「あ・・・。」 こっそり開けた母様の宝石箱からは、何かが跳ねて零れた。 「・・・・・。」 どうしよう。 開けちゃだめ、ううん、むしろ触っちゃだめ、って言われてたのに。 あたしじゃ元に戻すことはできない。 それはすごくきらきらと綺麗だった。 だからこそ、あたしはどうしていいかわからない。 |
涙がひとつぶ水面に落ちた。 にじんだ桃色が優しく揺れた。 「どうしよう・・・。」 眼に映る桃花はあたしを咎めているんじゃないのに。 あたしは置いてきぼりになったみたいにさびしい。 どうしたらいいんだろう。 |
ううん、ほんとは知っているけど。 どうしなきゃいけないかって知っているけど。 ・・・・・。 ごめんなさいって母様に。 けど。 だけど。 だけどそれは、思うだけで胸がきゅうっと。 とても苦しくて、足が動かない、声が出ない。 |