達が雑魚兵を必死で食い止めてくれたおかげで、サスケは人質を取って逃亡を図った天邪鬼に追いつき、

連れ去られそうになっていた従弟を無事助けることが出来たのだった。

そして季節は巡り、彼らは今日もまた妖怪退治の旅に出かけていた。

は例のごとく、バスの心地よい揺れに誘われ、最も安心できる鶴姫の肩にもたれて

短い仮眠を貪っていた。

彼女は夢を見ていた。

今見えるのは、白煙と霧が立ち込めるぞっとするほど寒い洋館。

そこの一室では艶やかな黒髪を垂らした端正な顔立ちの立派な銀の鎧兜をまとった男が、傷ついたの母親を手当てしていた。

(どうして?何故?)

(あなたは敵じゃないの?)

はその男、ある暑い夏の日に闘った鶴姫の父親に呼びかけた。

だが、彼の長い指が彼女の瞼に伸ばされ、途端に瞼は開けたくても張り付いたように開かなくなってしまった。


ようやく重い瞼が開いた。

あの男が側で自分を見守ってくれている。

「鶴姫・・・」

(嫌だ、こんなの・・)

男は切なそうに実の娘の名前を呼び、を抱きしめようとする。

は綺麗な黒眉をぎゅっと寄せ、嫌がって白面郎の腕から逃れようとした。

「待て!」

(裏切ったくせに!!)

彼女はたまらずに捨て台詞を吐き、彼の腕を乱暴に振り切って冷たい風が吹き付ける洋館の中を駆け出した。





バスが急に減速し、森のなだらかな小道のど真ん中で停まった。

「おい、誰だよ・・こんなとこにけったいな箱置いた奴は・・」

バスを運転していたサスケは、ステップをひょいっと飛び降りるとぽつんと小道のど真ん中に

放置された段ボール箱を見つめた。

先ほどまで居眠りしていたも短い睡眠から目覚め、何事かと他の仲間達の後に続いて

バスのステップから降り立った。

皆が怪訝そうに箱の前に集まり、サイゾウが何の気もなしにそれに手をかけようとした時だった。

ダンボール箱がぐいっと開き、中から元気いっぱいの大量の仕掛け花火が飛び散った。

サスケはとっさに一番近くにいた鶴姫を、ジライヤも遅ればせながらわずかに彼の影に

隠れるように立っていたを庇った。


そして更に悪いことは重なるもので、鬱蒼とした樹林の木立から、三人の悪ガキが顔を覗かせ、

爆音に驚いて互いに抱き合って縮み上がったサイゾウとセイカイ目掛けて黒ペンキの塊を投げつけた。

それは運悪く、数メートル離れていたジライヤにもかかった。

サスケ、は悪童達から距離が離れていたので被害を被らなくても済んだが、

お気に入りの服を汚された三人の男達の怒り様は並大抵ではなかった。

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