守ってあげたい 25話
明けて月曜の登校は非常に足取りが重かった。
体の方は土曜の朝に朝帰りしてから、たっぷり睡眠を取っていたのでそこそこは回復しているのだけれども某所の痛みはまだひかなくて歩き方が少々おかしい。
普段つかわない筋肉を使ったのか股関節あたりもちょっと、痛くて昔自分がロストバージンした時ってこうだったっけ?とある意味懐かしく思ってしまったくらいだ。
時間はもう元にはもどらないから、犯してしまった行いが無くなるわけじゃない。
謝り倒すにも、相手が若い自分ではどうすることも出来ないのでただ自己嫌悪にうちひしがれるだけだった。
それに、今は佳境なのだ。
忍足との一件の途中なので、今がある意味正念場だからと気持ちを切り替える事にした。
重い足取りで、教室の中に入るとが朝の挨拶をしに近寄ってきた。
「おはよう、」
「おはよう」
挨拶をしたあとに、じーっとに顔を見詰められる。
「何かあったでしょ?」
唐突にそう問いかけられて、内心ギクリとするけどなんとかポーカーフェイスで。
「別に、何も無いけど……。」
「……。そう?が登校してくるの窓から見てたのだけど、歩き方可笑しいから変だなぁと思って見てて。会ってみると先週とは何だか、雰囲気変わってるから……。」
鋭すぎるの指摘に、内心ダラダラと冷や汗が出る思いだった。自分の仕出かした馬鹿な行いを、馬鹿すぎて誰にも言えないと思っているから。
シラを切るしかなかった。
「気のせいでしょ?」
「そっかぁ……。私の考えすぎよね」
とりあえず、誤魔化されてくれたようでホっとした。
「あっ、でも首元のソレってキスマークじゃないの?」
そう言われて、反射的に千石に残されたキスマークを押さえてしまって……。
やられた、と観念した。
喉元に結構キツク吸われてしまっていたので、赤い痕が残ってしまったのだけど、絆創膏を貼るのも目立つしということで、目元の隈などを隠すのに使うコンシーラーとファンデーションの厚塗りでメイクで補正済みなのでそれが見えるわけもないのだけど。
鎌をかけられたようで、おもいっきりそれに反応してしまったのでキスマークがつくようなことをしてしまったということを肯定してしまったのと同じだった。
「……。あはははは…。って笑って誤魔化しても駄目よねぇ」
「というか、バージンだって言ってたわよね。それで、歩き方がおかしくてキスマークが付くような事したってことは…」
うわっ……。声が大きい大きいって、そう思って回りをキョロキョロ見回してしまったけど、皆雑談に夢中でこっちを見ていなかったようでちょっと安心した。
「うっ…あーっ。ここじゃ何だし、お昼休みにでも話させて下さい。」
何とかそう言って、その場を収めたけどお昼休みが憂鬱だった。
最近はずっと忍足とお昼休みに一緒に昼食をとっていたのだけれど、忍足にお断わりのメールをしてと一緒に昼食を取ってその後、人の居ない場所というと私は例の裏庭しか思いつかないので其処へを連れて行って話をすることにした。
「へぇ…。こんな場所あったんだ。サボるのにはもってこいかもね」
「迷って偶然見つけたんだけどね」
二人で芝生に腰掛けて、それから待ってましたとばかりにが口を開いた。
「で、相手は誰なの?」
「ノ、ノーコメントは駄目?」
「駄目に決まってるでしょ。まさか、忍足君じゃないでしょうね…。」
「あっ、それは違うけど……。」
「そう、じゃあ跡部君なの?」
「それも違う……。」
「じゃあ、一体誰なの?」
「お、怒らないで聞いてね」
にも内緒で、夜遊びしていたので掻い摘んで話をしてみると。
「ばっ、馬鹿!!大馬鹿よ。初めて会った男と、目が覚めたらラブホだったってどういうことなのよ。
い、慰謝料貰いましょ。の大切なバージン奪った男に」
「あー。それ多分無理」
だって、相手は千石だしねぇ……。というか、私は25歳のOLの触れ込みだったから、きっと死ぬほど驚いたはずだ。
其処へ持ってきて、慰謝料払えなんて言ったら倒れるんじゃないかな?
「年誤魔化してたし、下手したら私が誘った可能性もあるから」
「そっ、そうなの?」
まぁ、普通の処女の子なら自分から酔っ払って誘うなんて間違いはしないと思うけど。
酔っ払ってたし、その辺記憶飛んでるから何とも言えないんだけどね。
「相手は、変な男じゃないでしょうねぇ」
「その点は大丈夫なんだけど・・・。」
歯切れの悪い私の返事に、がため息を一つ吐いて。
「話しづらいのなら名前まで聞かないけど。もうお願いだから、記憶なくす位飲んで目が覚めたらラブホなんて止めて頂戴よ」
「それは流石に反省してますので、絶対しません」
心の中で、沢山飲むのは止めようと思った。飲みに行くの自体は止めろと言われても、多分無理だと思うので適量を心がけようと思っていた。
「本当に何も覚えて無いの?」
「あっ…んー。断片的には、覚えているかな?」
よく分からないけど、初めての割りに感じていたような気がする。
「まさか、中だしされてて後から妊娠したって何てことは無いでしょうね?」
「あー。それは大丈夫だと思う」
ベットサイドに封の開いた、スキンの包みがあったから大丈夫だと思うし今が生理の1週間前くらいだから万が一があっても大丈夫だと思う。
えへへと、笑って誤魔化すとは困ったような笑みを浮かべていた。
「って、大人っぽい考え方するけど。何処か危なっかしくて、見てられないわ。もう、お願いだから無茶しないでね。
忍足君とのことも、もういいから」
「……ゴメン。でも、忍足とのことはもうちょっとだと思うから頑張ってみる」
「ヤケになって、変な事しちゃ駄目よ?」
「うん」
とまぁ、にはまた心配かけてしまっておまけに、お小言も貰ってしまった。
今日はコート整備の為に部活が無いらしい忍足から、一緒にラブラブデートをしようというお誘いのメールが入っていたからそのつもりだったけど。
帰ろうとして、鞄を持ったところを跡部に呼び止められた。
「。今日、俺様の家に来い」
「はい?」
「コイツらから面白そうな話聞いたんでな」
コイツらという所で指された人達は、跡部様ファンクラブの皆様方だけど…。
「何の話?これから、侑士とデートだし。用があるならここで言って」
「朝、佐倉と面白そうな話してたらしいな」
うわっー。朝のアレ聞いて無いフリして聞いたいた訳ですか?
大方私の悪口を、言うつもりで跡部に告げ口でもしたんだろうけど……。
「きょ、拒否権は?」
「ねぇな」
跡部にズルズルと引きずられて行く姿を、がゴメンと両手を合わせて見送っていた。
2005.12.04UP