君は一人で歩き出そうとしている、この広い世界を。
これまでずっと私は君と手を繋いできたけれど。
たくさん話したね、一緒に笑ったね、いろんなことを教えたよね。
はじめ抱き締めた君の身体は腕の中に収まってしまうほど小さかったね。
結構叱ったよね、君に泣かれて途方に暮れた日もあった。
たぶん君はそれは知らない。
手を離すことが不安なのは私、それも君は知らないだろう。
それでいい。
君の前の世界は広い。
そして君は一人で歩く。
手を繋いだままでは届かない世界がある。
一人で歩く。転んで、また一人で立ち上がる。
泣いてもいい。
けれどその場所は、もう私の膝の上ではありえない。
それが不安なのは私、淋しいのも私。けれどそれは、喜ばしい。
手を離す。君は世界を一人で歩く。
私はもう君の手を引いてあげることはできないけれど。
せめて祈る。
せめて祈るよ。
君は一人で歩いていく。
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