「待て、この小僧!」
男忍び達は唖然とする女忍び二人を残して、蜘蛛の子を散らすように
性悪なガキどもを捕まえようと森の奥へと突っ走った。
だが、そこはガキどもの方が数段上手で色々な木立や茂みの影にロープや
落とし穴を仕掛けており、前方しか見てなかったサスケ達を次々と罠に陥れていった。
それでも何とか鶴姫、の協力もあってほうほうのていで性悪なガキどもを
一人ふん捕まえることが出来たのだった。
ところ変わって大川の河川敷。
今、サスケ、鶴姫、ジライヤ、の四人は黒ペンキをかけられたサイゾウやセイカイの
服を洗濯しているところだ。
そんな四人を尻目に、サイゾウ、セイカイは洗濯物が乾くまで
バスタオルを腰に巻いて急場をしのいでいた。
もちろん側に捕まえた性悪なガキどもの一人を連れてきて、みっちり絞り上げているところだった。
他の足の速い悪がき二人からだいぶ遅れたその子は鶴姫、に運悪く両側から
挟まれてしまい、怒り狂ったサイゾウ、セイカイに引き渡されてきたのだった。
一方、その頃、友人の一人を人質に取られてしまった悪がき二人はこっそりと
忍達の後をつけてだいぶん離れた藪から双眼鏡で様子を伺っていた。
二人はまずそうにあの強そうな六人では勝ち目がないことをひそひそと囁きあった。
これを絶好の機会といわんばかりに、背後で怪しげなワンレンの栗色の髪の女が立っていることなど露知らずに。
「やっと終わった!」
鶴姫は最後に男物のブルージーンズを洗濯用ポールに引っ掛けるとふうっと一息ついた。
「しばらくは裸足だけど我慢してね」
「ううっ、俺達被害者なのに納得いかねえな・・」
黒ペンキがかかったシューズまで洗ってくれた鶴姫の言葉にセイカイは悲しそうに呻いた。
「あれ、あいつら・・」
とサスケは何気なく森が広がる土手の方を振り返った。
そこには四人ほどのドロドロが面白そうに、プラスチックテーブルに座ってくつろぐ忍達を眺めているではないか。
二人の表情がさっと曇った時はすでに遅し。
どこからともなく伸びてきた碇のついたロープに男達三人の靴が引っ掛けられ、あっという間に
土手で待ち構えていた悪がきどもに奪われてしまったからである。
悪がきどもは「靴を返して欲しけりゃここまで来い」とあっけに取られる六人を
挑発し、盛んにはやしたてた。
「このクソガキ!」「靴返せ!」と口々に喚きながら男忍三人が
裸足で土手を駆け上っていったのは言うまでもない。
鶴姫はぼんやりと三人の名前を呼んだが、戻ってくるはずもない。
は「あの悪がき達の親の顔が見てみたいわね・・」と何だか保護者めいたことを呟いた。
「さっきドロドロがいたんだ」
「え!何でここに?」
サスケはここで真面目な顔で隣にいた鶴姫の肩をつかんで語りかけた。
「お前も見たよな?」
赤のカットソーのシャツにチョーカーを首に巻いたサスケは、隣でボケ−ッとしていたに
話を振った。
「え、あ、そう!私もちらっと見えたんだけど四人ほどこっちを伺ってたみたい・・」
急に話を振られたはうんうんと頷き、サスケに相槌をうった。
「こいつは妖怪の罠かもしれねえ・・サイゾウ〜お〜い、戻って来い!!」
サスケは声を張り上げて一番古い付き合いの友人の名前を呼んだが、それは嬉々として
猫丸の後ろから顔を覗かせたドロドロ達によって遮られた。
「ここは俺に任せろ!」
「うん・・」
サスケはさっと後ろを振り返り、青ざめた鶴姫にどうすべきか合図した。
「、お前も・・あれ?」
サスケがもう一人の女の子にも合図しようと首をねじった時、ささっと弾丸のごとく
女忍びの影が通過していった。
は助走をつけて勢いよく走っていくと一人のドロドロの膝に一発目の蹴りを入れ、敵が痛そうにうずくまった
ところを二発目の回し蹴りを顔面に入れてノックアウトさせた。
それを見止めた鶴姫は、この場は素手での格闘に優れている二人に任せて慌てて三人の男忍びを
追うために駆け出していった。