「ええっと、12時と、一緒だったの」
「知ってる。12時は12時で、いまごろ太陽に叱られてると思うけど」
「太陽君に…?12時、だいじょうぶかな」
「11時は自分の心配してなさい。学校帰りに映画に行くのは、校則違反だって知ってたろ?」
「う…、12時と一緒だったし」
「11時、その言い方は、12時のせいにしたいみたいに聞こえるよ」
「えっ?そんなつもり、ないよぉ…」
「そうだろうけど。自分で決めようとしないなら、そういうことになるんだよ。
11時が映画に行ったのは、12時が悪いの?」
「そんなことない、そんなこと思ってないよ」
「結構。じゃあ、だれが悪いのかな」
「……月君、意地悪」
「ふぅん、ここでそれ言う?まあいいや、誰が悪い?」
「……ご、ごめんなさぃ……私…です」
「はい。それじゃ11時は何が悪かったか言えるかな」
「ええっと…?何がって?」
「どうすればよかったと思う?ってこと。また12時に誘われたらどうするの?」
「え、……。」
「答えは分かるね?できるかな。どうすべきだったか、言ってごらん」
「………。や、止めようって。……い、言う?」
「どうして疑問符がつくかな。まあ、そこまで言えただけでも11時としては頑張った方か。
次は言いたくなるように、ちょっと我慢しておいで」
「うぇ…」
いっぱい叩かれて、とっても痛かった。でも言えるかどうか、わからないけど。
「頑張れよ、12時だって痛い思いするんだよ?
11時が言えるなら、ちゃんと12時は聞いてくれるよ、そうでしょ?」
月君は怖いけど、だけど正しい。12時のせいにはしたくない。
それに、太陽君に12時が怒られるのもかわいそう。二人には笑っててほしいもの。
「…が、頑張るよ」
最後にそう言ったとき、月君はあたしの頭をぽんと撫でて笑った。
月君の怖くない顔って、初めて見たよ。
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