「君が遅刻だなんてめずらしいね、09時。何か事情ある?」
「あの、朝は家のことしなきゃいけなくて、間に合わなくて」
「うーん…。そうだね、それは毎朝大変だなって思ってるよ。だけど、ほんとにそれが理由?」
「え、えっと?月君、知ってたの?」
「知ってるよ?で、今日遅れた理由は何?いつもはちゃんと、間に合ってるのに」
「う……」
「09時のことだから、さっきのも嘘じゃないんだろうけど。
たぶん足りないよね、今朝の説明としては。
いつもちゃんと出来てることを言い訳に使うのはやめなさい、勿体ない」
「うう……。で、でも。えっと、あの。今朝はちょっと洗い物が多くて」
「ふぅん、いつもなら09時、そういうときは帰ってからに回してない?」
「ええっと、ちょっと所要時間見誤って」
「見誤って?君が? ……叱られ慣れてないせいかな、往生際が悪いね、09時」
「………。わ、わかるの?」
「さあ、何のこと?もう一度言うよ、09時。
いつも頑張ってちゃんとやってること、自分のいいところを言い訳に使うのはやめなさい。
せっかく頑張ってるのに、長所が長所に見えなくなるよ?」
「………。」
「で、遅くなった理由は何?」
「………。」
厳しい風紀委員長の追及に、何も言えなくなったんだけど。
確かに私は往生際が悪くって、ちょっと遅れちゃってもやっちゃおうって思ったことを
白状するまでに結構たくさん叱られた。
「いつも頑張ってるって認めてる、だから、こんなのは今日だけにしなさい」
厳しい口調の月君の、だけどどこかが優しくて。「ごめんなさい」ってようやく言えた。
|