「22時、どうして6限さぼったんだ?」
「だって、5限の体育、ほとんど大掃除になっちゃったじゃない」
「まぁ、そーだけど。で?」
「で、って?だからよ。だから帰ったの」
「悪りぃ、22時、ぜんぜんわかんねぇ。お前、掃除もまじめにやってたじゃん」
「そりゃやるわよ、あんな更衣室やステージ使うの、私だって願い下げだもの」
「はぁ、そんで?掃除して疲れたってこと?」
「え?あぁ、思いもよらない解釈をしてくれるのね。
でも違うわ、かなり汚れちゃったでしょ?それでよ」
「それで?もうちょい説明してくんねぇ?」
「うそ、どこ説明すればいいの?汚れちゃったから、気持ち悪いでしょ?
だから、早くシャワー浴びたくて。それで帰らせていただきました」
「はー、なるほど。全然思いつかねぇわ。女ってすげぇな」
「何言ってんの?まあいいわ、お話はお仕舞いかしら」
「いやいや、ちょい待て。話はわかったがそれ認めるわけにはいかねぇんだけど」
「え、どうして?だって、仕方がないじゃない」
「あのなぁ…。汚れたのだって、お前だけじゃねぇだろ?」
「でも私、ほとんどの人よりは掃除頑張ったと思うよ?」
「うーん、確かに。それは認めるけど」
「……太陽、なに説得されかかってんの」
「うわ、月君」
「うわ、とは御挨拶だね、22時?まあ、都合が悪い話だって自覚してるってことでいいかな」
「う〜。……でも、私はほんとにそう思うのよ。月君が頷いてくれないことはわかってるけど」
「そうだね、じゃあ悪いって思えるようになるまで泣いとく?」
「月、ちょい待てよ!22時、言っとくけど俺だって頷けねぇよ。
まぁでも、お前の話には付き合うよ。言いたいこと全部言ってみ?」
「はいはい、じゃあ僕は退散する。22時、がんばってね」
「……余計なお世話だわ」
よかったんだか、悪かったんだか。黙って月君に叱られた方が、早かったんだろうけど。
いまひとつ乙女心に疎い太陽君に、私の話はわかったのかな。
思うこといろいろ話して、頷いてもらって、もう話すことがなくなって。
「気持ちはわかったけど、22時。それでもやっぱり、ダメだよ、それは」
「………うん」
ほんとにわかったのかどうか、わからないけど。わかろうとしてくれた、私にもそれはわかるから。
それでもなお、という言葉に、私は素直に頷いた。
|