二人はカントリーハウスのポーチの前で睨みあい、向かい合った。
腰を落とし、レイピアーを構えるミラ、忍刀を逆手に構える。
は少し考えてから暗緑色の頭巾を取った。彼女のこげ茶色のポニーテールがふわりと揺れた。
先に踏み込んだのはミラだ。
レイピアーの長い切っ先がの喉笛に迫る。
は両手でレイピアーを受け止めて弾き返した。
ミラはしつこく突きを続け、は攻撃しようにも1mもの長さを誇る洋剣に
阻まれ、上体を低くしたり、高くしたりしながら忍刀で長剣を受け止めることがせいいっぱいで
うかつに近寄れずにいた。
何度目かの突きを後ろ宙返りで交わした時、はお得意の逆手切りで挑むのは不利だと
判断し、忍刀を逆手持ちから通常の握り方に持ち替え、顔の真正面に構えた。
ミラが素早く突いてきたが、は先ほどとは打って変わって、向かってきた長剣を
バシッバシッと跳ね上げ、確実に叩き落していた。
「その構えは富田流の小太刀か・・」
攻撃の全てを跳ね返され、吹っ飛ばされて地面を転がってきたミラはくやしそうに
レイピアーを構えたまま言い放った。
「それもお絹が教えたのか?」
「洋剣返しの秘策として・・」
ミラは顔の真正面で油断なく忍刀を構えるに向かって尋ねた。
「なぜお祖母ちゃんの名前をお前が知っているの?」
その言葉を耳に挟んだは、酷く動揺し始めた。
「知っているとも。私はお前と同じ公儀隠密の流れを汲む者だからねぇ・・」
「お絹は昔、腕の立つくノ一だった。富田流の小太刀を使えたかは知らないけどね」
「ええい!」
「や〜っ!!」
一方、こちらはこちらで本気を出したジライヤとガリの死闘が繰り広げられていた。
先ほどとは打って変わって、ガリの拳を全て受け止め、頬や腹に連続パンチをぶちこむジライヤ。
彼はジライヤの蹴りをもろに腹に食らい、勢いよく吹っ飛んで葡萄樽の棚にぶつかった。