守ってあげたい 48話
自分の存在価値を見失う――そんなありえない状況になろうとは思いもしなかった。
あれから毎日といっていい程に、この世界の過去の情景の夢を見た。
部活動の何気ない情景やら、たわいもない思い出まで……。
まるで私に過去を教えるかのように、夢は繰り返された。
繰り返される、日々の情景。
その中で私は、自然に笑い。泣き、怒り15歳の感情のまま振舞っていた。
夢の中の私はとても幸せで満たされていた。
目覚めて感じるのは、言い知れない疎外感と孤独感だった。
どう考えても、異質で異端なのは私の方で正当なこの体の持ち主であるこの世界の“”を呼んでいるかのように、夢は繰り返される。
自分は自分でしかなく、他の何者にもなれない。
そんな当たり前である現実が揺らぎそうになる。
この世界に居る私が、彼女の居場所を奪った。
そんな罪悪感に苛(さいな)まれそうになる。
誰に責められた訳でも無いけど、幸村や立海大の皆が求めているのは私じゃない“”だろう。
その人達に、「俺達の“”を返してくれ」そう言われる事を想像すると身を切られる程に辛い。
だから、出来ることなら立海大の皆にはもう会いたくない。
そう思っていた。
鬱々とした状況に耐えかねて、私はしばらく自分で自嘲していた。
お酒を解禁することにした。
そうでもしなければ、ストレスで可笑しくなってしまいそうだったからだ。
OL風のメイクと衣装に着替え、軽い足取りで街に繰り出す。
そう、この夜の私は年齢詐称も甚だしいけど25歳OLとして振舞っていたので中身と唯一合致した姿でいられる。
過去だとか現在だとか気にしないで居られるので、気分的にも楽だった。
久しぶりにお気に入りのBAR来れて、私はその日かなり浮かれていた。
「マスターこれお替り」
「ずいぶんピッチ早いですが、大丈夫ですか?」
「んー。明日休みだし、大丈夫大丈夫」
ご機嫌でグラスを重ねていく。4、5杯飲んでいい気分になってきたときに。
後ろから誰かに話しかけられた。
「やっと、見つけた。また会えると、信じていたかいあったよ」
ビクリと思わず背が震えた。
この声は、この間の都大会の時にも聞いているから覚えている。
スツールを回転させ、くるりと振り返るとそこには予想どおり千石清純の姿があった。
「キヨ、久しぶりね」
顔が引きつりそうになるのを、何とか堪えて笑顔を保つ。
25歳のOLの触れ込みのはずなのに、処女喪失をしてしまっていたので。
あの時の言い訳をどうしようかと思いを巡らすけれど。
突然いい考えが浮かぶわけも無くて、気まずくてしかたなかった。
「メールは無視するし、この間の都大会の時も無視して帰っちゃうしってつれないよね」
「…えーっと」
あの時の事もどうやら、バレていたようです。
どう返したものかと思案するけど、やっぱりいい言い訳が思いつく訳もなかった。
そんな私を見てどう思ったのか、ふっと苦笑を漏らした後。
「まぁ、に会えたから全部チャラにしといてあげるよ。それに俺の方も深く突っ込まれると痛い事ばっかりだしね。その代わり今日はとことん付き合ってよ」
まぁ、都大会を見に行った時点で千石が20歳じゃないってのもバレているって事なのでお互い様っていう面もあるだろう。
「了解」
その辺を差し引いても、詳しい事情を聞かないでいてくれる、その優しさに甘える事にした。
再会の乾杯をして、世間話をしながらグラスを傾ける。
「、あれからこの辺来てた?」
「あ、んー。最近は全然飲みに来てなかったりする」
「じゃあ、会えなくて当然って訳だね。俺が、ずーっとここで張ってたって言ったらどうする」
「………。お疲れ様って言う」
軽口を叩きあい、顔を見合わせてクスクス笑いあう。
何も考えずに、微笑みあい。とてもリラックスしたひと時。
こんな何気ない日常に癒されている自分を発見して、何だかとても安心する。
気が緩んだのだろうか、だからつい弱音が漏れた。
「ねぇ、キヨの前に居る私が本当の私じゃなかったらどうする?」
「うーん。それどういう意味?」
「……。こうやってここに居る私が実はニセモノで、この体が他の人のモノだったとするとキヨはどう思う?」
「よく分かんないけど、二重人格とか記憶喪失とかそんな類?」
その問いかけを肯定する事も出来なくて、フルフルと首を振って答えた。
「ニセモノとかホンモノとかっていうのは、正直良く分からないけど。じゃあ、聞くけど怪我したり、傷ついたりして痛いのは誰?」
「そ、れは私よ……。痛いとか感じるのは私だわ」
「ふうん。じゃあ、ニセモノとホンモノの境目は何処?」
「……………。」
「答えられないなら、ニセモノが実はホンモノだったりするんじゃない?」
軽い調子で、そう言われてじゃあそうなんだ。そう納得する事は出来ないけど。
言われてみて、分かった事もあった。
色んな人に接して、喜んだり悲しんだり傷ついたりするのは過去の私じゃなく、現在の私自身なのだから。
ここにこうしている限り、喜びも痛みも自分自身のもので。
自分がニセモノかもしれない、そんな考えに囚われるのはやめようと思った。
「ありがと。ちょっと気持ちが軽くなった」
「そりゃ良かった。会ってからずっと暗い顔してたから、実は心配してたんだよね。悩みは悩みで置いといて、今日は楽しもうよ」
千石は明るい笑顔の裏側で、ちゃんと私を見ていてくれたみたいだ。
過去とか未来とか関係なく、私自身を見てくれる人がここにも居た。
「そうね。今日は、トコトン飲みましょ!」
そう言って、また再度乾杯をした。
其処からは、ハイペースで飲みまくってしまった。
前回何故、私があんな間違いを侵したのかその辺の教訓はちっとも生かされていないようだった。
ふわり、浮遊感に襲われた後にトサリと柔らかな場所に下ろされた。
そのやわらかさが心地良くて、口元に微笑みが浮かぶ。
ちゅ
唇に何かが触れて、それがもっと欲しくて唇を薄く開いてそれを誘う。
ほどなく降りてきた、それに舌を絡ませ唾液を分け合う。それがキスでかなり深い口付けを受けているというのを自覚するに至ってようやく意識が蘇ってきた。
「んっ……。だ、れ?」
「、起きた?」
目の前に居て私を組み敷いているのは、少し前に一緒に飲んでいた千石だった。
「起きたけど……。何してるの?」
「え?愛の営みかな?」
「そ、それは合意?」
そんな事聞くのは不自然なのは分かっているけど、記憶が飛んでいるので自分が何言ったのか覚えていないのであえて問い返した。
私のその問いかけに、ニヤリと笑って。
「合意に決まってるじゃん。『いいよ』って言ったその言葉は嘘?」
「……。あ……んー。でも……」
「ここまで来て、お預けはキツイしょ?」
そう言って、千石は私の手を自らの股間に触れされた。
その言葉の通り、其処は若さのせいかどうなのか既に硬く張り詰めていた。
その熱を身近に感じて、私自身の女が反応しそうになった。
それを押し殺すように小さなため息を吐くと、千石は耳元でこんな事を言った。
「ね、俺を感じてよ」
ふうっと息を吹きかけられ、そう言われて身体に熱が灯っていく。
酒に酔って、正常な判断力がつかないから仕方ない。
そんな言い訳を自分自身にしながら、私は腕を開いて千石を受け入れていた。
すでにボタンをはずされていて、ブラウスの前は全開だった。
丁度、フロントホックのブラをしていたのでプツンとホックをはずされるとまだ成長途中の私の胸が露になった。
「ねぇ、舐めてもいい?」
そんな事聞かれても、いいだなんて言える訳も無くて黙っていると口づけは首元に降りてきて胸元は両手で揉みしだかれた。
時折、先端の胸の飾りをクリクリとつまみ上げながら揉まれるとその心地良さに、あえやかな吐息が漏れる。
「んっ……」
首筋をたどる舌の動きと、胸の刺激だけでどんどん下肢が潤んでいくのが分かる。
思わず、両足をすり合わせるとグイっと脚を開かれ太ももの間に千石の身体が入ってきて閉じられない状態にされてしまう。スカートを上に押し上げられてしまって、ももの裏側を押しやられてショーツ越しにだけど其処を見つめられる。
「シミ出来てる。いやらしいんだ」
そのシミの部分を広げるように、布越しにグリグリされてしまう。
「あっ……んっ」
「ねぇ、あれから誰かに抱かれた?」
そう言われて、跡部と忍足の顔を思いうかべると。
その私の表情から、肯定の意味を読み取ったのか。
「へぇ、抱かれたんだ。じゃあ、おしおき決定!」
そんな事を言い出した。
「やっ、な…におしおきって?」
自分の意思で跡部と忍足に抱かれたので、おしおきという耳慣れない言葉の意味を問い返すと。
「俺がの最初の男って、訳でしょ?だから、は俺のものなの」
理屈が通るような通らない事を微笑みながら言う。
それに反論しようとして、ひらいた口は施された行為に嬌声へと化けた。
ショーツをまとわしたまま其処に口付けてきたのだ。
下着の上からでも分かるほどに、プクっと立ち上がった花芯を布の上から吸われる。
「あぁ…やんっ…」
その刺激はそのままにショーツの横から、熱く潤んだ蜜壷に指を挿入してきたのだった。
クチュリ
重たい水音がはっきりと聞こえる。
「すっごい、濡れ濡れ。下着透けまくりでいい眺め」
すぐに、指が増やされた感覚がして最初はキツさを感じていても内壁をかき回されていくうちにいつしか気にならなくなった。
「あぁっ、やっ…は…あぁっ」
胸の頂きを口に含まれ、反対側を揉まれもう一方の手で蜜壷を弄られると自分の身体が耐え切れない程高まっていくのが分かった。
纏ったままのショーツはぐっしょり濡れて、お尻の方にまで滴って来ている。
蜜壷をかき混ぜられ、花芯をも親指で同時に刺激されると。
「あぁっ…あんっ、ダメ…!イヤっ…んっ」
イってしまう。だけど、イッても全然手を休めずに、くちゅくちゅと音を立てて攻め立てられる。
「やっ…もう、やめっ……あっ」
イッたばかりなのに、続けて刺激を与えられて身体がビクビク震える。
「お仕置きって言ったじゃん。他の男に身体を許さないように、ちゃんとしつけてあげるからね」
ニコリと笑ってそう言われて、眩暈がするような感覚に陥る。
「さぁ、今日はお仕置きだからこのまま入れるね」
そう言うと、下着はそのままに横からグイっとずらし大きくそり上がったモノを挿入してきた。
「あぁっ…」
充分慣らされたはずだけど、まだ挿入には少し痛みが伴う。
ゆっくりと大きなものに割り開かれていく感覚の中に確かな、快感を感じて詰めていた息を吐いた。
「の中、キツクて気持ちいい。まだ、そんな慣れてなさそうだね」
嬉しいよ。そう言って微笑む千石の顔が、見たことの無い男の顔をしていた。
「ねぇ、キヨって私の事好きなの?」
夢うつつに、愛を告げられたような気もしないではないけど。はっきりとその言葉を聞いたわけでは無いので、今更ながらにそう問うていた。
「こんな事してて、まだそんな事聞くんだ」
そう言って、繋がったままでぐるりと腰を回される。奥を擦られると目の前がチカチカするくらいの快感を感じた。
「やっ…あんっ…ソコ…だめぇ」
「あぁ、ココもイイんだ。よーく聞いてね。俺はの事、誰にも渡したくないくらい好き」
穏やかな口調と表情でそう言うけど、その瞳は大人の男の目をしていた。
その表情に目を奪われていると、イイっと言ったその場所を殊更強くこすり付けられて大きな声で啼いてしまった。
「ああぁっ!!」
「しっかり、俺っていう男を覚えられるように。たっぷりお仕置きしてあげるからね」
そういい終わらないうちに、奥まで入っていたモノが抜ける寸前まで引かれ、ぐちゅりと大きな音をたててまた奥まで打ち付けれた。
奥を突かれるたびに、グリグリと奥を擦られて声が枯れるほど啼かされ、イかれれた。
何度目の交わりか、定かでは無いほどに抱かれ気を失うように眠りにつくまでそれは続けられた。
眠りに落ちていく中、しっかりと私を抱きしめるその感覚にとても安心していた。
その夜、久しぶりに私は夢を見ない眠りについた。
2006.03.21UP