その頃、霊界では人間界で妙な動きがあるという情報が入ってきており、早速、ぼたんが

かいに乗って出動していた。


「蔵、じゃなかった、南野君も例の虫見た?」

「ああ、俺も女の子達に寄生する前に始末したからよかったけど・・」

「やだなぁ・・なーんにも起こらなければいいけど」

「そうですね・・」

夕日の差し込む私立盟王学園の教室ではと蔵馬がこそこそと昼間見た

虫の存在について話し込んでいた。

「じゃ、私はこれで帰るね。駅前の本屋さんに注文していた本取りに行かなきゃ」

「おっと、俺もそろそろ部活で使う水槽の準備しなきゃ。

 じゃ、気をつけて帰って下さいね」

「それじゃまた明日」

そこで彼らはがたりと椅子を引いて立ち上がると、一緒に廊下へ出た。

(俺もそろそろ行かないとな・・・さん、もうすぐあんたも南野も

 面白いことになるぜ)

そんな黄昏時、自転車置き場から真紅の自転車の掛け金を外す

校舎の裏庭から眺めていた海藤は不適な笑みを浮かべていた。


「なーんですって!?幽助のやつ、喧嘩しにいっちゃったって?」

「たーくっ、なんちゅう奴だろうね。責任感がないったらありゃしない!」

所変わって皿屋敷中学。濃紺の制服を着て紛れ込んだぼたんはコエンマからの指令をすっ

ぽかした彼の所業に素っ頓狂な声を上げていた。

「たぶん、今頃、相手をぼこってどっかいっちまってるぜ」

夕日の差し込むがらんとした教室では桑原が肩をすくめているところだった。

「もーう!助手たるさんはもう下校してどっかに出かけてるみたいだし。

 この際、桑ちゃんでもいっか!」

ぼたんは細く白い指を顎に当てて考え込むと結論を出したのだった。


「下校時間になりました。校内に残っている生徒は速やかに下校して下さい」

夕闇が迫る私立盟王学園では生徒達の下校を促すアナウンスが穏やかに流れていた。

生物学教室では白衣を着た蔵馬が試験管を振って薬品を調合しているところだった。

「蔵馬〜、蔵馬、どこだ!?」

「ちょいと桑ちゃん、声が大きいよ!」

が下校して間もない時間に事件は起こっていた。

幽助が連れていたプーから事情を聞いた桑原、ぼたんは駅二つ向こうの

私立明応学園に踏み込んでいた。



「おおう、いたいた!探したぜ!」

生物学教室の扉を足蹴りにして吹っ飛ばした桑原、それに恐々と寄り添う

ぼたん、蔵馬は一瞬、何が起こったか分からず目をぱちくりさせていた。

「今夜十一時、ろくろ首町四次元屋敷にて待つ。何人でも可。ただし、桑原、飛影、

 蔵馬、の四人は必ず来ること。この条件を守らぬ場合、

 浦飯幽助の命は保障しない」

桑原から手渡された紙を黙読した蔵馬の顔色がさっと変わった。

「おめーこれに心あたりあるか?」

「いえ、全く。だけど、犯人はなぜさんや飛影との繋がりまで知っているんだ?」

桑原の問いかけに蔵馬は首を傾げるばかりだった。

「私も分からないんだよぉ。幽助に出されていた指令をちゃんにも

 報告しに行こうと思った矢先にこれだからね」

蔵馬の視線を受けてぼたんは至極困り果てた顔で呟いた。

「とりあえず、おめー先輩に連絡取れるか?なんせ、飛影の居場所はまるっきし

 検討もつかねーし、十一時まであと五時間しかねーしよ・・」

「そうだな。俺にも飛影の居場所は皆目分からない。

 ともかく、今、一番連絡がつきやすいのはさんだ。

 先に彼女に連絡してみますよ」

桑原の問いかけに、蔵馬は制服のポケットをまさぐると黒っぽいポケベルを取り出して

メッセージを打ち込んだ。

が予約注文していた本をカウンターで受け取った時、突如、それは鳴った。

彼女は書店の店員から本を受け取るとそれを鞄にしまい、いつも持ち歩いている

オフホワイトのポケベルを取り出した。

いったいこんな時間に何だろうと丸っこいボタンを押すと液晶画面に

「キンキュウジタイ ユウスケサラワレタ クラマヨリ」の

簡潔な文字が表示された。

「あ、来ましたね」

「いったいぜんたいどうしたの?あの浦飯さんが攫われたって?」

「実は・・まず、これを読んでみて下さい」


書店から比較的近い歩道橋に駆けつけてきたを蔵馬は出迎え、

早速、例の脅迫状を差し出した。

「なんにしろ、私達の名前と繋がりを知っているといえ、

 そいつら只者じゃないわね・・」

さっと文面を読み終えたの顔は引きつっていた。

「まーそこなんすよ。先輩。それに今一番困ってるのは飛影の野郎の居場所が

 検討つかねえってことで・・先輩、何か分からないものですかね?

 どーにも蔵馬まで知らないって言うものでですね」

桑原がその脅迫状の話の続きを引き取って言った。

「んーこの間、家にお茶飲みに来たからそう遠くへは行ってないと思うけど」

は細く白い指を顎に当てて考え込んでいたが、ぱっと閃いて叫んだ。

「えっ!?あの野郎、先輩の自宅に堂々とお邪魔してるんすか?」

「なぁーぬにぃ〜あの野郎、女子生徒たる先輩の自宅にうらやまけしからん・・」

「あんた、本当かい?まぁ〜私も初耳だよ!!」

さん、飛影とはそういう間柄なんですか!?」


驚きながら詰め寄る三人を見ながら、

は(何か余計に話がややこしくなっちゃったな)と肩をすくめた。

























 








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