SWEETS





きゃあきゃあと、抗議の声を上げて身を捩る。コーヒーの粉が辺りに飛び散ってかぐわしい香りが立ち上る。
「もうっ。片付けなきゃ、メンフィスってば、ちょっと放してって。」
「いやだ。待てない。」
「ちょ・・・そんなこと言ったってさっきから何も食べてないじゃない。私はともかく、貴方は甘い物嫌いでしょう?
 何か食べに行きましょうよ。」
「・・・・・じゃあ・・・・」
唇を奪われる。熱い胸の中に囚われてしっかりと抱き締められる。
先刻シャワーを浴びた二人はバスローヴを纏っただけで、完全に乾いていないお互いの髪から同じ香りが立ち上る。
「お前を食べる。」
そう、囁かれた。





再び、先刻より深い口付け。
「わ・・・私もいい加減お腹空いたの。ちょっと遠いけど、美味しいパスタのお店があるからそこへ・・・・」
「喰え。」
箱から取り出したダークチェリーパイが、口元に差し出されていた。
「・・・・・」
受け取ろうとすると、先刻のように押し込まれた。
何とか噛み砕き、飲み込むと、メンフィスがくすくす笑いながら唇の端に付いたクリームを舐め・・・顔を顰めた。
「・・・甘い・・・やっぱり甘い物は苦手だ。」
「だから。食べに行きましょうよ。サーモンのレモンパスタが絶品なの。」
「俺もチェリーパイが良いんだ。」
「だって甘い物は・・・あ・・・」
「甘い者なら好きだぞ?」
「ばか・・・・」
キャロルの瑞々しいチェリーのような唇に吸い付いたメンフィスの唇。熱い吐息を漏らしながら、我を忘れて何度も重なり、求め合う。
やがて男の唇が頬をすべり、白い首筋を伝い、肩に触れてバスローヴをはだける。
「ほら・・・ここに・・・」
言いながら、指が片方の頂を摘む。キャロルが身をくねらせる。
「こっちにも・・・赤くて・・・」
咥えて転がすと、白い喉から呻き声が漏れる。
「あ・・・ん・・・・・っ」
「二つもあるぞ・・・堪能させてもらおう・・・」
「あ・・・ん・・・ふっ・・・んん・・・・・」
二つの実を味わうように交互に口に含み、転がしながら、片手で腰を抱き、もう片手でバスローヴの帯を落す。
そして現れた滑らかな肌を、ゆっくり丁寧に愛撫してゆく。背から括れた腰、滑らかな双丘へと。
「やだ・・・・こんなに明るいのに・・・・」
「心配するな・・・」
言いながら、なおも腰を撫で回し、尻を揉んでやるとキャロルはたちまち悦びの声を上げた。
「あ・・・・・あ・・・・・・」
「気持ち好い?」
「・・・とても・・・・」
うっとりと潤んだ瞳はメンフィスだけが欲しいと訴えている。この顔が、この俺を此処まで来させた。
これからも、この瞳だけを追い掛け続ける。
後から更に指を進め、秘密の花園へと向かう。キャロルが身悶える。
「あ・・・そんなこと・・・ああ・・・」
キッチンの壁に華奢な背を押し付け、足の間に膝を入れて両足を広げさせると、しなやかな指は自信を持ってキャロルの女を悦ばせようと動き始めた。
「あ・・・んん・・・ああ・・・あああ・・・・・」
指が亀裂の中を彷徨い、花びらを開き、宝珠を擦り、泉を弄ってゆく。愛しげに、丹念に。
もう何度も抱かれているはずなのに、キャロルの肢体はメンフィスが抱くその度に、新しい魅力を見せる。
「ねぇ・・・おねが・・・い・・・せめて・・・ベッドへ・・・」
「待てない。」
指を入れてやる。キャロルの嬌声と腰を振る動きがもっと艶かしくなる。
白い内腿を伝い、蜜があふれ出す。
「ああ・・・あはあ・・・ん・・・も・・・だめ・・・」
青い瞳がとろりと潤み、メンフィスが指でかき回す動きに合わせて、卑猥な水音が明るいキッチンに響き渡る。
堪えきれずに褐色の首に腕を廻し、しがみ付いてくる。足に力が入らなくなっている。
白い下腹をメンフィスに押し付けてきて、己の男がいきり立つ。
我慢して、更に挿れた指をかき回す。
「あっ・ああっ・ああっ・あああっ・・・・・っ」
力の抜けた腕が首に掛かり、重みを増す。腕を解かせると白い肢体はずるずると滑り落ちて床に尻を付いた。
背を壁につけ、膝を立てたまま、蜜を溢れ零す花園がメンフィスの目の前で震えている。
だが悦楽に我を忘れたキャロルは、まだとろんとしている。
床に手を付き、唇を塞ぎ、己の物を焦らすように沈めてゆく。
青い瞳が見開かれ、あわせた唇の間からくぐもった嬌声が溢れて落ちる。
「んんっ・・・くうう・・・・・っ・うう・・・んん・・・っくうぅんっ」
余りの快楽にぶるぶる震える白い太腿を抱え、更に奥まで押し付け、擦り付ける。
もがいた腕が再びメンフィスの首に絡まって強い力で抱き締めて来た。
――ああ、この女だ。俺が本当に欲しかったのはこの女だ。――
――ああ・・・もう逃げられない。もう逃げない。――
「お前だけだぞ・・・二度とは言わないからな・・・何処へ逃げても・・・例え地の果てへでも・・・捕まえに行く。」
「にげ・・・ないわ・・・もう二度と・・・貴方といっしょに・・・何処までも・・・行くわ・・・」





それは二人だけの約束。黄金の髪と漆黒の髪が混じり合い、褐色の肌と白い肌が結びつく、二人だけの記憶。
出会う前から分かっていた。きっと自分は半身を見つけた。欠けたもの、決して失ってはならないものを手に入れた。
だから。
「メンフィス・・・・メンフィス・・・私の・・・・大切な人・・・」
「俺の半分・・・・俺の・・・・・キャロル・・・・・ッ」
メンフィスが呻き声を上げて動き出す。深く深く。もっともっと。何処までも連れて行く。
キャロルが悦びの声を上げて応える。もっともっと。もっと遠くまで。一緒に行くわ。何処までも。
「ああっ・あああっ・あう・う・う・いいっ・も・いくっ・いくのっ・いく・いく・いくう・・・・・っ」
白い尻が痙攣し、熱塊が爆発する。
「最後の声は、どちらが上げたのだろう。
「ああ・・・・・っ・・・・あいしてる・・・・・・っ」





荒い息を吐いた二人が、気だるげに笑みを交わす。お互いの髪を撫で、再び唇を重ねる。
二度と放さない。
貴方と、何処までも一緒に行くわ。
明日は帰ろう。マンハッタンへ。二人が初めて出合い、暮らしていく、あの街へ。
「腹が減った・・・・・・」
「私も・・・・・」
二人の腹が同時に空腹を訴えて、目を見交わして笑ってしまった。
床がコーヒーの粉だらけで、着崩れたバスローヴは茶色くなり、気付くと二人の髪もコーヒーの香りがする。
「シャワーを浴び直して食事に行きましょうよ。夕食は貴方の好きな物を作ってもらうわ。・・・・・ああ、床がざらざら。」
「帰りにはどんなスウィーツが良い?ピーチパイにするか・・・ダリオール・ショコラか・・・」
「そうね・・・どっちも美味しそうね、迷うなあ・・・あ、明日は何時に出発する?おばさんにお願いしてサンドウィッチを用意してもらうから。」
「じゃあ土産はダークチェリー・パイだな。」
「それは・・・・・」
キャロルが顔を赤らめる。
メンフィスは高らかに笑うと、お互いの乱れ切ったバスローヴを軽く整え、キャロルの腰に手を回してバスルームへと誘った。



                                                               END



                                                 KA-Z様に頂いた「CREAM」を読んで、むくむく妄想が湧いてしまい、
                                                 一気に書き上げた代物。(笑 アダルトばーじょんで御座います。
                                                 桃色ばーじょんはKA-Z様宅へご奉納。


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