"どうしたら恩を返せるのか、今の私には分からないけれど。"
言うだけならば容易いけどね。「ありがとう」
ありがとう、って言ったって、何かが取り戻せるわけじゃない。
ごめんなさい、ありがとう、だから言わなくていいって
思ってるわけじゃないけど。
言ってどうする、どうすればいい?
ごめんなさい、ありがとう、それは短い、ただの言葉だ。
どうしたらいいのかな、あるとき聞いたら、あなたは答えた。
確かに、言ってどうなるものでもないわね。
じゃあ、どうして言うんだろう?
重ねた言葉には、微笑みが返った。
では、言わずにいられるかしら?と。
それは無理。だけど、言えばいいってものでもないはず。
そうね。でも、言いなさい。
その答えに異論はないけど。けど、でも、返せない。
当然よ。だから、忘れないで。
そして、いつか誰かに返してほしいの。
怒ってたときとは全然違う、まろやかな笑顔。
「誰か」は、たぶん私じゃないわ。けれど、返せるといいわね。
そう口にしたときの表情は、嬉しそうにも寂しそうにも見えた。
不確かで、不思議なリレー。自分のいつか誰かはどこだろう。
あなたのごめんなさいとありがとうはどこだったのか。
あれぇ、そうなの?あなたにも、叱られたいつかがあったってこと?
聞いたらちょっとはにかんで頷く、はじめて見る顔。
そう、なんだ。
だったら自分もおそらくきっと。いつかどこかで返せるのかも。
笑うあなたにに勇気をもらって、ありがとうとごめんなさい。
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