「えっとぉ・・・はい、お土産」
目の前に出されたのはF屋のカステラ。
で?
軽く受け取って食卓に置く。
こいつはちょっとほっとしたような息をついたけど、
それってかなり、甘いと思うぞ。
「え、えっと。切ってくるね。紅茶でいい?」
どうぞ。
無言の俺にかかわらず、ばたばたと無言のままに午後のお茶。
午後、11時のな。
「い、いただきます?」
紅茶にだけは口を付けつつ、じいっと相手を眺めていると
眼を合わせたり逸らせたり、話しかけたり途切れたり、
ま、俺は一言もしゃべってないから。
いつまでもつかな?
俺の目の前のカステラは、大きく切って重くって。
きっと甘いんだろうけど。
どうせ食べてるお前だって、味なんてわかりゃしねぇだろ。
全部終わって落ち着いたなら、一緒に食べてやるからさ。
甘くて美味いとお前も思えるそのときならさ。
いつまで先に延ばすつもりか知らねぇけどさ、
このままで済むなんて甘いこと、まさか思っちゃいねぇよな?
無言の俺のその前に、もちろん無言の重いカステラ。
実は俺より雄弁に、こいつに語っているのかも。
全部済んだらその後で、お茶の時間を楽しもう。
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