エラガバルス帝 

〜ギボン先生曰く「史上最低の君主」〜

ギボン『ローマ帝国衰亡史』第6章より

エラガバルス帝


その1

エラガバルス帝、あなたやる気ないでしょ



月元は、「ローマ帝国に関する短い解説」で、ローマ皇帝の任務は、ローマ帝国の外と中の敵を叩き潰して、平和を守ることだと書きました。ローマ皇帝が、ローマ帝国の敵になった場合は殺されるとも書きました。

ですが、これも時期は限られています。少なくとも、コンモドゥス帝のお父上のマルクス・アウレリウス帝まででしょう。

ネロ帝が殺された(というか、自殺させられた)のは、ネロ帝がローマ帝国の敵になったからです。 ですが、「変態皇帝の時代」つまりコンモドゥス帝以降は、そんなのもう、どうでも良くなっていきます。つまらない嫉妬やいがみ合いの宮廷政治が当たり前の世界になり、


あ〜何だかよくわからないけど皇帝になっちゃった。あ〜? あらっ?何だか知らないけど暗殺されちゃった。


みたいなノリです。

・・・・・てのは暴論だとしても、皇帝がコロコロと変わり(たいてい暗殺される)、しかも、変わる理由も、もはや、ローマ帝国という国家のためとかいう大義名分もなくなってきてしまいます。

確かなのは、この時代、人々の心は荒みきっていたこということでしょう。最高権力者にして国父を、下の者が簡単に殺してしまうような事態は、明らかに異常です。

エラガバルス帝は、なんだかよく分からないうちに皇帝にかつぎ上げられました。その時、わずか14歳。14歳ですよ。たったの。

ガンダムじゃないんだから。リリーナやカガリを彷彿させるものがありますね。なんだか。

細かい事情は省くとして、エラガバルス帝は、皇帝になっちゃった時、シリアにいました。 シリアってのはだいたい、イスラエルとか中東のあのへんです。地図を見てください。で、皇帝になっちゃったから、首都ローマに行かなきゃならなくなりました。

ギボン先生にご登場願いましょう。


ところで、この新皇帝、実に下らん遊び好きの人物だっただけに、シリアからイタリアへの都入り一つにしても、贅沢三昧、実に一年近くをその道中にかけた。


やる気ねーだろ。これはひどい。地図で見ると、シリアからローマまで結構あります。高低差も入れれば、陸路で4000キロくらい。船だと2500キロくらい。船を使って急げば2ヶ月、長くとも4ヶ月はかかるでしょう。でも1年ちかく、物見遊山ってのはエラガバルス帝、正直、やる気無さすぎです。仮にも、最高権力者ですよ。

で、やる気のないエラガバルス帝は、ローマにいる元老院に、自分の細密画像を送らせます。まあ、写真(じゃなくて絵だけど)だけでも先に行かせないと、さすがにマズい。その像をみて、元老院議員達もすっかりやる気をなくしてしまいます。


それはメディア人風、あるいはフェニキア人風に、長く緩やかに裾を引いた金色絢爛たる絹の大神官服を着け、頭には、高い三重の冠、さらに夥しい首飾りや腕飾りには、それぞれ評価を絶するほどの宝石類をちりばめた姿で描かれていた。黒々と引いた塗り眉毛、両頬には赤と白の化粧すら施されていた。


説明しましょう。ローマ人が建国から地中海全域の支配者になるまで、ひたすら戦争したことは前に述べました。つまり、ローマ人は「ドラゴンボール」のサイヤ人同様の戦闘民族です。戦うことが高貴。戦士であることが誇り。これが、ローマ人です。

勿論、戦士だけで、社会は構成できません。ローマ人全員が戦士なわけじゃないんですけど、メンタリティとして、男らしさや質実剛健さを重視する傾向が、ローマ人にはありました。こういったメンタリティはもう、無くなりつつありましたが、無くなったわけではありません。

だから、豪華でオシャレな服を着て、アクセサリーとかいっぱいつけて、お化粧なんかしてという女々しい格好というのは、許せないものだったでしょう。しかもその人を国父とあがめなければならないというのは屈辱でしかありませんでした。

ローマ皇帝、ってのは、少なくともマルクス帝までは、普通の人と同じ格好をして、普通の人を同じような質素な生活をすることが当たり前のことでした。戦士集団をまとめるには、こういう風でなければダメなんです。ローマ皇帝は、質素であり、剛毅であり、高潔で、精神は誇り高くなければなりませんでした。これは理想にすぎませんが、それにしてもエラガバルス帝の言動および格好が、ローマ皇帝として、ふさわしくない事は間違いありません。

ローマ皇帝は、いざ戦争となれば、それを陣頭指揮しなければならない立場なんです。「アイツ軟弱だ」「やる気がない」とか部下になめられたら、戦争に勝てっこありません。戦争に負けるということは、国民を守ると言う最低限の義務を果たせないことになります。いかにエラガバルス帝の言動が非常識であり、その格好が論外だか、分かってもらえたでしょうか。 この人に比べれば、方向性は間違っていたけど、一応は強かったコンモドゥス帝が、すこしはマシに見えるから不思議です。
■その2


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