「聞いてる?19時ったら。いまうちサトイモが余ってるんだけど」
「えーっと、聞いてはいるけど。サトイモだったら煮っ転がしとかけんちん汁とか?
っていうかやばいよ、授業中だよ?」
「なんかそういうんじゃない献立を求めてるんだよね、あたし」
「うーん、お団子にして焼くとか?そのまま焼いたら、どうなるのかな」
「08時さん、19時君?」
「「え?」」
古文の先生には、平謝りに謝ってその場はそれで済んだけど。
でもそれだけじゃ終わらないんだよな、なぜかこの学校。
案の定、放課後に風紀委員室に呼び出された。
「08時に19時?結構久しぶりだよね、一緒に呼ばれるの」
「ごっ、ごめんなさい!」
「……すみません」
小さくなってる08時が、可愛いななんて実は思ってる。
俺も叱られるんだから、そんな余裕ないはずなのに。
「何か言うことある?とりあえず聞くけど?」
「あ、えっと!あの、あたしが19時に話しかけたんで、それで」
あれ、08時、気にしてたのか。
俺もつい調理法を真剣に考えちゃったんで、08時のせいってわけじゃないんだが。
「へぇ。19時、08時はこう言ってるけど?」
っていうかそもそもこの風紀委員長サマは、それで見逃してくれるようなヤツじゃないしな。
「いや、別に。二人で話してて片方叱られないことになるなんて思ってないし」
「19時?」
08時が驚いたふうなのはちょっと痛いかも。
まあ、構ってくる割に好かれてるわけじゃないようだから仕方ないけど。
それでも自分のせいだって言う08時は、やっぱり可愛いんだけどな。
なんでかここにいる太陽が笑って、月はそれを睨んだ。
「邪魔するなら出て行ってね、太陽。二人は仲がいいのはいいけど、時間と場所をわきまえてね」
俺たちは仲がいいのかどうか。それは結構難問じゃないか?
そういう迂闊な断定は月らしくない。
08時だってきょとんとしてる。だからか生徒会長はやっぱり笑う。
「月、08時が違うところで引っかかってるぞ」
「太陽、うるさい」
結局、その点にはそれ以上触れられず、俺たちはそれぞれ月に叩かれた。
待ってる間はどっちも後ろを向かされたから、声をあげないように我慢する。
08時になんかとても聞かせられない。
解放されて部屋を出るとき、太陽は俺にだけ囁いた。
「見込みはあるみたいだから頑張れよ?」
「余計なお世話だよ、ほんとうるさい」
ペナルティは終わったんだから、そういう言葉を遠慮なく返すんだけど。
こんな奴らにつつかれたくはないので、しばらく叱られる羽目にはならないように気を付けよう。
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