◆ 検索でおいでになった方へ ◆
このサイトでは、お尻叩きのお仕置きが出てくるお話を置いています。
現実のお仕置きを推奨する意図はありませんが、ご理解のうえお楽しみください。

お雛飾りは誰のもの?

きょうはうれしいひなまつり、桃の節句。
パパはふたりの愛娘のために先週からママ自慢の古いけど立派な五段飾りを出してきて。
ママは紅いでんぶ、黄色い錦糸卵に緑の絹さや、色鮮やかなちらし寿しを仕込んでいるところでした。もちろんパパには白酒を用意して。お嬢さんたちには甘酒を。
子どもたちはお雛様のお部屋で楽しく遊んでいる・・・はずだったのですが、パパの耳には急にふたりの大きな声が聞こえてきました。

「おひなさま、もえぎのだもん!」
「ほのかのだよ、もえぎが生まれる前からあったんだから!」
「ちがうもん、おねえちゃんのうそつき!」
「もともとほのかのだもん、もえぎなんかにあげないから!」

「あ、痛い、やめてよ!」
「おねえちゃんのケチ!」
萌黄が穂乃香の髪の毛を引っ張って、怒った穂乃香も萌黄をドンと突き飛ばして。
パパが様子を見に来たときにはもう大ゲンカで二人とも泣きながら怒っていたのでした。

「こら!ケンカはやめなさい!」
パパの大声にふたりともびくっとして固まり、戦線の拡大は避けられたものの。
「いったい、どうしたんだ?」
「だって、もえぎが」
「だって、おねえちゃんが」
パパの問いかけには二人とも口々に相手がしたことを並べ立て、お互いにまだかなり腹を立てていることは明らかでした。

「・・・・・結局、お雛様が誰のものかってことでケンカしてたんだな?」
「だってもえぎが先にあたしの髪の毛をひっぱったんだもん」
「だっておねえちゃんが意地悪いうんだもん」
「・・・やめなさい」

すぐに再開されそうになる口げんかを押し止めながらどうにか事情を聞きだしたパパは、ちょっと厳しい声で言いました。
「どんな理由でもケンカはだめ。ふたりとも、謝りなさい」
「「だって、あたしわるくないもん!」」
はあぁ。パパは溜め息をつきます。

「悪くなくないだろ?
萌黄は、お姉ちゃんの髪の毛を引っ張ったこと。穂乃香は、萌黄を突き飛ばしたこと。
ふたりとも、お雛様をひとり占めしようとして相手に意地悪言ったこと。
ちゃんとごめんなさいしなきゃ」
「「だって、おひなさま、あたしのだもん!」」
これは、仲がいいって言うべきだろうか。ケンカしながら口を揃える二人にパパは首を傾げました。だいたい、お雛様が誰のものかにどうしてここまでこだわるんだろう、と思いながら。それでも、悪いことは悪いと教えてあげなくてはいけません。

「お雛様はふたりのだよ。ケンカはやめて、仲直りしなさい」
「「そんなのやだもん!」」
「やだじゃないの。ふたりが仲良くしてないと、おひなさまも悲しいよ?」
「「・・・。でも、あたしのだもん!」」

「もうやめなさい。ふたりとも、譲り合うことを覚えなきゃ。とくに穂乃香は、お姉ちゃんなんだから」

「あら、あなた、それは―――あ、穂乃香!」

「お姉ちゃんじゃなくていいもん!」
ぺちん!いつの間にか後ろに来ていたママが口を挟む前に、パパの言葉におへそを曲げた穂乃香は萌黄を叩いてしまいました。
「うわ〜ん!おねえちゃんがぶったぁ〜」

萌黄はここぞとばかりに泣き出して、穂乃香を叱ろうとしたパパをママは止めました。
「あなた、穂乃香には私が話すから。あなたは萌黄を。
 ―――お雛様に「お姉ちゃん」を持ち出すのは賛成しないわ」
お雛様は特別なの。ママの呟きはパパにはさっぱりわかりませんでしたが、萌黄を放っておいていいわけもないのはもちろんのことだったので、役割分担には了承しました。
ママはもう穂乃香の前に座ってお話ししています。

「穂乃香、お姉ちゃんでもそうじゃなくても、人を叩いたらいけないの。分かるわね?」
「・・・・。」
穂乃香にだってそれはよおく分かっていましたが、でもさっきからのケンカのせいで、そう素直にはなれません。
「萌黄にごめんなさいできるかしら?」
穂乃香はふるふると首を振りました。「・・・・いや・・・。」
さっきまでの大きな声とは違って、か細い声。
謝らなきゃいけないことはわかっているんだけど。いま謝るとおひなさまが萌黄のだと認めたみたいで、それは嫌。

「嫌かもしれないけど、悪いことをしたら謝らなくちゃ。
さっきのケンカの分も、一緒に謝ってしまいなさいな」
「やだぁ・・・だっておひなさま、ほのかのだもん」
「お雛様は穂乃香のものだし、萌黄のものでもあるわ。
パパもおっしゃっていたけど、ふたりのよ」
ママはきっぱりと断言します。でも、その後でひとこと付け加えました。
「謝ったからって、萌黄のものになるって訳じゃないのよ?」

付け加えられた言葉には穂乃香を安心させようとした笑みがすこしだけ混じっていて、ちょっと心が動きはしたのだけれど。
けれどさっき髪を引っ張られたこととか、あたしのだもん!って萌黄が言い張っていた口調とか、穂乃香の胸にはいがいがのようにいろんなことが突き刺さっていて、やっぱりママの言うとおりに謝ることなんて、できませんでした。
「やだもん・・・」

ママは少しのあいだ穂乃香のほかの言葉を待っていましたが、穂乃香が下を向いて動かないのをみると悲しそうにけれどやっぱりきっぱりと言いました。
「ごめんなさいができない子には、お尻に言い聞かせてあげないといけないわね」
「やだぁ!・・・・・もえぎの前じゃ、やだぁ」
穂乃香はそう叫びます。
「そうね。じゃあ、隣のお部屋に行こうか」
ママの口調は、きっぱりとしているのに優しい、不思議な感じでした。

ママが穂乃香を連れてきたのは、パパとママの寝室。隣のお部屋よりもだいぶ離れてて穂乃香の声は萌黄に聞こえない―――かもしれない。
それでももちろんお仕置きは嫌で、もうぐすんぐすん泣いている穂乃香をママはお膝に乗せてしまいました。お気に入りのスカートもめくり上げられてしまって、ぱしん!

「うわ〜ん!」
わかってはいたけど痛くて、やっぱりお家じゅうに聞こえてしまうんじゃないかってくらい大きな声で泣いてしまって。もっとも、もう穂乃香にはそんなこと気にする余裕はありませんでしたけれどね。
ぱしぃん!

「叩かれたら痛いでしょう?穂乃香も髪を引っ張られて痛かったわよね」
ぱちん!
「萌黄も叩かれて痛かったの、わかるかしら?」
「でも、もえぎがぁ」
ぱちんっ!

「萌黄が悪くないなんて誰も言ってないわよ?でも、穂乃香も悪かったでしょ」
「そうだけど、でも」
ぱしん!
「・・・いい子ね。自分も悪かったってわかってる穂乃香はいい子よ?
だからもうちょっとだけ、頑張ってみて」
「・・・・・。」
ぱちん!
「悪いことをしたら、謝らなくちゃ」
それはね、お姉ちゃんでも妹でも、相手が間違ってても間違ってなくても、誰でもどんなときでも大事なことなのよ。

ママのお話に、穂乃香は納得できません。
「もえぎの方がわるいんだもん!」
ぱちん!
「どっちが余計に悪かったかは、問題じゃないの」
「どうして?!だって、もえぎが」
ぱしぃん!
「ふたりともそう思っているから、ケンカになったのよ。わかる?」
「・・・・。」
ぱしん!

わかる気もするけど。でもあたしの方が悪いんじゃないのに。
あたしが悪いんじゃないのに。
ぱしぃん!
「もう一度考えてみて。穂乃香は自分が謝る理由がひとつもないと思う?」
「・・・・そんなこと・・ないけど。でも、もえぎがおひなさまをもえぎのだって言うから!」
ぱちん!
「いい子ね、穂乃香。・・・お雛様は誰が何と言おうとふたりのよ。萌黄が何と言っても、穂乃香が何と言ってもね」

「・・・・・うん」
穂乃香の呟きに、ママは少し手を止めました。穂乃香の髪の毛を、優しく撫でてくれて。
「偉いわ。ひとつ先に進んだの、わかる?お雛様は萌黄のだって言う萌黄も間違ってたけど、お雛様を萌黄にはあげないって言う穂乃香も間違ってる」

「・・・・・。」
そんなことないもん、って言えたら楽なのに。こんなふうに言われたら、そうは言えない。
確かにまちがってたの、分かっちゃったから。もえぎだってまちがってるけど、でも。
お尻が急にじんじん痛くなってきた気がする。いまママの手は止まってるのに。さっきまでだってもう十分痛かったはずなのに。

「ごめんなさい、できそう?」
「・・・・・。」
嫌だったけど。いがいがする気持ちもいっぱい残ってたけど。
謝らないって頑張るのも苦しい気持ちになってしまって。

穂乃香はこくりと頷きました。
ママは穂乃香を抱え上げて、ぎゅうっと抱きしめてくれました。
「いい子ね。」

しばらくママの腕の中で揺られてから。
穂乃香が落ち着いた様子を見て、ママは穂乃香を床に降ろしました。
穂乃香はきゅっと手を固く握って、それから、ちょっと恥ずかしそうに片手をママに差し出しました。
ママは微笑んでその手をとります。少し安心して、穂乃香は自分で歩き出しました。

お雛様のお部屋では、萌黄がパパのお膝の上で泣いているところでした。
「お姉ちゃんの髪の毛引っ張るのは、悪いことだろ?」
「あたしわるくないもん!」
ぺちん!

もえぎを見たらやっぱりいがいがしちゃうかなと思っていた穂乃香でしたけど、むしろ逆で。
泣いている萌黄に「さっきまでのあたしみたいだ」と思ったのです。
パパが穂乃香たちに気がついて、手を止めました。
「お、穂乃香、おかえり」

パパの変てこなあいさつにちょっと笑っちゃった穂乃香は、息を大きく吸って吐いて。
そして頑張って言いました。
「もえぎ、あのね。たたいてごめん・・。・・おひなさまは、一緒にあそぼう?」

ふぇぇん。萌黄は泣いて、パパは萌黄を抱き起こして穂乃香の方を向かせました。
「萌黄、ほら、お返事は?」
後ろから耳元で囁くパパの声に、萌黄はまた余計に泣いて。
「おねぇちゃん・・・」
何か言おうとしてたから、穂乃香はハンカチを貸してあげて。そしてみんなが待っていました。

「ふぇ〜ん・・・も、もえぎも。うぇ・・ごめん・・なさぁい」
パパがぎゅうっと萌黄を抱いたのがわかりました。
萌黄はパパの腕の中でたくさん泣いて、安心したのか泣き疲れて眠っちゃうまで泣いていました。

ママはお寿司の仕度の続きに戻っていって。
パパは眠っちゃった萌黄を腕の中で揺らしながら、片手を伸ばして穂乃香の頭を撫でて言いました。
「自分からごめんなさいできて、さすがお姉ちゃんだよな」

ママが聞いていたら、まあ、と咎める声をパパに掛けたかもしれませんけれど。
けど、こんどのは嫌じゃなくて。
穂乃香はえへ、と照れたような笑い顔をパパと萌黄に向けたのでした。


2007.03.04 up
純然たる?短編です(^^ゞ。由佳ちゃんたちはひとやすみ。
自分だけのお雛様、欲しくないですか?穂乃香ちゃんと萌黄ちゃんには買ってあげ損ねましたが^_^;

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