二ヵ月後。

鬱蒼とした雑木林に続々と暗黒武術会の参加者が会した。


「それにしても人間臭えな~」

「わざわざ食われに来たのかい、お嬢ちゃん?」

角や牙が生えたおぞましい妖怪連中が、冬枯れた木にもたれかかっている人間達を見て冷やかしてくる。


「余計なお世話よ。それに私は半分は妖怪なんだけど・・」

パウダーピンクのサテンの中国服に身を包み、艶やかな黒髪に真珠の髪飾りを巻きつけた

雪花はむっとして呟いた。

周りは一つ目や三つ目などのおぞましい姿の妖怪ばかりで、 雪花、蔵馬、飛影、桑原みたいな

まともな容姿をしているものは一人もいなかった。

「浦飯の奴、遅ぇな~な~にしてやがるんだ?」

「肝心のメインメンバーも一人欠けたままだし・・」

ダッフルバックを担いだ桑原、白絹の男物の中国服に身を包んだ蔵馬は心配そうに呟いた。

「そのことについては大丈夫。浦飯さんがもう決めてあるって」

「ぬぁにぃ!?あいつ、この俺様に知らせんと 雪花ちゃんだけに教えたのかよ!!」

「だって、私と浦飯さんは霊界探偵と正式なその助手だもの。連絡取り合っててもおかしくないでしょ?」

「女か男かは来てみてのお楽しみだって」

濃紺の学生服に身を包んだ桑原の素っ頓狂な声は、 雪花のぱっとした花のような微笑みにかき消された。

「よっ、待たせたな!」

「浦飯、てめえ、すげえ遅ぇじゃないか!」

ほの暗い木立の陰から小さな戦士を伴って現れた幽助に、桑原ははらはらして叫んだ。

「悪い悪い。なんせ、みっちり仕込んだおかげで体中がたがたでよ・・」

「浦飯さん!ちょっと・・そんな体で大丈夫?」

「よう、 雪花じゃねえか。その衣装よく似合ってるぜ。一瞬、別人かと見間違えたぐらいだしよ・・」

すかさず、蔵馬の隣にいた 雪花が駆け寄ってきてダッフルバックを取り落としそうになった

彼に寄り添った。

幽助もまんざらでもなさそうな顔で 雪花の礼装を褒めちぎった。

「ところで、まさかお前の後ろのチビが六人目のメンバーじゃないだろうな・・」

飛影は、幽助の影に隠れるように佇む小さな戦士を一瞥して言った。

「ぬぁにぃ!?こいつ!!こ、これ、狸の置物じゃねえのかよ・・」

「こらっ!失礼よ。桑原君」

背丈の高い彼が相当注意して見下げないと分からないほど、背丈の小さい戦士に向かって放った一言を聞きとがめて

雪花は注意した。

「おいおい・・大丈夫なんだろうな。こいつ、風でも吹けば飛びそうな感じだぜ」

「だからやめなさいってば!後でどうなっても知らないわよ」

「けどよう 雪花ちゃん、俺はどうにも納得が・・」

「安心しろ。最強の助っ人だぜ」

桑原と 雪花がひそひそと小声で議論する中、幽助は妙に自信たっぷりだった。


数十分後、怪しげな船長の招きで大型客船に乗り込んだ六人はメインデッキに佇んでいた。

大海原を静かに走行する客船を眺め、桑原は「どこを見渡しても化け物ばっかじゃねえかよ。可愛い姉ちゃんは 雪花ちゃんぐらいなもんだぜ・・」

とぼやいていた。

「それにしても殺風景な船だな」

飛影までもが何も見るものない船旅に退屈しきって言った。

「これは豪華客船でのクルーズじゃないからね」

蔵馬がふふっと笑って付け加えた。

「ディナーはなし。何だか気が利かない船ね~」

「ほんとっすねぇ~俺も何せさっきから腹ペコで」

雪花がふぁあとあくびしかけ、桑原が愛想良く相槌を打った時だった。

「あ~お集まりの皆さん、ご静粛に。船が目的地に着くまでの間、ちょいとした余興といっちゃあ何ですが、この船上で武術予選会を

 行いたいと思いやす」

マイク片手に私室から出てきた眼光の鋭い船長は言った。

いきなりの提案に妖怪や 雪花達はざわめいた。

そして、その言葉どおり、ものの数分もしない内に、船内からスーッと特大のリングがせりあがってきた。

「この船上で島まで行けるのはたったの一チーム!!」

「チームの中で最強と思われる選手を選んで下せえ。あの上でバトルロイヤルをして、最後まで勝ち残った者が出たチームのみに

 首括り島での決勝トーナメントへの出場権を与えやす」

船長の提案に 雪花は首を傾げ、桑原は「俺達、大事なゲスト様じゃねえのかよ・・」

と不満げに呟いた。




「面白い、奴が行く気だぜ」

しばらくして飛影がにやりとした。

いったい誰が、屈強そうな輩がいる中に飛び込んでいくんだと桑原がわめいていると、

小さな戦士が一人静かにリングに向けて歩き始めた。

「あ、私も!あ、あの~私もご一緒してよろしいですか?」

一人リングに向かう小さな戦士を心配した 雪花は、さっと駆けていくと

周囲に聞こえないぐらいの声で呼びかけた。

「やれやれ・・物好きな子だね。ま、あの父親にしてこの娘ありってとこかね。好きにおし。

 ただし、私の足手まといになるんじゃないよ」

白い頭巾で顔を隠した覆面戦士は彼女をちらりと見てから、またすたすたと歩き出した。


「あ~あ~あ~ 雪花ちゃん、勝手に行っちゃっていいんすか!?それにあのちっこいのも・・冗談じゃねえぜ!

 あの二人が負けちまったらどうするんだよ!?」

「俺達結局出番なしでとんぼ帰りかよ!?」

桑原は、二人のか弱そうな女戦士を指差してぎゃあぎゃあ喚いていた。



屈強そうな妖怪がざっと十名はいるリングで、覆面戦士と 雪花はたたずんでいた。

「まずは一番弱そうな奴から始末するとするか・・」

「へへへ・・あの娘っ子とチビだ」

早速大柄な妖怪どもがにたにた笑って、二人に目をつけ始めた。

「これだから、品性もへったくれもない奴がうじゃうじゃいる魔界に行きたくないのよね・・」

雪花は峨嵋刺をすちゃりと構えると呟いた。

「死ねえ!!小娘にチビ助がぁあ!!」

血に飢えた妖怪どもは、野獣のように牙や爪をむき出して二人に襲いかかった。

覆面と 雪花の目がぎらりと危険な光を帯びた。

次の瞬間、妖怪どもは覆面の繰り出す霊光弾(幽助の繰り出すショットガンに似ている)と、 雪花が峨嵋刺を

頭上で振り回して作った霙嵐(みぞれあらし)にやられて吹っ飛ばされていた。

「す、すげえ・・二人とも一発で全員ぶっ飛ばしやがった・・」

「だからあの女に関しては心配いらんといっただろう」

「ちなみに 大城さんは最初からあの技が出来たたわけじゃない。ま、俺との特訓の成果とでもいっておきましょうか」

「何故、それを俺に言う?」

「さあ・・あなた内心ではけっこう彼女のこと心配してたみたいですから・・」

恐れおののく桑原、一見冷静を装っているが、本音は別のところにあった飛影、

蔵馬はくすりと笑って、二人の男達を見ていた。




というわけで暗黒武術会編始まりました~ヒロインは浦飯チームの補欠メンバーですがよろしくお願いします~!!

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