おもちゃ箱
こども部屋のおもちゃ箱には、キリンさんの絵が描いてある。
って、そのキリンが僕なんだけど。
僕は名前をきいろちゃん、っていう。
僕の前の持ち主であるところの大地君が、こっそりそう呼んでくれたから。
でもって、たぶん僕のいまのご主人さまであるところの風太君と雷太君は、まだ僕のことなんて目に入らないくらいに元気。
ま、そういうお年頃だよね?
「ほら、機関車もう使わないならお片付けしなさい」
「あとで〜」
「この本読んで〜」
「絵本は読んであげるけど、先にふたりともお片付けしてからね。ほら、機関車くんもおもちゃ箱に帰りたいって」
「やだ、ご本が先!」
「読んでよぉ!」
「だぁめ、自分で遊んだものは自分でおもちゃ箱に片付けるって、お約束したでしょ?」
「そんなの知らないもん!」
「お片付けきらいだもん!」
お父さんと雷太君と風太君。きのうも、僕の目の前で似たようなやり取りがあったんだけど。
僕は何も言えないからドキドキして3人を見つめてる。大丈夫かなあ?
僕はふたりとももっと仲良くなりたいけど、でも、お片付けめんどくさいって気持ちもわかるんだよね。
大地君だって時々おんなじことあったもん。
次から次にいっぱいおもしろいことは尽きないもんね。たぶんふたりでいたらなおさら。
「雷太、風太。いいかげんにしないと、お尻ぺんぺんするよ?」
「・・・やだぁ、とうさんのばかぁ」
「そんなのこわくないもん!」
「お片付けは?」
風太君はぷいっとよそを向いて、雷太君はあっかんべーをする。
お父さんはため息をついて、「ふたりとも、お尻に教えてあげなきゃいけないみたいだね」っていった。
雷太君は「やだ!」ってお父さんをにらんで、風太君はびくって小さくなって、でもそんなのにかまわずお父さんは二人を一度に抱え上げちゃった。
わ、わああ。見てられないんだけど、でも、僕って目を閉じることもできないんだよね。
お片付けって、ほんとは楽しんでやってくれたらいちばんいいんだけど。楽しい、よ?
って、いまそれを言っても仕方がないかなぁ。前に一回言われてるってことには、お父さん、甘くないもん。
「「やだやだ、ペンやだ!」」
ふたりが声をそろえて暴れるのに、お父さんは知らん顔。
「とうさんの言うこと聞けなかったんだから、しょうがないね。ちゃんとお片付けするって、きのうもお約束したよねぇ?」
「「やだぁ!」」
お父さんは床に座って、ふたりをお膝の上に。
ふたりの顔が、ちょうど僕のほう向いてる。
風太君も雷太君も逃げようとしてるけど、どうしてかお父さんのお膝からは逃げられないんだよね。
お片付けはしてほしいんだけど、でも、ちょっとかわいそう。
なんて思ってる間に、ふたりのズボンもパンツも下げられちゃった。
「「やだっ!やだやだ!」」
「ほかに言うことないのかな?遊んだあとはお片付け」
「「やあぁ!」」
パシィィン!パシィィン!
ふたりのやわらかなお尻にひとつづつ。うう、痛そう・・・。
「痛ぁい!」「いやぁ!」
「うん、お片付けできないとこんなふうにお尻が痛くなっちゃうよ?」
パシン!パシン!
「「うわぁぁん!!」」
パシン!パシン!
それぞれ3つ叩いて手を止めたお父さんのお膝で、ふたりはわぁーんって泣いてる。
「ほら、もう痛いの嫌だろ?ふたりとも、ちゃんとお片付けできるよな?」
お父さんは両腕に雷太君と風太君をそれぞれ抱え上げて。
まず風太君の目を覗き込んで優しい声で聞いてた。
「ふーた、お片付けできる?」
「・・・・うん」
風太君はちょっと恥ずかしそうに頷く。お父さんはぎゅーっと風太君を抱き締めた。
「風太、いい子だな〜」
「オレも!」
雷太君が叫ぶ。お父さんはにっこり笑って雷太君に聞いた。
「雷太も、お片付けできるんだな?」
「うん!」
ぎゅーっってぎゅーっってふたりともを抱き締めて、お父さんはしばらくそのままでいた。
「ふたりとも、いい子だ」
それからすこしたってから、みんなでお片付けをはじめた。
「ほら、機関車がキリンさんのとこまで行くよ〜」
「うん!」
お父さんと遊びながら、お部屋に散らばったいろんなものが僕のところに帰ってくる。
よいしょ、って積み木をいくつか運んできた風太君が腕からこぼれたひとつを拾おうとしてかがんだとき、ふと僕と視線が合った。
えへへ。
僕が笑ったの、気づいてくれたかどうかはわかんないけど。
風太君も同じ風に笑って僕を見てくれたから、明日はもっとお片付けが楽しくなるといいなってこっそり願った僕ののぞみは、かなえられたのかもしれなかった。
とにかくちびっこが書きたかったんです(笑)。お兄ちゃんも含めて、また。
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