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このサイトでは、お尻叩きのお仕置きが出てくるお話を置いています。
現実のお仕置きを推奨する意図はありませんが、ご理解のうえお進みください。
サンタクロースの 住 処
「サンタクロースなんて、いないんだぞ!」
・・・言っちゃった。やばい、かな。
そりゃもちろん、サンタクロースなんて、いない。
いない、けど。
サンタクロースの話ばっかりして俺に付きまとう妹に、うんざりっていうかイライラしてたんだけど。
だってよ、「お兄ちゃん、サンタさんのプレゼント、何かなあ」なんて質問に、なんて答えろって?適当にあしらってたら「お兄ちゃんの意地悪!いいもん、お兄ちゃんのところになんか、サンタさん来ないもん」とか言い始めて。や、構わねぇけどさ、サンタクロースなんか来なくても。つーかだって、サンタなんていねぇし。欲しいものはもう、親に頼んである。
いや、だから、最後まで適当にあしらっとけばよかったんだろうけどさ。
ついちょっと、イジめてみたくなったんだよ。あんまりしつこいから。
・・・・・。
泣く、かな?
由佳は泣かなかった。
目を丸くして、俺を見上げた。
「サンタさん、いないの?」
あーもう、マジに聞くなよ。どうしろって言うんだよ、俺に。
後悔もしてたんだけど、でもイラついてもいたし、大体「いないの?」って聞かれたら答えはひとつしかないだろ?
いじめてやろうって思ったさっきの気分とは全然違ったけど、答えは一緒だ。俺は仕方なく頷いた。
「どうしていないの?だって、去年、由佳にべあさんくれたよ?」
・・・・・。やばいって。
ベアさん、っていうのは由佳が大事にしているくまのぬいぐるみだ。そういえば去年のクリスマスプレゼントだったっけか。
「あれは父さんと母さんがくれたんだよ。サンタクロースがみんなにプレゼント買えるわけないだろ。馬鹿だな」
口が、滑る。どうしていいかわかんないから、だから余計に。
「保育園だってさ、サンタなんていないって言ってる奴もいるだろ?みんなとっくに知ってるんだって」
だよ、なぁ?年長組にもなって、いまさら信じてるなよ。・・・俺が、困るじゃん。
「・・・サンタさん、いないの?」
心当たりは少しあったらしくて、ついに由佳は下を向いた。ちょっとほっとして、ちょっとやばいって思う。泣く、かな?
「どうした、由佳?」
・・・助かった。由佳が泣き出す前に、俺たちの声を聞きつけたのか父さんが部屋に入ってきたんだ。
「パパ、サンタさんって、いないの?」
由佳は不安そうな声で父さんに尋ねる。父さんは由佳に笑いかけて言った。
「サンタさんがいないって、どうして思うんだ?サンタさんはいるよ」
その返事も、どうなんだよ、父さん?
だって、サンタクロースなんて、いないのに。
「由佳、どうした?」
すぐに元気にならない由佳に、父さんはさらに声をかける。
「だって、お兄ちゃんが。サンタさんなんていないって」
あ、やばい?でも、サンタクロースなんていないんだから。俺は嘘は言ってない。
「芳貴が?」
父さんはちょっとこっちを見て、俺はどぎまぎしつつでもきっと父さんを見返す。父さんのほうが、嘘つきだよ。俺は悪くないし。
父さんは由佳に、こう言った。
「お兄ちゃんはちょっと忘れてるだけだよ。サンタクロースはいるよ、由佳」
忘れてるって、何だよ、それ。
「べあさんも、パパとママがくれたんだって・・・」
「そうだね、それはほんとだよ。でも、サンタさんはいるよ」
は?父さんの言ってること、訳わかんないって。
ところが不思議なことに、由佳はこの説明を受け入れたらしい。笑いかける父さんにつられて、笑った。
由佳をきゅっと抱いてやって、降ろして頭を撫でてやってから、母さんのいる台所に送り出して。そうして父さんは俺に向き合った。
「芳貴、いったいどうしたんだ?」
質問の意味が、わからない。
「何のこと?父さんこそ、何言ってるんだよ、サンタクロースなんていないのにさ」
俺はちょっと、ふてくされていた。
「サンタクロースはいるよ、芳貴。お前の中にも」
「はぁ?だから、何言ってんだよ。父さんがそんなだから、由佳があの歳になっても信じちゃうんだろ?おかしいじゃん、サンタクロースを本気で信じてるなんてさ」
うわ〜。やっぱ口が滑ってる、とは思う。でも、嘘じゃない、俺は悪くない、とも思う。小学5年生の息子に、サンタクロースはいるってマジで言い切る父親って変だろ、絶対。
父さんは少し困った顔をした。けどまあ、頷いた。んでそれから、俺の目を覗き込んだ。
「まあ、サンタクロースを信じないのは構わない、お前の自由だ。
けど、芳貴。何か言うことあるんじゃないか?」
う、いや、別に。何も無いよ。だって俺、悪くないもん。
「別に、何も?」
自分の声がふてくされてるように響いてる、ってことは薄々分かってたけど、気づかない振りしてた。
「思い出せないかい?思い出させてやらなきゃ、いけないかな」
・・・・・。
由佳がサンタクロースを信じてるってことは、分かってたんだろ?
父さんの声が、遠い。俺は聞かない振りをしてる。
「口が利けなくなったかい?」
言うこと、ないだけだよ。答えない、父さんと目も合わせない俺を、父さんは膝の上に引き倒してしまった。
あっという間にズボンを下げられる。嫌だ。部屋には暖房が効いているはずなのに、急に、寒い。
「嫌だ!」
ぱしぃん!
俺の抗議にはお構いなしに、父さんは手を振り下ろした。
ぱしん!
「痛いって!」
ぱしぃん!
「痛いって気持ちは、忘れてないんだな」
ぱしん!!
「叩かれたら痛いに決まってるだろ!何言ってるんだよ!」
ぱしぃん!
父さんは手を止めない。
ぱしん!
「痛いってば!やめろよ!」
ぱしん!!
喚いたからって止めてくれないことなんて、わかっちゃいたけどさ。
ぱしん!
「痛いのは、ここだけか?」
ぱしぃん!
何言ってるのか、わかんねぇ。わかんねぇ、振り。
「由佳も痛かったって、思わないか?」
ぱしん!
・・・・・。
「芳貴だって、痛かったろ?」
・・・・・。
ぱしん!
痛くしてんのは、父さんじゃないか。そう言い返してやりたいけど。
ぱしん!
「言うこと、思い出さないか?」
ぱしん!!
・・・・・。
ぱしぃん!
「・・・・痛いよ・・・」
じわじわと、涙が溢れてくる。由佳を泣かせずに済んだのはほっとしたけど、俺が泣いてるんじゃ世話はない。
ぱしぃん!
痛い。尻が痛いのはもちろんのこと。
痛いのは、それだけじゃない。
「どうして、由佳にあんな話したんだ?」
「嘘は言ってないよ。間違ったことなんか、言ってない」
ぱしん!
「わかってる。言うの、苦しかっただろ」
ぱしん!
「・・・・・。」
「な、どうした?自分の気持ち、ちゃんと認めてやれよ」
・・・。
ぱしぃん!
痛いっ!
ぱしん!
「・・・痛い・・・」
「そうだな。痛いだろ」
ぱしぃん!
「・・・・・。」
ぱしんっ!
「どうして、あんな話したんだ?痛いだろ?」
ぱしぃん!
「・・・。痛い・・・」
ぱしぃん!
「・・・・・。」
ぱしん!
痛い。さっきからずっと、胸が痛い。
ぱしん!
「何か、言うことないか?」
ぱちん!
「・・・・・。・・・・・言わなきゃ、よかった・・・・」
ぱしぃん!
父さんは手を止めた。
言わなきゃ、よかった。由佳を傷つけようとした一言が、全部の始まりだったから。
「・・・ごめ・・・ん」
間違ったことなんて言ってなくても。サンタクロースなんてほんとにいなくても。
でも、俺が間違ってなかったってことじゃなくって。
だって、由佳を傷つけるのは、痛い。
ぱしん!
最後にひとつ、大きくはたかれて、お仕置きは終わった。
「ちゃんと思い出したな。いい子だ。傷ついてるのは、お前だよ、芳貴」
父さんはぎゅっと俺を抱きしめた。さっきの由佳と同じように。
傷ついてるのは俺、なのかな。それでも、俺が悪いんだけど。
父さんはぎゅっと、その俺の傷を埋めていくんだ。
「信じなくていい。由佳にも、言わなくていい。でも、そこにサンタクロースがいるんだ。お前の胸の中の、そこに」
この、いま痛くて、すこし甘くて、自分でもどうしようもないここに。
父さんの言うことはやっぱり訳がわからないって思うけど。
ホントだとも思わないけど。
でも、嘘じゃないかもしれない。
胸の隙間にそんな部屋があるのは悪くないかもしれないって、ちょっとだけ思った。
2006.12.3 up
シリーズにするつもりじゃなかったんですけど、前作と登場人物が共通です(^^ゞ。
構成からは小さな兄妹弟でもいけそうですが、あちらのお兄ちゃんはこうは妹をいじめたりしないと思うので、こちらに。祐樹君と雪菜ちゃんでは、祐樹君のほうが夢見がちです、きっと。・・・しかし、似たような構成の話しか書いてないってことです、ね。(-_-;) クリスマス衝動書き。Merry Christmas!