ここのところ、公爵の様子がおかしい。
妙に機嫌がよく、天気のいい日にはを狩に連れ出し、天気の悪い日には
彼女に剣術を教えたり、古い書物を一緒に読んだりした。
部下の兵士達は、いち早く無歓の変化に気づいた。
彼は彼女が来てから、よく食べ、よく笑い、冗談を飛ばして喋った。
そればかりか、部下に対する態度も以前よりずっと優しくなった。
兵士達は初めは得体の知れないが、公爵の愛人のように振舞うのを
にやにやしたり、眉をひそめて軽蔑していたのだが、時が経つに連れてだんだん態度が軟化し、いつのまにか誰もが
未来の公爵夫人として丁重に接するようになった。
光明の元部下だった也力だけは、ぶすっとしていたが。
「公爵夫人か・・」
冥界の女王から下界の最下位の人間へと堕落、そして、王妃なき今、それと並ぶ最高位につけるなんて!
今では兵士達の噂には尾ひれがつき、あらぬところまで話が進んでいることだろう。
その証拠に私とすれ違う兵士が深々と頭を下げるのだもの。
はうっとりと肘掛け椅子に体をうずめ、前王妃傾城が身に着けていた
豪華な装身具を手に取りながら呟いた。
新しい魅惑的な地位への希望は彼女をわくわくさせた。
だが、彼の気持ちをどうすれば傾城から遠ざけられるのだろう。
いやいや、あの光明大将軍だって、あともうちょっとのところで引っ張れたのだから
わけはない。
大きな安堵が彼女を安心させた。