた クリトリスに指先が触れた。日頃、渡瀬を思ってオナニーを繰り返していたせいで、15歳 にしては肥大化した淫核を撫でると、めくるめく快楽に瞳の中で火花が散った。 「ひっああぁっ、ひゃぁあ、あっあっあああっ」  最初の絶頂はたやすく訪れた。突っ張った両脚がベッドのシーツのしわを伸ばし、口の 端から垂れた涎が枕を汚した。  いつもなら時間をかけて気分を高めてきたが、いきなり飛ばしすぎたせいで早まる呼吸 を整えるのも一苦労だった。  しばらくして落ち着くと、今度は敏感すぎる部分を避けて、わずかに開いた割れ目に手 を届かせた。  まずは少しはみ出た陰唇を摘もうとしたが、ぬめり気によって指が滑った。代わりにそ の肉びれを押し戻すようにして、秘裂に指を滑り込ませる。  寝そべった王からはその中身を見ることはできないが、これまで何度も弄ってきた部分 だけあって、細部まで思い起こすことは容易だった。 「ん、んふ……はぁ、あ……はぁ、んん……っ」  やや赤みがかった粘膜を慎重に指で擦り、膣口の縁をくすぐると甘い痺れに腰を震わせ る。もう片方の手に持たせたタオルで溢れる愛液を拭き取っていく。 (光のものに、あたしのいやらしいお汁がいっぱい染みてるっ……!)  渡瀬に知られれば軽蔑されてもおかしくはなかったが、好きな人が大切にしているもの を汚すことにすら悦びを覚えた。  セーラー服も汗に濡れ、その下で乳首が触って欲しいとばかりに自己主張をして硬く尖 っていたが、王は直に性器を弄ることが何よりも好きだった。  もの欲しそうにひくつく膣口に指を挿入すると、すぐさま肉襞が絡みついてきた。よほ ど待ち焦がれていたのか、王の意思とは関係なく媚肉が指を痛いくらいに締めつける。 「はぁっ、はぁっ、あっ、やっ、あはぁああ……」  息つく暇すらなく王は指を前後に動かし、内壁を撫でるだけでも気持ちがよくなった。 さらにもう一本、指の数を増やして挿入感を強めると、膣口の隙間から蜜液の溢れる音が 大きくなり、唇から漏れた吐息と混ざり合って部屋の空気を震わせる。  窓の外ではいつの間にか本格的に雨が降り出し、水滴が窓を叩く音が聞こえた。  王はいったん指を引き抜くと、濡れ光る指先を口に含んで愛液を味わった。独特の味が 口内に広がり、媚薬のように王の体をさらに燃え上がらせる。  その熱気に悶えるようにして、再び胸を揉み上げると、上着がめくれて両の乳房がまろ び出た。すでにブラも外れかけていたために、王は思い切って上半身も裸にする。  そのまま露わになった乳房をこねるように強く握り、指先で勃起した乳首を摘んだ。 「んはっ、ふう……んっ、はっ……あっ……」  可愛らしい喘ぎを漏らしながら、王は胸の内側まで熱くなるのを感じた。だが、同時に もの足りなさも感じて、さらなる刺激を求めた。  ふと思い立って携帯電話を手に取ると、保存していた画像の一覧から渡瀬が映っている ものを表示させる。 「あっ、光ぃ……」  小さなディスプレイいっぱいに映し出された渡瀬は、いつもと変わらず王に笑いかけて くれていた。そんな彼女に欲情に溺れただらしない姿を見られていると思うと、触れても いないのに股間から愛液が溢れ出た。 「ごめんね……、こんないやらしい子で……あっ、はぁうっ」  謝りながらも携帯電話の角で割れ目を擦ると、自分の指とは違う硬い感触に快感と戸惑 いを覚えた。そして、不意にアンテナの尖った部分が淫核に突き刺さると、鋭敏な刺激に 絶頂感が襲いかかってきた。 「ひぃっ……! やぁ……っくぁ! はっ、はっ、頭が痺れちゃうっ……!」  最後は自分の手で達したかった王は携帯電話を枕元に置くと、空いた手で花弁を押し広 げ、剥き出しとなった挿入口に指を当てると、滑り込むように飲み込まれた。  律動的な肉襞の感触に翻弄されながら、王は膣道の天井を擦った。そこは最も感じる場 所で、何度も何度も責め立てれば全身を震わせた。 「光っ……あっ、やぁ……ダメ、見ないで」  目の前に置いてある携帯電話の画面に表示させた渡瀬の顔に、淫らな自分の顔が重なっ ていた。その瞬間、必死に繋ぎ止めていた理性の切れる音が聞こえた。 「はっ、はぁ、もぉっ……イっちゃう! ひぁっ……んふああぁああっ! あはぁっ」  切ない悲鳴を上げ、感極まった王はたっぷりと垂らした蜜液に尿を混じらせていた。悦 楽に震えながらも腕を伸ばしてタオルを手に取ると、股間にあてがった。  見る間に白い布が黄ばんでいく様子を王は蕩けた瞳で眺め続けた。  気だるい体に鞭打って普段着に着替えたあと、王はいまだ火照った顔を雨に濡れた窓に 押しつけて冷ました。その表情は、先ほどまでとうって変わって落ち込んでいる。  狂おしいばかりの欲情が満たされると、決まって自己嫌悪に陥るのはいつものことだっ た。性欲の対象が思い焦がれている相手ならなおさらのこと。想像の中で渡瀬を汚すこと に、歪んだ喜びと悲しみがない交ぜになって、 「でも、好きなんだからしかたないじゃない……」  誰に責められたわけでもないのに言い訳するのは、欲情に流された自分が許せなかった からだった。  渡瀬に告白してそれが成就すれば、こんな思いをしなくてすむのだろうか。尽きること のない苦悩を打ち消すように、額を小さく窓にぶつけた。  そこで窓越しに外を見下ろすと、玄関先に人影が見えた。降りしきる雨の中、傘も差さ ずに立ち尽くすその少女の姿は、見間違えようがない。 「光……?」  その呟きが聞こえたわけではないだろうが、外にいる渡瀬が王の部屋に向けて顔を上げ た。捨てられた子犬のように哀れみを誘う瞳は、彼女には似合わなかった。 「何で、どうして」  様々な疑問が溢れて頭が混乱したが、今はとにかく渡瀬をあのままにしておくわけには いかない。王はきびすを返して部屋を出ようとした。しかし、振り向き際、渡瀬が逃げる ように玄関先から走り出すのが見えた。  王は急いで部屋のドアを開くと、跳ぶようにして階段を駆け下りる。大きな音に母親が 何事か声をかけてきたが、返事をするよりも先に玄関へ向かった。  慌てているせいで靴を履くことに手間取り、家を飛び出した時には、遠く離れた通りの 向こうに渡瀬の背中があった。 「光っ!」  王が雨音に負けないくらいの声で叫ぶと、渡瀬が振り向くのがかろうじて見えた。しか し、彼女は走るのを止めるわけでなく、放っておくとそのまま雨の中に消えてしまいそう だった。 「待って、光!」  王は彼女に向かって走り出した。  傘を持ち出すことを忘れていたせいで、全身が雨に濡れてしまったが、取りに戻る余裕 もなければ、そもそも走るのに邪魔だった。  とにかく、ここで渡瀬の姿を見失えば、二度と会えないような気がして彼女に追いつこ うと必死で駆けた。  だが、全力で走っているのにその差は縮まらない。服が水気を吸っているせいで走りづ らいこともあったが、何より元々の運動能力で負けているせいだった。  それでも王は懸命に足を動かした。追いつけないにしてもそこで力を抜けば、渡瀬は幻 滅するに違いない。彼女が本気を出せば、たちどころに王はその背中をとらえることがで きなくなるというのにそうしないのは、追いついて欲しいからこそ力を抜いているのだと 思いたかった。 (光……。光がどうしたいのか本当のことはわからないけど、それとは関係なく、あなた に伝えたいことがあるから、あたしは絶対に追いつかなきゃいけないのよ!)  すでに王の呼吸は乱れ、思いのたけを言葉にする余裕すらない。ただひたすら、渡瀬の 後を追い続けた。おそらく彼女は自分の家に向かおうとしているのだろう。見覚えのある 道のりを駆け抜けながら、いつしか彼女の背中が近づいてきた。  王の本気が伝わったのか、走るのに疲れたのか、渡瀬のスピードが次第に落ちていって いるようだった。このままのペースで走れば、あと4、5メートル以内に追いつくはずだ。 だが、それでも王は前を走る少女の腕を捕まえるまでは安心できず、ラストスパートをか けた。  そして、それが仇となった。  もうすでに限界が来ていたのか、踏み込んだはずの右足に力が入らず、膝から砕けるよ うに体が前のめりに倒れた。  とっさに手を突いたが、走っていた勢いは止まらず、派手な水音を立てて転んだ。  気持ちだけはすぐにでも立ち上がって、再び走り出そうとしていたが、体がそれについ ていかない。地面にぶつけた体が痛みを訴え、力を使い果たした両脚が震えていた。  顔を上げると、渡瀬の背中が遠ざかってしまっていた。王が転んだことに気づかなかっ たのか、それとも寸前で追いつけなかったことに落胆したのか、振り向くことなく渡瀬は 走り去っていく。 「行かないで。行かないでよ! ひかりぃーーっ!!」  走れなくなった足の代わりに手を伸ばすが、むなしく空を掴むだけだった。  雨はますます勢いが激しくなり、容赦なく倒れた少女の体に降り注ぐ。視界が雨に遮ら れて、完全に渡瀬の姿が見えなくなると、王は頬に熱いものを感じた。 「やだぁ……」  あともう少しで手が届いていたはずが、自分の力が足りなかったせいで逃してしまった ことが悔しくて、涙が止まらなかった。 「光……光……」  降りしきる雨のなか、王は大切な人の名前を呼び続けた。

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