「先生、大変です!フェリシティー・ さんの容態が急変しました!!」

「ええっ!?何だって」

なごやかに癒者達がコーヒーを楽しんでいる仮眠室に血相を変えた看護婦が飛んできて言った。

彼女はあのナースステーションで居眠りをしており、挙動不審の男がフェリシティーの部屋から

出てきたのを変に思い、様子を見に行ったところ顔色が土気色に変わっている患者を発見したのであった。




その頃、フェリシティーから遠く離れた病室ではプリペッド通りからやってきた

ハリー・ポッターがお粥を銀のスッカラグ(スプーンの一種)ですくって食べている を見つめていた。


「来てくれてとても嬉しいわ」

彼女は美味しそうに粥を口に運びながら言った。

「食欲もだいぶ出てきたみたいだね」

ハリーはホッとして言った。なにしろ、彼女は初めて意識が戻り、今までの経過を知った時、

絶望のあまりうちしがれ、ショックで泣き叫び、食物が何も喉を通らない状態だったのだった。

「明日、頭骨が完全にくっついていれば退院なの」

彼女は今度は、柳模様のプレートに盛られた色とりどりのナムル(ホウレンソウ、ゼンマイ、豆もやしのあえもの)と鶏の唐揚げを箸でつついていた。

聖マンゴはとてもサービスのきいた病院で、アジア系の患者向けに考えた

栄養バランスのよい料理を出してくれる。


昨日はお粥と鱈の中華風あんかけを美味しく頂いた。

ハリーはこの場において不謹慎なことながら、グーグーお腹がなってきた。

家に帰れば真っ暗なキッチンで、ペチュニア伯母さんのしなびたサラダとパンとチーズしかないことが

いやいや想像出来るからである。


ダ―ズリー一家はハリーが夜間、彼女の見舞いに行くという大それたことをしぶしぶながら許可していた。

それは彼の名付け親の圧力を利用した策略のおかげである。

彼らにはまだシリウスが死んだことを知らせていなかった。


「少し持って帰って食べたらどう?夕食まだなんでしょう?」

そんなことを考えながら椅子にもたれて考えていると、彼女が心配そうに口を開いた。

「ダメだよ。君が全部食べなきゃ元気にならないよ」

ハリーはぎょっとした顔できっぱりと断った。

まさか物欲しそうに盆を見ているのを悟られたのだろうか?

彼の心臓はバクバクと激しくなった。

「あの人達、ちゃんと食事を用意してくれてるの?」

はため息をつきながら、まだ箸をつけていない唐揚げを紙袋につめていた。

「ああ、うん、もちろんだよ」

彼は唐突な発言にとっさに嘘をついた。

「ほんとにもういらないの。箸をつけてないから綺麗なままだし、食べてくれない?残すともったいないし」

彼女は彼の顔を覗き込むとやさしく言った。

の目にはハリーがシリウスの死も重なって、家でろくに食事をしてないことが

いっぺんに読み取れた。


その証拠に黒の半そでシャツからつきでた腕はやせていたし、緑色の目は飢えた野良猫のような光をまし

おまけに頬骨が突き出ていた。



結局、残った唐揚げをもらい、名残惜しいながら病院内をあとにしたハリーは

歩きながらゆっくりと味わった。

とにかくそれはまだ熱かったし、少しはお腹はふくれた。


もっと病院にいたかったのだが、あまり遅いとおじさんたちが

気が変わって「もうお前を病院に行かせない」などとわめくかもしれない。


そうなると面倒だ。


僕は彼女の側を出来るだけ離れたくないのだから。


とくにかつての恋人のことをすっかり忘れてしまった彼女の側からは・・。




夜気が肌をさしたが、幸せな時間を過ごしてきた彼にはなんら感じなかった。













































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