守ってあげたい 41話












跡部side

を初めて抱いて、そしての口から忍足の名前を聞いた俺はと向き合う事を避けた。
現実からの逃げだと言う事は分かっていた。

自ら、『忍足のかわりでもいい』そう言ったはずだった。

だが、現実にの中に忍足という消せない存在が居る事を改めて知り。
悲しみと嫉妬がない交ぜになって、もし目の前にが居るならなじってしまいそうだった。


「俺を見ろ。お前を誰よりも愛しているのは、この俺だ」


そう口にして、みっともなくも懇願してしまいそうになる己が居て。

愛しくて、憎くて……。

腹いせに誰か他の人間を抱こうとしても、誰もお前の代わりにならない。
欲しいのは、ただ一人だった。

俺の下で快楽に瞳を潤ませ、熱い吐息を吐く。
唇を合わせば、俺の愛撫に答え積極的に舌を絡ませてきた。
その事実が嬉しかった。

遠かったお前の心が俺の近くに来たそう感じられて俺は有頂天だった。
白くすべらかな肌を吸い上げ赤い華を散らし、舌を這わせばその肌が快楽にピンク色に上気してえもいわれぬ艶を纏う。

熱く潤んだその場所は、俺を熱く迎え入れこの上もない快楽を俺に与えてくれた。
愛して止まない女と、やっと一つになり手に入れた。
そう思っていた。

だが、は忍足の名前を呼んだ。

絶頂を極める瞬間。

無意識だからこそ、余計に人間の本音が出る瞬間だろうことが分かる。

俺はお前に名前を呼ばれたい。
誰よりも求められたい。
強くそう思う。

その思いが強ければ強いほどに、俺自身を苦しめまた、にそれを強要しそうになる自分を恐れてを避けた。

在る朝、からメールが来ていた。
夜遅い時間に着信していたメールの内容は、『出来るだけ早く、話がしたい』という完結な内容のものだった。
そのメールを見て、『ああこの時が来たか』とそう思った。

分かっていた。が誰を愛しているのかは、誰よりもを見てきた俺だからその思いが誰に向かっているかなど、分かりすぎるくらい分かっている。
忍足とは下らない行き違いでこういう状態になっているということも知っていた。

だから、二人の仲が戻れば自分がお払い箱だということも分かっていた。

はじめから望みの無い恋だった。

それでも、一瞬でもいいから俺の腕に抱きとめたいそう願った。

いずれ、いや確実に終わりの時が来る。
愚かな俺は、それが分かっていながらもと共に居る事を選んだ。















昼休みが来て、が待ち合わせの場所にやって来た。
髪の短くなったお前、不ぞろいの髪のまま抱き合った少し前とは違う印象を受ける。

どんな姿になっても、こみ上げる愛しさは変わらない。


「話とは、何だ?」


わざと冷たい声音で、突き放すように聞く。


「忍足と話したの」


俺にはそれが、死刑宣告に聞こえた。


「それで?」


わざと、淡々とした声で次を促す。


「誤解が解けたの……」

「それは良かったな。とでも俺が言うと思っているのか?
それで、お前は今度は俺を捨ててヤツの元へと帰るつもりか?」


こんな事を言っても、現実は変わらないということは分かっていた。
どんな言葉を使っても、心は縛れない。


「…そんな、つもりじゃ」

「じゃあ、何故それを俺に告げる?」


俺の問いに答えずには。


「最近どうして、私を避けるの?」


そう聞いてきた。

抱かれている最中に他の男の名前を呼んだ事。それを告げればきっとは傷つくだろう。
適当な言葉で、誤魔化すことも出来たはずだ。

だが、俺は自分自身の痛む心を持て余して。


「お前は俺に抱かれて、忍足の名前を呼んだ」


そう言っていた。

俺のその言葉を聞いて、の顔がみるみる苦痛に歪んでいく。

消えない疵をつける。
誰と幸せになっても、誰を愛しても古傷のようにうずく癒えない瑕をに刻み込みたい。

己の暗い感情に、愕然としながらも俺はに嫌われるべく拒めない状況でに手を伸ばした。

こんなやり方は間違っている。

人が人を愛する事はもっと暖かで柔らかな春の陽だまりのようなものだと思っていた。

だが、現実には人を妬み。愛する人の不幸を喜び、その不幸に付け込むようにして半ば強引に手に入れた。

その結果がこれだ。

どうしても譲れない、手に入れたい人を手中に収め幸せだったのは一時だった。
抗おうとしていたの手がぱたりと落ちたのに気付いた。


「……同情という訳か」


俺のその声に反論するように口を開いたを深く貪る。
歯列をなぞり、舌を絡ませ口腔を蹂躙する。こんな風に強引に抱きながらも、心の中はへの思いで一杯だった。

愛しているから慈しみたいという思いと、愛すればこそ自分のものにならないへの憎しみで俺の心は千切れそうだった。どんなに乱暴に扱おうとしても、無理だった。

憎しみも怒りも、愛すればこその感情でましてやを抱くのはこれで最後になるだろうことは分かっていた。


愛していても、手に入らない――――憎くて愛しい女。


自分の中の、激情を押し殺す為にわざと着衣を脱がすことなくを抱いた。
服の上からでもはっきりと分かるほど、しこった乳首をきつくつまみ上げると痛みに耐えるようにビクリと体が緊張する。

ひどいことをしている。甘く蕩かしたいという思いと苦しめたいという思いが鬩ぎあう。
数度それを繰り返し、わざと羞恥を煽るようにスカートを巻りあげ下肢を覗き込むと、そこはすでにあふれ出した蜜でぐっしょりと湿っていた。


「フッ…下着の意味ねぇじゃねぇか。透けるほど濡らしやがって」


そう揶揄しながらも、己の愛撫に感じている事実を見て嬉しいと思える。

今お前を抱いているのはこの俺だ。

そうしてもっと感じさせてやりたいその思いで、たっぷりと潤んだ場所に迷わず口をつけていた。秘烈をなぞるように舐め上げ、下からの蜜を花芯にたっぷり纏わせ舌で転がすと。


「ッ…ああっ…ヤ…んっ」


と堪らない声で鳴く。まだまだ、狭く不慣れな場所を慣らす為に指を入れると、きつい締め付けの中に絞り上げるような動きを感じで、指での挿入でもが感じているのが分かる。

早くお前と一つになりたい。

その思いを、押し殺して狭い中を充分に慣らした後にゆっくりとの中に押し入った。



繋がっていても、心は遥か遠くにある。



その皮肉さに、暗く哂いながら愛おしい女の体を貪った。
俺という男をの中に刻むために、じれったいほど優しい動きでの快楽を引き出すように腰を使う。

最初は挿入の痛みに、竦んでいた内壁も優しい挿入を繰り返すうちに熱く潤みしっとりと俺を包み込むようになっていった。
前に抱き会った時に、見つけていたのイイ場所を巧みに擦り上げるように腰を使うと覿面にその場所がヒクヒクと蠢きだす。


「ん…ソコ…やっ……んっ…もう…ダ…メッ」


いきそうになるとはぐらかして、おさまったらソコを突くを繰り返してたっぷりと甘い嬌声を聞いた後。


「…やぁああっ…ゆ…うし…」


と声を上げて、がイッた。その後、引きずられるように外に吐精したが俺はの声なき声に気付いてしまった。
声こそ殺したが、はやはり忍足の名前を呼んでいた。

急速に熱が冷えていく。

を突き放し、己の身づくろいを済ませ。


「テメェのような女はこっちから願い下げだ。忍足の元へでも何処へでも勝手に行きやがれ」


わざと、憎々しげな声を出してそう言っていた。
これ以上を引き止めるような事を言うのはを苦しめるだけ。それを分かっていたからこそ、心にも無い事を言った。

は気だるげな体を起こして、身なりを整えた後に。


「跡部、ごめん」


そう言って、去って行った。

俺は追いかけて、抱きしめたい気持ちをじっと堪えるのに精一杯だった。



愛してる。



もう口に出せない言葉。


その言葉を俺は、心の中でかみ締めていた。







 




2006.02.26UP

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