次に
達が受講したのは新任のスラグホーン教授が担当する魔法薬学の授業だ。
教授が変われば教室のイメージもがらりと変わる。
いつも湿っぽくてかび臭い匂いのする地下牢教室は、煮え立っているいくつもの鍋の中の魔法薬
の香りのおかげで、みずみずしく爽やかな雰囲気をかもしだしていた。
、ハリー、ロン、ハーマイオニーは無意識のうちにくんくんと鼻をひくつかせ、数ある魔法薬の鍋の中で、最も芳しい金色の液体の匂いをか
ごうとしていた。
「これ、この香り、レーヌ・デ・フルール(花の女王)に似てるわ!」
「赤椿の花のこと?うーん、私はフリージアの香りに似ている気がするわね・・。」
「僕はマホガニー材の香りに似てる気がするなぁ」
「嗅ぐ人によって色々な香りがするのかもな・・糖蜜パイの匂いがする・・うー、ああーたまらないなぁ」
四人は何だか幸福な気持ちになり、様々な意見を述べ合うと何て魅惑的な香りなんだろうと思った。
担任のスラグホーン先生はでっぷり太った人のよさそうな老人で、黄金の髭が口の両端からピンと跳ねていた。
ギンガムチェックのチョッキは体にぴったりと張り付いており、立派な太鼓腹のおかげでボタンが今にもはじけ飛びそうだった。
そして、ハリー、
、それにスリザリンのザビニが教室に入ってきた時、彼は教卓から熱烈な歓迎の
挨拶をした。
「さて、さて、授業を始めようか。皆、秤と魔法薬キットを出して。それに上級魔法薬の教科書もだよ」
生徒たちが席に着いたのを確認すると、スラグホーン先生は言った。
「本日は、皆が興味がありそうな魔法薬を用意した。NEWTを終える頃には
ここにある薬を煎じることが出来るようになっているだろう。そこでちょいと質問しよう。
まだ未調合でも名前を存じているはずの薬だ。えー、これは何という薬かね?誰か、分かる者?」
スラグホーンはスリザリンのテーブルに一番近い鍋を指差した。
とハーマイオニーの手が同時に挙がった。
「おや、同時に手が挙がったな?うーむ、それじゃ、そちらの黒髪のお嬢さん」
スラグホーンは一瞬、迷ってから
を指した。
「この薬は真実薬です。無色無臭で服用した者に無理やり真実を話させます」
「よろしい!大変よろしい!」
スラグホーンは満足そうに彼女を眺めて言った。
「それじゃこの薬はどうかな?
数年前、ミナ・ブラド女伯が手を加え、実現不可能だと思われていた新しいタイプ
ものを完成させた。さぁ―誰か?」
ハーマイオニーの手がすっと挙がったが、
は顔を曇らせ挙げようとした手を引っ込めた。
「はい先生、それはポリジュース薬です」
「よろしい。ではブラド夫人が完成させたのはどのようなものかね?」
「動物への完全な変身が出来る副作用なしの薬です」
ハーマイオニーがすらすらと答える中で、
はぎゅっと唇を結んでうつむいていた。
ミナ・ブラド女伯爵――再び、その名前を聞くたびに悪夢が蘇る。伯母は自分を守ろうとしてヴォルデモートに殺されたのだ。
その後、
の手が再び挙がることはなく、ハーマイオニーの手がスラグホーンの質問に
片っ端から答えていく有様だった。
「君の名前を伺っていなかったな?」
ハーマイオニーが出された質問に矢継ぎ早に答え、全て正解した後にスラグホーンは感心しきった顔で尋ねた。
「ハーマイオニー・グレンジャーです。」
「グレンジャー、グレンジャーね。ひょっとして
超一流魔法薬学協会の設立者のへクター・グレンジャーとつながりはないかね?」
スラグホーンは古い記憶を手繰り寄せながら言った。
「いいえ、ないです。私はマグル生まれですから」
ハーマイオニーはきっぱりと答えた。
マルフォイとノットがそれを聞いて、嘲笑ったが、いつものように
は睨みつけることなく
ぼんやりとしていた。
「そして、ミス・
。さすがブラド夫人の姪御さんだ。数ある無色無臭の薬の中から、最も判別しにくい真実薬を正確に
引き当てるとは!よろしい、ではミス・グレンジャー、ミス・
が獲得した二十点を
グリフィンドールに差し上げよう!」
スラグホーンはワハハと高笑いすると、教卓に戻り、本格的な実習についての話を始めた。