廃プリとAXの昔話。


 多分、その方が楽だから。と瑠玖に言われて。
 俺はうつ伏せになってお尻だけ突き出すような体勢になった。
 何だか恥ずかしい格好だったけれども、これが楽なのだと言うなら従うしかない。
 瑠玖は誰かを抱いた事があるみたいだけど、俺は初めてだ。
 まぁ、普通の男でも男に抱かれるなんて事は無くて、誰でも初めてになるんだろうけども。
 瑠玖の手が俺の腰を掴んだのが分かった。
 熱い、手の平。
 開いた脚の内側に膝が当たる。
 瑠玖も下半身に纏っていた丈の短いズボンとパンツをやっと脱いでくれて、全裸。
 やっとちゃんとえっちするんだなぁと思うと、いつもと違う感じで胸がドキドキした。
「じゃあ、いくで。力出来るだけ抜いとけよ?」
「う、うん」
 瑠玖の分身の先端が宛がわれる。
 力を抜けと言われても、どうしたらいいのか分からなくて
 いつも指を入れられる時みたいに大きく息を吐いてみた。
 どうやらそれで合っていたみたいで、ぐっと瑠玖が腰を進めて来る。
 瑠玖の先走りの液体でぬるっとした感触の柔らかいような硬いモノが押し込まれる感覚。
 でも、その質量はいつもの指の比ではない。
 物凄い圧迫感。
 本当に挿るのか不安になった。
「ん、んん」
 枕に顔を伏せて、同時に両手で握り締めて耐える。
 まだ痛くは無いけど、この圧迫感に押し潰されてしまいそうだった。
 けれど、圧迫感を感じているのは俺だけじゃなかったようで。
「っ、キツいな・・・」
 苦しそうに瑠玖が漏らした。
 切なそうな掠れた声だった。
 キツいと痛いんだろうか。逆に気持ちいいんだろうか。
 そんな瑠玖の声は聞いた事がなくて、ぞくんとした。
 ゆっくりとゆっくりと。
 俺の中に挿って来る瑠玖の分身。
 内側がぴったりと瑠玖の分身に張り付いてる感じが分かる。
 ずり、ずり、と内側が擦れているのが分かる。
 熱い。とても。
「あっ」
 ぐっと瑠玖に腰を引っ張られた。
 お尻が瑠玖の腰にくっついたのが分かる。
 それは、根元まで瑠玖の分身が俺の中に挿ったと言う事。
 瑠玖はそのままで俺の胸辺りに腕を伸ばして来た。
 俺の背中と瑠玖の胸が重なる。
 勿論、繋がったまま。
「挿ったぁ」
 溜め息をつくみたいに瑠玖が言った。
 何だかそれがおかしくて笑ってしまう。
 でも、俺も安心していた。
 無事に繋がれた事に。
 瑠玖が俺の中に居る事。とても不思議だと思う。
 俺の身体は正真正銘男のモノであって、本来このように使うべき箇所じゃない所で瑠玖を受け入れている。
 身体が女のモノだったらもっと楽に受け入れられたのかもしれない。
 でも、苦労したからこそ今のこの安心感と、言葉にすると薄っぺらいけど幸福感。
 何かそんなのが胸をいっぱいにしている。
 瑠玖は俺を抱き締めたまま動かない。
 本当は挿れるだけじゃなくて動くモノだと思うんだけど。
 黙っていると内側で瑠玖の分身がどくんどくんと脈打っているのが伝わって来る。
 それに反応してか、俺の中も時々ぴくんと動く。
 その度に瑠玖の身体が微かに跳ねる。
「痛ないか?海月」
「うーん・・・痛いと言えば痛いけど。そこまでじゃないよ」
 瑠玖の指が3本も入ったのは伊達じゃない。
 まぁ、今挿って居るモノはその比では無かった訳で、皮膚が張り詰めていてじんじん痛いけれど。
 痛いとギャーギャー悲鳴を上げる程では無かった。
 正直、もっと痛いと思って居たからこれくらいなら我慢出来る。
「ほんまはな。めっちゃ動いてあんあん啼かしたいトコなんやけどな」
「・・・うん」
「予想以上にキツくて締まるので、流石の俺もすぐイきそうです」
 つぅか、挿れる時にイくか思た。言って瑠玖は苦笑する。
 それは流石に情けないので我慢したらしい。
 それで暫く動かなかったのか。
 理由が分かって納得したら笑いが込み上げた。
「笑うなやー。真剣やねんから」
「ごめんごめん」
 確かに、考えてみれば瑠玖だって男の身体を抱くのは初めての筈。
 色々と詳しかったけど、初めてであって欲しい。
 否、初めてじゃないと嫌だ。
 何人も女の子を抱いてたって言うのも嫌だけど・・・。
 ・・・確証も無い事に対して嫉妬してどうするんだろう、俺。
 まぁ、それは置いておいて・・・。
 瑠玖だって初めてなんだからこうなって多分当然なんだろうな。
「でもまぁ、折角やからちょっと動いてみるわ。痛かったら言えな?」
「うん」
 よいしょ、と勢いをつけて瑠玖は身を起こした。
 その反動で中の瑠玖の分身の角度が変わって、俺の中をぐりっと抉る。
「んっ」
「何や?痛かった?」
 心配そうな声に首を振った。
 こっちも指の比じゃないな・・・慣れるのが怖い。
 再び俺の腰を両手で掴んだ瑠玖は、少しずつ動き始めた。
 少しだけ抜いて、またゆっくり挿って来る。
 その繰り返し。
 決して早い動きじゃないけど、一定のリズムで内側が擦られ始めて段々と気持ち良くなって来る。
 落ち着いていた呼吸が少しずつ乱れて来る。
 瑠玖の体液なのか、俺の中の体液なのか。
 わからないけど、少しだけ湿って来たと言うかぬめって来たと言うか。
 滑りが良くなったと言うのか。
 水音はしないまでも、瑠玖の動きがスムーズになった気がした。
「っ、海月っ」
「んっ、ん、ぁ」
 また瑠玖が俺の胸元を抱き締めて来て。
 器用に腰だけ動かして居たと思ったら。
 何か耐えるみたいに息を詰めて、同時に俺の身体を抱く腕に力が篭った。
 小刻みに震える瑠玖の身体。
 俺の中に熱いモノが広がった。
 それで、瑠玖がイったんだと分かった。
 俺もそれを感じてか、触られても触ってもないのにつられるみたいにイってしまった。
 オーラの光で淡く薄青くぼんやりと光っている部屋の中。
 荒い俺達の呼吸の音が響く。
 俺は枕を握り締めて。瑠玖は俺を抱き締めて。
 まだ身体は繋がったまま。
 ひとつ違うのは、俺がお尻を突き出して無い事だけかな。
「やぱ、早かった、な」
 途切れ途切れに瑠玖が言う。
 実際の所、えっちの間に瑠玖がどのくらいで達するのか俺は知らないので
 早いとか遅いとか分からなかったりする。
 俺自身も経験が無いし、一般的な情報にも疎いのでやっぱり分からない。
 でも、今のが早いと言うのなら通常の瑠玖はどのくらい持つのだろうか。
「あー・・・このまま寝たい」
「勘弁して」
「冗談やって」
 いや、冗談には聞こえない呟きだったぞ。
 俺の頭を撫でた後、瑠玖は起き上がって俺の中から抜けて行った。
 硬度を失った瑠玖の分身はいともあっさりと抜けて行き、侵入して来た時の圧迫感が嘘みたいだった。
 ホントにえっちしたのかな、と思ったけどそれは次の瞬間掻き消えた。
 内側から何かが垂れ落ちる感覚がしたからだ。
「うわわ」
「どした?」
 タオルを持って来た瑠玖が俺の顔を覗き込んで来る。
 何とも言い難い感覚に顔をしかめながら瑠玖の顔を見上げた。
「垂れて来たみたい。瑠玖の」
「あ。そうや、中出ししてもうたんや」
 瑠玖は慌てた様子でバスルームへ駆け込むと濡れたタオルを持って来てくれて。
 どれどれと、それはそれは丁寧に拭き取ってくれた。
 出来れば自分でやりたかった・・・。
 後処理がこんなに恥ずかしいモノだったなんて思わなかった。
 一緒に俺がベッドに吐き出したのも拭いてくれて。
 最後に俺は後ろから両脚を抱えられて伸ばされた。
 完全にうつ伏せになる。
 その状態でパンツを履かされた。
 そこまでしなくていいのにー。
「あ、ありがとう」
「いえいえー」
 瑠玖は満足そうに笑ってバスルームにタオルを置きに行った。
 今度は俺も瑠玖もパンツいっちょ。
 今日はこのままで寝るのだろうか。
 まぁ、身体はまだ火照ってるからそれでもいいんだけど。
「ほれ。喉渇いてるやろ」
 顔を上げると水の入ったグラスを持って瑠玖が立っていた。
 ごろんと身体を転がして起き上がって受け取る。
 ベッドに座る格好になると、少しだけ腰が痛かった。
「痛いか?」
「え?うん、少しね」
 瑠玖の言うように、喉は渇いて居たから水はとても美味しかった。
 空になったグラスはサイドボードに置く。
 あれだけ荒い呼吸を繰り返して、声も出せば喉渇くよな。
 瑠玖もグラスをサイドボードに置いてベッドに座ると俺を抱き寄せた。
「ごめんなぁ。出来るだけ痛くせんとしよう思たんやけど」
「仕方無いよ。初めてだもん」
「せやなぁ。俺も初めてやったしな」
 額と額をくっつけてお互いに照れ笑い。
 瑠玖も初めてと聞けて俺は安心していた。
 初めて同士ならこれからお互いに上手くなって行けばいい。
「あぁ、でも。やっと海月抱けて、俺もうこの身体に未練ないわ」
「何それ」
 俺の頬からこめかみから輪郭をなぞるようにキスしながら言う瑠玖に
 笑いながら突っ込む。
 まだやっと一度出来たトコなのに、未練無いって。
 もう慣れきったとかなら分かるけど。
「えー?意味分からへんの?」
「分かんないよ、何々?」
 額から鼻筋を伝い、鼻の頭を啄ばむようにして止まった口唇。
 至近距離で目が合った瑠玖の顔は、嬉しそうな何処か期待に満ちたような笑顔だった。
 何だろう?
「転生。しようか、言うてんの」
「転生?」
 そう。
 言った口唇に口を塞がれた。
 遊ぶような、舌先を入れたり出したりするようなキス。
 捕まえようと入って来た瞬間を狙って吸ってみるも逃したり。
 同じ事を瑠玖へしてみるといいタイミングで捕まる。
 口唇を重ねたままでお互いに吹き出したりした。
 舌先と口唇が痺れかけるくらい遊んで、やっと離れた。
「もー、瑠玖には勝てない」
「勝てる思たんか」
 ベッドにごろんと転がって壁際に横になる。
 瑠玖もそんな俺の隣に転がっていつも通り、頭の下に腕を入れて引き寄せてくれた。
 やっぱりパンツいっちょで寝るみたいだ。
「転生かぁ。新しい身体になっちゃうよ?」
 せっかく初めてのえっち出来たのに。
 そう思いながら瑠玖の顔を見詰める。
 だけど瑠玖にはそんな事問題ではなかったみたいだった。
「そんなんまた同じ事したらええだけやん?」
「同じ事ですか・・・」
「そう。また楽しみがあんねん。それに知識は増えとるから同じ失敗はせぇへん」
「そう言うもんですかね」
「そう言うもんです」
 自信満々に言い切る瑠玖。
 まぁその通りかな、とは俺も思う。
 転生しても魂はそのままで記憶は受け継がれるから、俺も完全に無知って言う訳じゃなくなる。
 出来る事は増える訳だ。
 耐えられるかどうかは別にして・・・。
「オーラなってから結構時間も経っとるし、タイミングとしてはええ機会なん違う?」
「そうだね。切欠としてはいいかもなぁ」
 俺としての目標だった、転生前に一度は抱かれてあげたいって言うのも
 考えてたよりは早かったけど達成出来た訳だしな。
 オーラになってからは狩りする事も無いから目的も無いし。
 転生2次職になってからの装備品類も大体揃えちゃったし。
 そうだなぁ。俺もこの身体に未練ないかも。
「明日にでも行ってまう?ヴァルハラ」
「そうしよっか」
 確か古書を閲覧するのにお金がかかるんだったな。
 後はなんだっけ。装備品とか他の所持品類も持ってちゃいけないんだっけ。
 新しい身体になるんだから今の身体に何も残さないでおけって事なんだろうか。
「そういえばさ」
「うん?」
「新しい身体に生まれ変わったら、今の職業に縁のある所に落とされるんだって」
「縁のある所か」
 多分俺はアサシンギルドのあるモロクで、瑠玖は教会のあるプロンテラだと思う。
 装備品も何も持たないレベル1のノービスで落とされて、果たして俺達は出会えるんだろうか。
「まぁ、十中八九モロクと首都やなぁ。ギルメンに迎えに来さしたらええん違うの?」
「いいの、そんな事頼んで」
「引っ越し頼んどいて今更か?」
「あぁ、それもそうか」
 言われて苦笑する。
 その辺くらいは甘えていいか。
 と言うか、あの人達だったら頼まなくても、転生するって言っただけで迎えを買って出てくれそうだ。
 後問題があるとしたら・・・。
「後はあれか。どんくらいか知らんけど記憶喪失になるってやつか」
「うん、そうだね」
 新しい身体に魂が慣れる間のどうしようもない期間の事とは言え。
 瑠玖の事を忘れてしまうのは、切なくて考えるだけで苦しかった。
 生まれ変わってノービスになって、たまり場で顔を合わせたとしても
 お互いが誰だか分からないなんて事。想像したくないけど、想像せざるを得なかった。
「なんちゅう顔してんねん」
「だってさ・・・」
「ずっと忘れる訳やないんやし、そんな顔すんな」
「そうだけど、ちょっとでも嫌だよ」
 瑠玖は唸ると俺の頭を少し強めに抱えて揺れた。
 そして、片手を空中に向かって伸ばす。
 その先には俺達が纏うオーラの光。その粒。
 暗い部屋の中、ぼんやりと光って流れては消えて行く。
 何だか流れ星みたいだと、思った。
「ほんなら、俺はこの星みたいな光に誓うわ。お前の事だけは絶対忘れへんって」
「無理だよ」
「無理かどうかは試してみぃひんとわからんし」
 瑠玖の手の平が光の粒を握るように空中を掴む。
「それに、人の想いっちゅうのは強いんやで?」
 余りにも。
 余りにも瑠玖が自信満々に言うから。
 俺も、ふわふわと部屋の中を舞うその流れ星みたいな光の粒へと手を伸ばした。
「じゃあ、俺も。瑠玖の事だけは忘れない」
 光の粒をひとつ。
 手の平に入れて握るように空中を掴んだ。
 お互い、上に向かって拳を掲げていて。
 顔を見合わせてそれをコツンとぶつけ合った。
「ほんなら寝よか。明日は結構慌しくなりそうやで?」
「そうだね」
 壁際に全て寄せられて居た布団を引き寄せて被る。
 お互いに、おやすみ、と呟いて触れるだけのキスをして。
 頭の中では冒険者になってから今までの事を振り返りながら、明日いよいよ夢にまで見た転生を果たすのだと実感した。


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