「放して放してってば!!」

閑静な夜の住宅街にだだをこねる少女の甲高い声が響く。

「嫌だったら嫌だってば!」

子ども扱いの上手いサイゾウは、必死に彼の手を振り解こうとする

少女を抑えておとなしく家に帰るよう粘り強く説得していた。

「嫌、私、どうしてもヌッペフホフに会いたいの!!」

そんな彼の努力もむなしく、少女はがんとして聞き入れない。

「いい加減にしなさいよ!!この、このわがまま娘!!」

とうとう頭に来たが、少女の頬に平手打ちを食らわした。

サイゾウは何が起こったのか理解するまで時間を要し、少女は叩かれた頬を押さえて目を潤ませた。

少女はしばらくを睨みつけていたが、ぷいと二人に背を向けると、

泣きながら暗闇の中を駆け出していった。

「あ〜あ・・泣かしちゃった・・」

サイゾウは気まずそうに呟いたが、はフーンと顎を反らせてから

とりあえず心配なので少女の後を追うことにした。

「こんばんは、お二人さん。ヌッペフホフです〜♪」

サイゾウとの二人がさあ駆け出そうとした時、公園の茂みから

色鮮やかな影が飛び出してきて二人の行く手を防いだ。


ハロウィーンのジャックオランタンのような風貌の妖怪は、挨拶代わりに

紫色の舌を鞭のように繰り出してきた。

サイゾウ、はさっと左右に分かれてそのベタベタした長い舌を避け、

彼の頭上を軽々とジャンプして飛び越えると、北と南から挟み撃ちした。


「現れやがったな、妖怪!」

サイゾウのやけに男らしい声に、先ほどまで泣きながら坂道を下っていた少女はぱっと顔を輝かして振り返った。

先手必勝とサイゾウの飛び蹴りがヌッペフホフの顔に二回直撃し、さらに彼は手裏剣を乱れ打ちした。


「そんな・・確かに当たったはずなのに!」

は驚愕して叫んだ。

サイゾウはそれでもひるまずに、今度は忍刀を抜いて勇ましくヌッペフホフに切りかかっていった。

「妖怪野郎、もう手加減しねえぞ!」

サイゾウが勇ましく忍刀を逆手に構えて突っ込んでいこうとした時、「やめて!」

と悲鳴をあげて先ほどの少女が乱入した。

「春香ちゃん、来ちゃだめだ!」

サイゾウの腕をつかみ、必死に押さえようとする少女。それを見たは「あ、危ない!」

と一声短く呟いた。


次の瞬間、長いヌルヌルした舌がサイゾウと少女の顔を撫で、二人は

あっけなく空高く舞い上がって落ちた。


「ご馳走様!、次は貴様の番だ!」

ほくほくした顔でヌッペフホフは、忍刀を逆手に構え、絶体絶命のピンチに陥った女忍びに狙いを定めた。

「待ちやがれ!に手出しはさせねえぞ!」

その時だ。闇をかきわけて、威勢のいい江戸っ子口調とともにサスケ、鶴姫、セイカイ、ジライヤの四人が

疾風のごとく現れた。

「現れたな、忍びの衆!」

ヌッペフホフはだみ声で吼えると、口からゲップ爆弾を吐き出した。

は素早い反射神経で、坂道を転がってその攻撃を避け、サスケはさっと前転で煙の中を突破すると

起き上がりざまに、大型十字手裏剣を投げつけた。

ブーメラン型の大型手裏剣が鼻に直撃した妖怪は怯み、ううっと低くうめくと

逃げの姿勢を決め込んだ。


、大丈夫か?」

サスケは坂道を転がり落ちてツバキの茂みの中に突っ込んだ、を引っ張り出すと尋ねた。

「私は何とも・・それより二人は!?」

ははっと起き直り、他の仲間たちと連れ立ってサイゾウと少女の下へ駆け寄った。

「ああっ!」

「うあっ!」

うつぶせに倒れていた少女をひっくり返したサスケ、セイカイ、ジライヤは悲鳴を上げた。

「うわっ、サイゾウ!」

セイカイの悲鳴、「春香ちゃんは無事か?」と聞き返すサイゾウ、

彼の変わり果てた姿に唖然として手で口元を覆うサスケ、鶴姫、のおそるおそる発せられた声。

「ま、まさか・・」

彼は最悪の事態を予感して自分の顔に触れてみた。

「ない!俺のモテモテの顔がない!」

そう、彼の目や鼻や口があった部分は今や奇妙な平べったい感触が残っているだけだった。

あまりの奇怪な出来事に腰を抜かす忍び仲間、その周りを狂喜乱舞で飛び跳ねる

一人の少女。そして、大ショックで気絶するサイゾウが公園に取り残された。



翌日、猫丸の中では一人タオルケットを頭まですっぽりと被り、悲嘆に暮れるサイゾウの姿があった。

一方、単独行動が危険と考えた、セイカイ、サスケは三人、ジライヤ、鶴姫は二人に分かれて手分けして

ヌッペフホフの行方を追っていた。



「あっちい・・あっちいよ・・」

だらしなく浜辺に寝転がるのはセイカイだ。

「サスケ、頼む。ちょっと休もうぜ・・」

彼は懇願するように相棒に頼み込んだ。

「俺、あっちいのは大っ嫌いなんだよ〜」

「たくっ、だらしねえな・・なあ、?」

「死ぬ・・私も熱いのダメ・・」

「忘れてた。こっちもか・・」

サスケは砂浜にぺたりと座り込み、暗緑色の鉄扇を取り出してバサバサと

乱れた髪の毛をあおぐ彼女を見つめて困惑していた。

「それにしてもヌッペフホフの奴、いったいどこへ行きやがったんだ?」

サスケが腰に手を当てて、海鳥の鳴くのどかな港町をぐるりと眺め渡した時だった。

チリンチリンと鐘を振って、自転車に跨ったアイスキャンデー売りが近づいてくる。

「ああっ、ありがたい、天の助けだ!」

「ラッキー!」

「あ、おい・・」

「待って、私も限界!」

先を争うように駆け出した二人の男女にサスケは呆然としていた。

「おじさん〜アイスちょうだい!」

「あ、私にも。いくらですか?」

「へいへい、毎度ありぃ」


砂浜に腰を下ろし、セイカイ、はむさぼるように水色のアイスキャンデーを頬張った。

「あ〜やっと生き返ったぜ」

「美味しいね!」

「うん、この清涼感、たまらないよね〜♪」

「はは・・うまいうまい・・」

とセイカイが嬉しそうにアイスの感想を言い合ってるのを、大人びた顔で

適当に相槌を打っているのはサスケだ。

「ヌッペフホフのことがなければ、このままここで海を見ていたいな〜」

「おいおい・・」

サスケの呆れる顔もなんのその、は、ラインストーンやフラワーモチーフを散りばめたブラックサンダルの

留め具をちょっと緩めると、インディゴブルーのデニムスカートから覗く生足を

気持ちよさそうに伸ばした。

それが何気なく視界に止まってしまったサスケは、アイスを食べるのもそっちのけで

ぼけーっと露出した生足に見とれていた。


はイギリス帰りの帰国子女のせいか、時々、こちらをどきまぎさせるようなオープンな振る舞いをする。

同じ女忍でも、鶴姫は必ず、夏服の真っ白なワンピースの下にお揃いのストッキングをはくのに

彼女はいつでも素足だ。

(しかも、俺がばっちり見てること全く気付いてないんだよな〜)

サスケはそんなことを考えながら、再びアイスを齧った。




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