寒い。

覚悟を決めて飛び込んだ海水は彼らの体を取り囲んで、深みへと引きずり込もうとしていた。

歯がガチガチと音を立てて鳴り、頭の中はその反響で一杯となり、ほかの事は何も考えられなかった。

おまけに、海水をたっぷり含んだ衣服は体にしつこくまとわりついた。

ネイビー色の薄暗い夜の海の底をはっていくと、うねうねと続く崖のトンネルがあった。

その一つに大きな割れ目があった。

割れ目の奥に大きなほら穴が開いているのが見える。

ダンブルドアは真っ直ぐにそこに突っ込んでいった。


やがて一メートル先のほうで、ダンブルドアが浮上するのが見えた。

はクロールのスピードを上げると、一気に海面を蹴って、急上昇した。

綺麗な水しぶきが、彼の目の前で跳ね上がり、ハリーもそれを目当てにその後に続いた。

泳ぐことは彼女の最も得意な分野の一つで、小さい頃から居城近くの小川をプール代わりに使っていた

彼女は息切れ一つせずに、海上に上がった。

反対に泳ぐことに慣れていない彼は、新鮮な大気を求め、苦しそうにやっとのことで海上に上がる始末だった。


「左様。ここがその場所じゃ」

ダンブルドアが頷いた。彼は洞窟に続くごつごつした階段のところにたたずんでいた。

「どうしてわかるのですか?」

ハリーが寒さに振るえ、歯をガチガチしながら聞いた。

「ここら中に、邪気が立ちこめ、血の匂いがするからよ」

が胸元の懐中時計についている、クリスタルの十字架をしっかりと握り締めながら言った。

「よく鼻が利くようじゃの」

ダンブルドアが彼女の方を振り返って褒めた。

「それに、もう一つ、証拠として魔法を使った痕跡があるんじゃよ」

洞窟から吹き込む冷たい海風が、ハリーの衣服がずぶ濡れだということを気づかせた。

ダンブルドアとは、ハリーに目に見えない何かに神経を集中している。

ダンブルドアはその場をあてどもなく歩き続けているし、は、両目をしっかりと閉じ、

片手に念力を集中させ、透視を開始した。


「まさか・・何か見えるの?」

ハリーが、の生命エネルギーである緑色の光がうっすらと顔を照らし始めたのを

感じて言った。

まさにそれは彼女だけが持つ、特殊能力の一つが現れ始めた印だった。

「しっ、黙って!」

は額に冷や汗をかきながら、全身経を額にそえた右手に集中しようとした。


「終わったかの?」

「ええ」

がっくりと膝をついた彼女に向かって、ダンブルドアが聞いた。


「君は入り口がどこだと判断したのかの?」


ダンブルドアは入り口らしきものが全くない、洞窟全体を見上げて言った。


「あそこです」

は迷わずに、真っ直ぐに一つの壁を指差した。

「隠し扉になってます」

「他に何が見えるかの?」

「奴らは・・人間じゃありません」

「死体が・・湖の底にうようよとあります」


「見事じゃ」

ダンブルドアは壁から離れ、杖を岸壁に向けた。

アーチ型の輪郭線が現れ、隙間から強烈な白光が射した。

「見事にあやつの仕掛けを見破ったの。君の透視能力は大したものじゃ」

「すごいよ」

ダンブルドアとハリーが感心しきって褒めちぎった。

しかし、その言葉が終わらないうちに、輪郭線は消え、入り口は完全に閉ざされた。

「私達は通したくないということですか?」

ぎくっとしては尋ねた。

「いや。そんなことはない。だが、まさか、こんな幼稚な仕掛けを思いつくとはな」

ダンブルドアは失望したように真っ直ぐ前を見据えて言った。

「通行料を払わねばならんのじゃ」

「通行料?」

ハリーが聞き返した。

「扉に何か仕掛けるんですか?」

「そうじゃ。すぐにわかった」

「それが血だということがな」


「血?」

「幼稚だと言っただろう」

ダンブルドアは,ヴォルデモートが自分が想像したほど進歩していないことに、ひどく失望しているようだった。

























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