守ってあげたい 7話











翌朝目が覚めて、一番にしたことは自分の胸のサイズの確認だった。

昨日の夜、お風呂場でじっくりその大きさを確認したはずだが25歳時点でFカップだった自分の胸がBカップ強ぐらいになっているのを見て複雑な心境だ。

身長&胸の成長は高校生には入ってからで一生このままでは無いのは分かっているが、つねづね胸があって喜ぶのは男ぐらいだと思っていたがあったものがいきなり無くなるのも、落ち着かないというかなんというか複雑な心境である。

ちょっと気になるのは、今の自分の身長と胸のサイズだった。

ブラのサイズが、65のBで少しきついような気がする。

胸は正確なサイズのブラをつけていないと型崩れしやすいのだ。
自分が中学生時代はその辺は無頓着だったと思う。

まぁ、ワイヤー無しのスポーツブラもよいのですけどね。

今ひとつ色気の欠ける下着を見て、ちょっとため息。


昨日は疲れて早めに眠ってしまったので、起床は比較的早かった。

父さんは、例のごとく会社に泊りがけらしく。その存在すら感じない。

一抹の寂しさを感じるが、親の愛情を欲しがって泣く年でもなし父親とは埋められない溝があるこっちとしては家にいないほうが万々歳だ。

自分一人なので、朝食を付るのも面倒なのでそのままご飯も食べないである目的を持って、学校へと急いだ。









学園につくとまだ、7時半のせいか人影もまばらだ。

確か、テニス部の朝練の開始時間が8時半とかだったわよね…。始業時間も遅いし、重役の子供が多いから学校自体も重役出勤OKみたいな感じかしら?
自分のその想像があながち外れではなさそうで、ちょっと嫌になった。

青学とか朝練むちゃくちゃ早かったような気がするけど、ここまで違うと笑いがでるわ。

自分の中学時代を思い出しても、ラクガキだらけの壁、シミだらけの天井。

この氷帝の校舎に、何処にもその思い出とは重ならない。

思い出すと懐かしいような、悲しいような気持ちになる。


こんなチリ一つないお綺麗な校舎は落ちつかない。


そう思いつつ、目的の場所に急いだ。



「失礼します〜」


一応小声ながらも、挨拶をして入室すると予想通りの無人だった。
その目の前には、あるのが当然のモノが目にはいる。

そう、ここ『保健室』には身長を測る目的でやってきた。
お決まりの様にこには、身長を測定する器具もあった。

ローファーを脱いで、早速身長を測ってみる。


「…………。マジ?」


どう目を凝らしても、その目盛りは149.5センチの場所にあった。

150センチはあると思っていたのに、それに達してないと知ると結構なダメージになった。

もう、胸は縮むし身長は150無いし最悪。


「149.5センチって微妙?」


思わず口に出してそう呟くと。いきなり誰もいないはずのカーテンの引かれたベットの上から。


「微妙ちゅーか。お嬢ちゃんはお子様って感じやな」


その聞き覚えのあるエロボイスは。
ザっとカーテンを引いて開けるとそこには予想どおり。


「忍足侑士。何で、あんたがこんな所にいるのよ?」

「俺は、ちょっと夜更かししてしもうて朝練に遅れると跡部が煩いから、忍び込んでここで寝てただけやがな」


さらりと忍びこんだとおっしゃいますが、普通は、こんなセキュリティの場所には忍び込むなんて出来ないと思うのですが。
あーこいつだったら、保険医の先生とかと出来てて合鍵とかもらってそう。


「保険医の先生から、鍵もらってるとか?」

「なんや、よー知ってるな」


図星かい。そう突っ込みを入れたいけど、この中学生らしからぬ男の色気あふれる、忍足を現実に見ているととそれも納得出来そうだ。


「乱れてるねぇ」

「需要と供給が一致した結果や」


ふーん。あくまであっちが求めたから与えたって言いたいのね。


「まぁ、そんなのはどっちでもいいわ。私は、”忍足侑士”になんて興味ないから。私にその理論は適用しないわね」


面と向かって、こんなこといわれたのは初めてなのか、余裕ぶった眼鏡越しの微笑みが少々引きつって見えた。


「フン、言うてくれるなぁ」


そういうと、ベットの近くに居た私の腕をぐいっと引っ張った。
不意打ちを食ったわたしはベットで半身を預けたままの忍足に倒れ掛かっていく。

左手で腕を引かれ、右手で顔を固定されて。


うわキスされる。


そう思って、接近してくる彼のその顔に瞬間ビクリと反応すると。
唇が触れ合う1センチ前で止まり。


「なーんや。自分ホンマにキスされると思うたんか?」


とくすくすと馬鹿にしたような笑みで、微笑まれた。


「お嬢ちゃんみたいなお子様は、俺の趣味や無いちゅーねん。跡部とは趣味というか嗜好が違うんや」


跡部が興味を持ったお前になど、俺は興味は無い。言外にそういわれている様で気分が悪い。
確かに先にバカにしたのは自分の方だけど。何だかムカツク。


「へぇ…。そうか、そうなのねぇ。そうやって、私を貶める事で、自分の優位性を示しているつもりな訳ですね。
 安いプライドね。
 でも、そんなの私には何の関係もないの。世間知らずの坊やに、本当のキスを教えてあげるわ」


そう言って、今度はこっちから覆いかぶさり深い口付けを仕掛けた。

逃げられないように、両手で頬を包み込んで見せ付けるように唇を自分で舐め濡らし唇が触れ合うより先にベロリとその唇を舐めて驚きに少し開いたその隙間から舌を忍び込ませて、出来うる限りの技術を持って唇を犯した。

固まったままの舌の側面をぞろりと舐めとり、敏感な歯列を舐め上げるとピクンと忍足の体が震える。


内心の笑いをかみ殺しながら、チュっと漏れてきた蜜をすすり、我に帰って対抗しようと舌を絡めてきたが癇に障り、布団の下で確実に主張をもたげつつあるものをゾロリと撫で上げると。
息を呑む雰囲気がして、その舌の抵抗も止まる。


大人ぶってても可愛いものね。


とか思いながら調子にのってキスを続けていると自分の体まで高ぶってきそうになって、それをどうにか押し殺し最後にまたベロリと唇を舐めて離れた。

相手が高ぶり、その快楽に陶然としているところを引く。


これが一番くるのよね…。


「本当のキスのお味は如何?」


何処かぼーっとした風情で、ため息を吐かれる。


「あんさん何ものや?」


吐き出されるため息が、色っぽい。
男のくせにその色気は何って感じよね。


「んー。只の、通りすがりの少女Aですが・・・」


ちと古すぎたか…。


「冗談はどうでもええねん。俺こんなん屈辱や」


ああ、キスで主導権握られたのがよほどお気に召さないようで…。


「簡単よ。今まで、受身のキスってした事無かったってことでしょう?マグロのお嬢様方ばかり相手にしてきたからでしょ?
 そんな貴方じゃ、私には役不足よ」

「跡部となら、釣り合うって言いたいんか?」

「…………」


どうやら、表面上は仲よさそうに見えても俺様と天才の関係は今ひとつ複雑のようです。


「沈黙は肯定という意味か?」

「論外。何で選択肢が、跡部とあんたなのよ。私はどちらもお断わり。自分の好きな人や愛する人は自分で決めるわ」

「……そう…か。何や分かった気ぃするわ。」

「何が?」

「教えてやらん」

「ケチ」


リアルな跡部も忍足もある意味ドリームどおりのイメージなのかもしれないが、やっぱり実際に接してみると一味違う。


「まぁいいわ。それより、早く朝練行った方がよくない?」


時計を指し示すと、8時半を少し回ったくらいで。


「まず。はよう行かんと、跡部は遅刻には煩いねん」


バタバタ身支度をして去っていく背中に一言。


「2年にチョタって居る?」

「何や、長太郎と知り合いか?」

「んー。そんなもん、さんがお昼休みに交友棟で、会いたいって言ってたって伝えといて」

「何やその、さんって気持ち悪いな…。まぁええわ、言えば分かるんやな?」

「ええ」


そう言って去ってく背中を見送っていると、くるりと戻ってくると。

ちゅ

とキスを落とした。目を閉じる暇もないくらいの触れるだけのキス。
何だろうさっきした、大人のキスより全然可愛らしいモノなのに改まると恥ずかしかった。


「忘れもんや」


そう言って、さらりと頬を撫でて食えない微笑みを残して去っていった。


「ッ……」


ここまで来て、ようやく自分のしでかした一連の事にようやく思い至った。
成り行き任せで、忍足とキスしてしまいました。

アイターここじゃどう頑張っても、純情路線は無理っぽいのですが…。
あーあ。俺様と天才には喧嘩売るし、私の学園生活は暗黒って所ですか?




生き直す所か、ますますまずい立場に追いやられている気がする今日この頃だった。









 





2005.10.09UP

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