守ってあげたい 40話
跡部と話し合わなければいけない。
そう決めた私は、その気持ちが萎えないうちに跡部にメールを入れていた。
『出来るだけ早く、話がしたい』と。
そうやって早く話をつけて忍足の元へ行きたい。
身勝手にもそう考えていた。
夜遅く、メールを出して朝携帯を確認すると返事が来ていて昼休みに例の生徒会室で会うことになった。
何をどう切り出して話そうかそればかり考えていたので、時間がたつのが早かった。
に忍足と話をしたと告げると、ホっとしたような顔で微笑んでくれていた。
その顔を見て、どれ程心配をかけていたのか分かった。
「ゴメン。素直に言えなくて……。」
「いいわよ。うまくいきそうなら、それだけで私は。
は思ったより意地っ張りね何でもかんでも自分一人で抱えて、はたから見ている方はそれだけでハラハラしちゃったわ。
これからは、ちゃんと遠慮しないで私に相談してね」
忍足に言われたとおり、には全部お見通しだったようだ。
知っていて何も言わずに、見守っていてくれていた。その気持ちが何よりも嬉しかった。
「で、どうなったの?」
「誤解というか、気持の行き違いについては解決したの。でも、今私は跡部と付き合っているじゃない?だから、その場で即答は出来なかったの」
「そう、ね。確かに、その通りだわね。……跡部君と別れるつもり?」
のその問いにコクンと頷くと。
「恋愛ってうまくいかないものね。あっちを立てればこっちが立たずって感じで……。中々難しいわね。まぁ、頑張りなさい。どうなっても私が骨は拾ってあげるから」
そう言って、は笑ってくれた。
久しぶりのとの昼食の後、跡部の待つ生徒会室へと向かっていた。
扉の前まで来て、すうっと深呼吸をした後にノックをする。
コンコン
「入れ」
命令することに慣れた、支配者の声。
促され中に入ると、どこか憂いを含んだ眼差しの跡部が居た。
ちょっと前までは、仲良く二人で昼食を取っていた場所でこんな風に向き合うようになるだなんて予想もしていなかった。
「話とは何だ?」
いつものように隣じゃなく、対面に腰掛てすぐに跡部がそう切り出してきた。
「忍足と話たの」
「それで?」
「誤解が解けたの……」
「それは良かったな。とでも俺が言うと思っているのか?
それで、お前は今度は俺を捨ててヤツの元へと帰るつもりか?」
「…そんな、つもりじゃ」
「じゃあ、何故それを俺に告げる?」
その問いに答えずに、用意していた言葉をぶつけてみる。
「最近どうして、私を避けるの?」
抱かれた後、急に冷たくなって避けられているのは事実だから。
そこから、責めてみる事にしていた。
「何故避けるのか?それを俺に聞くのか……」
そう言う跡部の瞳が悲しげに揺れる。
「ここで、飽きたとか興味が無くなったとかいう答えを期待しているのだろうが。残念だがその答えはやれそうにない。覚えてないだろうが、」
そこで一端言葉を区切り、強く瞳を見つめられる。
「お前は俺に抱かれて、忍足の名前を呼んだ」
「…え。…ウソ……」
「初めて愛する女を抱いて、俺はあの時幸福の絶頂にいた。
……だが、あんな形でお前の中にまだ忍足が居ることを思い知るとは思わなかった」
予想だにしなかった事を言われ、またその時の跡部の気持ちを思うといたたまれない気分になる。
「お前を愛すればこそ、お前の顔を見るのが辛くて一時的に遠ざけた。
そんな隙間をついて、忍足はお前を取り戻したのか……。皮肉だな」
弱い私が招いた結果は、こうやって跡部を苦しめた。
胸が激しく痛む。だけど、こんな胸の痛みよりきっと跡部の方が何倍も痛いと思う。
私だけを愛してくれて、一途な愛をくれる優しすぎてかわいそうな男。
最初は傲慢で、俺様で全然タイプでも何でも無かったけど。
深く知るにつれ、純粋で寂しがりやで繊細な人だということに気がついた。
抱きしめてあげたい。
打算も何も無く、そう思う。
だけど綺麗過ぎる愛情を受けるには、私は汚れすぎた。
どうして、私の事を好きだと思ってくれるんだろう?
忍足も跡部も本当に私にはもったいないとさえ思う。
「跡部、苦しめてごめんね」
どう償っていいのか分からないから、謝罪の言葉を口にしてみてもそんな言葉では何一つ跡部の傷が癒えないだろう事は良く分かっていた。
「謝るくらいなら、抱かせろ。お前はまだ俺のモノだろ」
悪ぶって、そう言うのに跡部の顔がとても辛そうでいたたまれない気分になる。
ゆっくりと私へと伸ばされる手を、どこか他人事のように見ていた。
―――――その手を振り払う権利を私は持っていない。
強引に引き寄せられ、貪るように口付けられる。
抵抗しようとした手は、一度空をかいた後にパタリと落ちた。
抵抗をやめた私に、一瞬跡部の動きが止まる。
「…同情という訳か」
違うと口にしたくても、噛み付くように口付けられ呼吸を奪うかのように、舌を絡められ、吸われ、口中を蹂躙される。
こんな時でも、私を酔わせる跡部の口付けに泣きたい気持ちを押し殺す。
きっと私より跡部の方が辛いのだから。
私は、なんて傲慢だったんだろう。
冷たくなった跡部の態度に、簡単に別れられる。勝手にそう思っていた。
自分の寂しさを紛らわすために、跡部の優しさを利用していた。
なのに、忍足との仲が戻れば用済みとばかりに跡部を切ろうとしていた。
自分自身の思い上がりが、跡部をこんなにも苦しめている。
ソファに押し付けられ、苦しいほどの口づけはそのままに釦一つはずすことなく胸に手を伸ばされ揉みしだかれる。
服の上からでも分かるほど、主張しはじめた胸の飾りをぎゅっと抓られてしまう。
「いっ……」
痛みに背を仰け反らせるけど、手を緩めるわけでもなく。数度繰り返され、疼痛が疼きに変わりそうでにじみ出る涙を堪える。
そんな私を知ってか知らずか次はブラウスを捲り上げられ、グイっとブラジャーを押し上げられる。
先ほどから繰り返された刺激で赤く色づいた乳首が嫌でも目に入る。
そこを見せ付けるように舐めしゃぶられ、時折甘噛みされてかみ殺しきれない嬌声が出る。
「ぁっ…ん。イッ…あぁん」
「こんな事をされても感じるのか…淫乱。さぁこっちはどうなっている」
下肢に手を伸ばされる。
其処は確認するまでもなく、はしたないほど潤っているのが自分でも分かる。
グイと両足を割り開かれ、スカートを捲り上げられそこを覗き込まれる。
「フッ…下着の意味ねぇじゃねぇか。透けるほど濡らしやがって」
いまいましげに、そう言われショーツを剥ぎ取られる。
ひざ裏をぐっと押しやられ、体がくの字に折り曲げられる。
羞恥に、瞼を閉じるといきなりその部分に濡れた感触がして跡部に舐められている事が分かる。
「ッ…ああっ…ヤ…んっ」
強引に抱くだけなら、こんな愛撫などいらないはず。だけど、こんな時でさえ跡部は私を優しく抱く。
きついのは言葉だけで、施される愛撫は悲しいくらい優しい。
花芯を吸われ、蜜壷を優しく刺激され溢れ出る蜜は止まらない。
「舐めても舐めても、きりがねぇ……」
そう揶揄されても、私の口からもれでる声は嬌声にしかならなかった。
たっぷり愛撫を施された後にやっと跡部が押し入ってきた。
まだ、挿入が痛む私の体内に優しく入ってくる。
「…あぁ…いたっ…い……あん……」
私自身の快感を引き出すようなゆっくりとした律動から、始まり激しくなっていく動き。
既に見つけられている、私の弱いポイントばかりを突かれ自分の体が燃え上がってくるのが分かる。
心だけとり残されたまま、体が高まってゆく。
「…やぁああっ…ゆ…うし…」
幾度目かの律動で、イク時に自分が口にしようとした言葉に愕然とした。
ゆうし、確かに私はそう言おうとした。
確かに今跡部に抱かれている。そんはずなのに、私が口にしようとした言葉は……。
跡部の言うとおり、忍足の名前を呼んでいた。
私は、最低だ。
ぽろり、涙が毀れた。
跡部に抱かれながら私はある決意を固めていた。
2006.02.24UP