守ってあげたい 28話












連れて来られたのは、自分宅のマンションと同じくらいの広さだった。
というかグレード的に、うちより高級な感じだ。
うちの家は3LDKだけれど、忍足は一人暮らしのはずだけど同じくらいの広さしだと思う。
そこはかとなくインテリアも高そうで、跡部ほどじゃなけれど忍足の家もお金持ちらしかった。


「ここって、賃貸?」

「いや、ちゃうけど。何や、急に?」

「ちょっと気になったから……」


まぁ、普通初めて家に呼ばれて、賃貸か分譲か何て聞く女は居ないでしょうね。

やっぱり分譲だったわね。氷帝はお金持ちだらけね。

本当はお宅訪問でもしたい気分だけれども、昨日跡部の別宅である億ションに連れ込まれた時もさり気なくチェックはしていた。


「跡部から大体は聞いたけど、改めての口から事情聞かせてもらえるんやろうなぁ?」


ゆったりとソファに腰掛けて、足を組んで悠然と微笑んでこちらを見ている。
忍足と付き合っている訳でもないのに、何だか後ろ暗い気分になるのは何故だろう?
気持ち的に負けそうになってしまう。


「別に、忍足と付き合っている訳でもないのに…。話す必要ないじゃない」

「……。そんな所に突っ立って無いで、座りいや。何や俺が怖いんか?」

「そんな訳ないでしょ」


そう言われて、ムっとしたので忍足の横に一人分のスペースを開けて腰掛けた。


「付き合おうてない、跡部にはちゃんと話したらしいやんか。それって、俺が跡部に劣る存在ちゅう訳か?」

「あれは、売り言葉に買い言葉というか……。まぁ、いいわ。そんなに聞きたいというなら、話すけど。先週の金曜日なんだけど、夜飲みに行って飲みすぎちゃって、翌朝目が覚めたら知らない男とベットに居ました。以上これが全部よ」


一気に話終わって、忍足を見ると目をパチクリとしてちょっと吃驚した顔をしていた。

あれ?跡部から聞いているはずよね?


「ふうん。それで?」

「それでって言われても、それが全部だから。これ以上話すことなんで無いわ……。まぁこれで、バージン喪失しただなんてマヌケもいいとこだろうけど」

「!」


バージン喪失の言葉に、忍足の顔が驚愕している。


「あれ?跡部から聞いたのよね?」


そう問い返すと、いきなり笑い出した。


「なるほど、はははっ……。こりゃ、跡部がすんなり口を開かない訳や。あ…はははは…」


てことは、跡部から聞いていなかった訳で……もしかしなくても、カマかけられた訳ですか?

あっさり騙されて、言わなくてもいい事言ってしまったということね。


「酔っ払って、目が覚めたら知らん男とホテルのベットってのが初体験って豪快やなぁ……。しかし、キスにあれだけのテク持ってて処女ってある意味サギやなぁ」


そう言いながらも、まだ笑っています。まぁ、心からの笑いって言うより乾いた笑いみたいな感じですけどね。


「そんな風にカマかけなくても、普通に聞いてくれたら普通に答えたわよ」

「ホンマか?」

「そりゃあんまし、聞こえのいい事じゃないけれど。紛れも無い自分のしたことだしね」


しっかりと瞳を見て、そう言ってやる。
これで、嫌いになるなら嫌いになってもいいそういう意味合いを含めて、しっかりと瞳を見つめる。


はまっすぐやな」

「私が?それは買いかぶりよ」

「いや、まっすぐで。キラキラしてて、俺にはまぶしいわ」

「何の冗談?笑っちゃうわよ。ちゃんと私を見て、そんなにたいした存在じゃないから。嘘だって吐くし、弱い部分もあるわ」

「そんな風に、逃げない姿勢に惚れたんかもしれん」

「え?惚れたって……」

「降参や。俺はにメロメロや。別に女の処女なんかありがたがる気いなんかちいっともあらへんけど。ガラにもなく、の最初の相手になりたかったと思うくらいにお前の事が好きや」

「これって、もしかしなくても愛の告白?」

「そうや」


戸惑いがちに問い返しても、間髪いれずに肯定の返事をされる。

ここに来て特に何もしなくても、言わなくても忍足は落ちた。やったという気持ちと、なんだろう……。計算とかじゃなく、女として嬉しいと思える。

じんわりと心の奥が暖まるような感覚と、じわじわと何かがあふれ出てくるような感覚がする。

この気持ちを認めてもいいのだろうか?でも……。忍足は、を傷つけた男なのに。


『自分に嘘つかないで』


の言葉が脳裏をよぎる。正直になってもいいのだろうか?

友達を傷つけた男を好きになっても許される?


?俺の言葉が信じられへんか?」


いつのまにか、至近距離に来ていた忍足に顔を覗き込まれる。


「私って、忍足事好きなのかな?」


意識せずに、ポツリと言葉が零れ落ちる。私の独り言に似た問いに忍足は。


「多分、好きなんちゃうか?」


と軽い調子で返して来た。思わず、顔を見返すと口調の軽さと反比例するような真剣な顔で私を見ていた。
私と目があい、眼鏡越しのその瞳が辛そうに歪む。


「いや、好きやったらええなと思うけどな。こればっかりは、俺はや無いからその心の内までは分からへん。
 いつから、好きになったとかよーわからへんけど。気がついたら、好きで好きでどうしようもならなくなっとった。
 振られたばっかりやから、真実味が無いかもしれへんけど。この気持ちには、嘘はあらへん。大事にするから俺のモンになり」


YESって言ってもいいのだろうか?
怖い。怖い。恐怖にも似た感情に支配される。
に知られるのが怖い?
多分それもある、でももっとも怖いのは。
もう一度、人を信じて裏切られるのが怖いんだ。


「信じられない」

「俺の事信じられへんのは、分かるけど。努力するさか」

「違う。忍足の事信じられないって言うんじゃないの。信じられないのは私自身の問題だから……。」

「言ってることの意味がよーわからへん」

「ここに来る前に、好きだった人に振られたの。とても、とても大好きだったから。好きだったから、全部信じて何一つ疑わなかった。疑おうとする気持ちを封じ込めてた。でも結果は、散々で…。忍足の事信じたいけど。信じられる強さが私には無い」


だから、ごめんそう続けて忍足の事見ると何故だか微笑っていた。


「返事は、嫌いやからゴメンじゃないんやな?」


そのとおりだから、反射的に頷くと。


「なら、遠慮はせぇへん。の言葉聞いとると、俺の事は好きやけど信じるのが怖いからって言うとるように聞こえる」

「あっ……」


言われていることが図星すぎて、今更ながらに顔に朱が走る。
信じたい=好きだっていう単純な図式に気づいていなかった。
うつむいて、忍足の目線から逃げようとすると顎をすくいあげられて口付けが降ってきた。
ゆっくりと啄ばまれて、泣きたくなるくらいに優しい口付けを私にくれる。強引さは何処にもなくて、あるのは優しさと求められているという実感だけだった。
自然と唇はほどけて、忍足の舌を迎え入れていた。

いつもみたいな主導権争いも無く、ただ忍足に身を委ねてうける初めてのキス。
身を任せると簡単に体が、快楽へと溶けてしまいそうになる。
舌と舌を絡ませあい、含みきれない唾液が顎を伝い落ちても静止する気持ちは無かった。

気持ちを抑えようとすればするほどに募っていく思い。この気持ちを恋だと認めると、全部自分がなくなってしまいそうで怖かった。

だって自分の体は違うけど本当は心は大人で、10個も年下の子供に本気で惚れるなんてそんな事ありえないと思っていた。

でも、この胸の痛みは……狂おしいほどのこの思いは、忍足を愛してしまったことの証明だった。
ゆっくりと、口付けをはずして。


「私も、忍足の事が好き」


声に出してそう言うと、尚更思いが募った。


「そうか、ほな両思いやな。これで正真正銘のカレカノや」


そう言って、忍足は私をぎゅっと抱きしめた。


「嬉しいなぁ。今なら何でも出来そうな気分になるわ」

「私でいいの?」

「そらこっちのセリフや。ホンマに俺を選んだんやな?」

「うん。私も気がついたら好きになってたみたい」


建前やら、言い訳じみた感情を取り除くとそこにはただの好きという感情しか残っていなかった。


「なら、もっと仲良うなろうか?」


その問いが何を意味しているか、分からない私じゃなかった。
もっと側に来て欲しくて、一番近い場所で貴方を感じたくて私は頷いていた。
この夜が、私にとって更なる苦しみを与えることになるだなんて私はこの時分かっていなかった。












明かりの灯ったリビングで事に及ぼうとしている忍足に。


「ゆっくり愛し合いたいから、ベットがいい」


耳元で、そう甘く囁くと逆効果だったのか。


「あかん、そんなん言われたら余計逆効果や」


そう言われてしまって、発情した雄の瞳をした忍足の顔をまともに見つめてしまって私自身もスイッチが入ってしまった。ゆるく口を開いたまま口付けを強請ると、熱い舌が滑り込んできた。口付けを受けながら、忍足の器用な手がネクタイを解きブラウスの釦をはずしてゆく。

口付けも完全な受身に回ると、感じ方が違ってくる。
舌裏の敏感な部分を舐めあげられ、甘噛みされだんだん快楽にボーっとしてくる。口付けが首筋に移った時に、ピタリと動きが止まった。


「なに?」


快楽に霞がかかった頭の中、問いかけると。千石に残されたキスマークを凝視していた。大分薄くなってきていたので、ファンデーションなどで隠す事をしていなかったのだが、それと思って見ないと分からない程度の跡になっていた。


「コレ、つけた奴がの最初の男って訳やな」


指でその跡をなぞられ、次の瞬間その場所に強く吸い付かれた。


「んっ……。いたっ」

「ほら、これでもうこの跡は俺のモンになった。事故みたいなもんやから、例の初体験はもう忘れてしまい」

「うん。というか、本当は酔っ払ってて殆ど覚えて無いの。だから、本当の初体験は今なのかもね」


正確にはこの体での初体験はって意味だったけれど。この体での、記憶のある初体験は今このときだった。


「そうか、ほな大事に抱いたらなあかんけど。俺の理性が何処まで持つかやなぁ……。の事が欲しくて欲しくて堪らんから、ほらここももうこんなんなってるし」


忍足の股間への導かれた、そこは既に硬く張り詰めていた。予想はしていたけれど、そこは結構立派でウブな少女なら真っ赤になって、手をひっこめるだろうけど。形をなぞるように刷り上げてやるとますますそこが硬くなっていくのが分かる。


「ちょっ、そんなに俺を煽ってどうするねん。初心者相手に本気出す訳にもいかんから、必死で抑えとるのにそんなんされたらますます逆効果や」

「あら…。本気じゃ無い訳?」


分かっていてイジワルにそう問い返す。


「本気も本気に決まっとるやないか。遊びやったら、相手を気遣ったりはせえへん。本気やから大切にしたいんや」


照れ隠しに茶化したつもりが、忍足は真面目に返してくる。「大切にしたい」そう言ってくれた言葉が嬉しくて、笑みがこぼれる。


「なら、本気になって尚且つ、大切に抱いてくれればいいと思うわ」

「……。、初めて好きになった女抱くんやで、自分で自分をセーブする自信なんてあらへん。やから、あんまり俺を煽るんはやめとき」

「今本気で愛してくれないと、忍足の事信じられないかもよ」

「よう分かった。俺を煽ったこと後悔させたるわ」


何もかも忘れて今は、忍足との行為に酔いたかった。だから、わざと煽るようなことばっかり言っていた。
そうでもしないと、臆病な自分は誰かに強く求めれている。そう感じないと不安でたまらなかったのだ。


やっぱりベットがいいと再度控えめに言うと、ため息交じりにお姫様だっこで隣のベットルームに運んでくれた。
そこで、すべて剥ぎ取られお互い生まれたままの姿になる。
つい、忍足自身に手を伸ばそうとするとピシャリと手を叩かれてしまう。


「俺を愛撫してくれようとするんは嬉しいけど、今日はおあずけや。今日は俺にを愛させてくれ」

「えっ……でも…」

「たっぷり、俺の本気感じさせてやるさかい。今日はおとなしくしとき」


年下に主導権にぎられるのは面白くないけれど、仕方なくその言葉に従うことにする。軽く唇をついばまれ、だんだんと口付けが首筋から鎖骨胸元へと降りてくる。Cカップ弱の胸の膨らみをゆっくりと揉みしだかれ、すでに主張している胸の飾りを片方は指で愛撫され片方は口で嬲られる。
それだけで、下肢にジンとした熱が灯る。そんな私の様子を知ってか知らずか両足の間に体を割り込まされて閉じられない状態にされた。つまり、どう取り繕っても全部丸見えな訳で……。
いくら年齢を重ねても、羞恥心が無くなる訳じゃなくて幼い自分の体を初めて抱かれる男に見られるのは正直不安と羞恥心がない交ぜになっていたたまれない。だから、左腕で顔を隠してしまう。
そんな私の様子に気づいているはずなのに、何も言わずにどんどん愛撫を濃くしてくる。

閉じられなくした下肢に指を這わせながら、ちゅぱちゅぱと胸の飾りを吸われる。既に、言い訳も出来ないくらい潤っているのが自分での分かる。そこに徹底的な愛撫じゃなく、軽くなでるばかりの、間接的な刺激施されて何度も繰り返されるうちに物足りなさに腰が揺れる。


「んっ……。ぁっ…」


腕をずらして、忍足を見ると。微笑みながらこちらを見ていた。


「ああ・・・。やっと顔見せてくれた。天の岩戸をどうやって開かすか考えとったところやで」


ということはわざとだった訳で、ムっとして何か言ってやろうとすると。そのまま忍足は私の下肢に顔を寄せ、充分なほどに潤っているその場所を舐め始めた。


「ああっ……。ヤっ…いっ…ああん……」


抗議の声もあえぎ声にしかならなくて悔しい気もするけれど、嬉しそうに微笑まれると。もう年下とか年上とかもどっちでもいいかと思うようになった。

溺れるのもいいかもしれない。

ゆっくり舌で秘烈を舐めあげられ、すでに小さく立ち上がっている花芯を指で揉まれてそれだけで軽くいきそうになった。


「んんっ…。ああっん」


あまりに早く絶頂を極めそうになって、忍足を退かそうとすると今度は花芯をちゅっと吸われて、のけるどころか押し付けてしまった。


「濡れ濡れやな。初心者やから、ようほぐしたらないかんと思うけど。こんだけ濡れとったら何もせえへんでも入りそうやけど」


そう言いながら指を一本ぐいっと蜜壷へと入れられたけど。それをぎゅっと締め付けると。


「ものごっつ、狭いな。かなり具合はよさそうやけど、このマンマはやっぱりキツイやろうなぁ。ならやっぱり」


入れられた指はそのままに、それに這わせるように舐めあげられてしまう。強引に中の花びらまで舐め濡らされ解され少し緩んだら指を2本に増やされ、その間に中のいいポイントを探されてそこを重点的に攻められてしまい。
簡単にイッテしまった。


「ふぅん。ここか」


探したばかりのポイントを反復するように刺激されて、イッタばかりの敏感な体はヒクヒクしているのに無常にもそこばかり責められてしまう。


「やっ…も、そこしないで……おかしく…なる」

「もうちょっとで、理性切れそうなんや。そうなったら、にええ目にあわせてやれんかもしれんから。今は啼いとき」

「あっ…あああっ…ん、ああっーーっ」


と立て続けにイカされてしまった。ぐいっと指を増やされる感覚がして、少し痛むけれど力の抜けた体はいつのまにかその質量を受け入れていた。


「もう大丈夫そうやな。入れてもええか?」


コクンと頷くと。


「今のうちに謝っとくな、多分とめようとしても止まらんと思うから…。今日は危険日か?」

「え?ううん。安全日だけど」

「そうか、なら遠慮のういけるな」


そう言うと、忍足の張り詰めたモノが宛がわれてゆっくりと中に入ってきた。たっぷり解されたけれど、やっぱり痛みが走る。つい、力が入ると。花芯に手を伸ばされて、気を逸らされてそこが緩んだ瞬間に、グっと奥まで貫かれてしまった。

スタンドライトの明かりだけの薄闇の中で、正常位で繋がってるのをぐいっと足首をもって大きくひらかれ、忍足の目線を追うと結合部が丸見えで恥ずかしさに身を捩るとそれさえも刺激になってしまい。


「やっ…あっ」

「ああ、すまん。完全に俺のモンになったちゅう実感がほしゅうってな。つい、俺だけのモンや」


繋がったままの苦しい体制で、忍足が背をかがめ口付けをくれた。それだけで機嫌を直すものシャクだけど。


「忍足ももう私のものだからね」

「そんなん、当たり前や。なぁ、俺の事名前で呼んで」

「………ゆ、侑士」

「ああ…あかん。うれしゅうてたまらん」


その言葉とともに、ズンとおおきくグラインドされてしまい。


「やっ、侑士」

「もっとや、俺の名前を呼んでくれや」

「あっ…ああっ……ゆうし……」


名前を呼べば呼ぶほどに、激しくなる律動に何度目かの絶頂に導かれそうになる。
そこからは、記憶が曖昧になるほどに何度も何度も抱かれた。
忍足が言う、本気を身をもって味わったのだった。








 




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