「14時、おかえり」
「……、月くん。私を待ってくれてたの?」
「まあ、そうだね。見過ごせないでしょ」
「そぅ?数学の授業なら大丈夫よ、予習もしたし、復習もするわ」
「だからって、抜けていいわけじゃない。前にも忠告したはずだけど」
「今日はお昼休みにお茶の時間が取れなかったのよね。
最近は結構まじめに授業受けてるって、思ってくれない?」
「昨日までそう思っていたけれど?
君は折角積み上げた信用を崩したんだよ、残念だな」
「あら…信用してくれてたの?困ったわ」
「そう、信用してた。何か言うことは?」
「う〜ん、でもやっぱり、アフタヌーンティーはやめられないと思うわ」
「悲しいね。授業をさぼらないって、もう一度約束できない?」
「もう一度?………月くん、そういう言い方は嫌味だわ。
でもごめんなさい。でもやっぱり」
「やっぱりやめられない?だめだよ、授業をさぼって部室でお茶なんて認めない。
お昼休みのお茶までやめろとは言ってない。時間が取れなかったら放課後まで待ちなさい。
約束する気になったら返事して」
「あら、今度は約束する気になるまで叩くって言わないの?」
「言わないよ、約束する気になったら返事して。やったことへのペナルティはその後で」
「月くん、それはほんとに嫌味だわ…。約束しなかったら、どうするの?」
「ずっと待ってるよ、手も上げない。14時相手にそんなに長く待つ必要はないって、思ってる」
「……もぅ。どうせ約束させて、どうせ叩くっていうのに、なんて人。
わかりました、約束する。破るかもしれないけど、とりあえずやってみます。
これでいいかしら?」
「よかった。でも「とりあえず」はなんとかならない?」
「もぉ!…最善をつくします。約束、するわ。……ごめんなさい」
「うん、頑張って、見てるから。それじゃそこに手を付いて」
「……はい」
前よりたくさん、叩かれた。ほんとにいつも見てるわけよね、困ったわ。
お茶の時間がないと、落ち着かないのに。
だけど最善を尽くすって、言っちゃったのよね。
「14時は、自分の言葉を大事にするよね」そんな月くんの声が降る。
「月くんには関係ないわ」
言うだけ自分へのハードルを上げている。彼はそんな私を笑って眺めた。
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