思いついたネタで短編……その7

少し分かりにくいかも。歴代王朝×中華。



涼しげな目元を上げて、彼女は覇者を見詰めた。
今度の男はたいそう野蛮だ。
前の男たちが彼女を守るために建てた巨大な壁――万里の長城を越えてやってきた。
遠い草原を治める男の息子らしいが、今まで彼女をものにしてきた男たちが
そうであったように、彼もまた、彼女の影響を受けて、すぐに漢化するだろう。
彼がどれだけ彼女を蹂躙しようとも、彼女の本質は変わらない。
覇者が己を保とうと無駄な悪あがきをするのも楽しいから、
彼女は含み笑いをしながら、見せつけるように帯を解く。

職人の粋を集めた頭飾りが、ちりちりと音を立てて揺れる。
上等の絹のガウンが散らばって、色とりどりの模様をつくる。
覇者が彼女を押し倒し、輝く白磁の肌を舐め、熟れた陰部を曝け出した。
ぬらぬらと光る胎内に分け入れば、そこは暗黒の大陸、淫靡な底なし沼。
絡み付いて離さない肉襞は、果てのない悦楽。
男たちを虜にし堕落させる器に、覇者は侵入し、うめいて達し、子種をばら撒く。
彼女の芙蓉のかんばせは、人々を惹きつけて止まない甘い蜜。
だが、朱色の唇にのっているのは酷薄さ。柳の眉に秘められているのは傲慢さ。
濡れ羽色の黒髪が流れ、ほんのり色づいた薄桃色の頬を覆う。

黄色い大河のほとりで、彼女は生まれた。
名を中華。世界の中心に君臨する女王、ただ一つの華。
男たちは彼女と交わって、支那となる。
最初の男は、もう覚えていないくらい古い幼馴染。
次の男は強引ではあったが、よく彼女に尽くし、その後の彼女の原型を作った。
その次は卑しい出の男で、彼女に広く世界を見せてくれた。
彼らが彼女を巡って争うたび、覇者が生まれるたびに、彼女は肥え太る。
西域を、江南を、蒙古を、満洲を、ヒマラヤ山脈を呑み込み、版図を広げる。

覇者は彼女を繋ぎとめるため、様々な策を凝らした。
だが、彼はすぐに老いてその玉座を追われる。
それは、何度も繰り返された歴史。
空位になった玉座を巡って男たちが争うのも、いつものこと。
彼女は欠伸一つして新しい覇者を待つ。
毛色の変わった男。海から来た男。亡命先から帰ってきた男。
彼女を獲得したのは、赤い表紙の本を掲げた、皇帝を名乗らなかった皇帝。

そして今、彼女は再び、覇者が老いつつあるのを見詰めている。
男たちは騒ぎ出し、群雄割拠の兆しが見える。
これもまた、繰り返される歴史。








微妙な解説 (簡単中国史)

統一   ………………(殷・周)

分裂   ………………(春秋・戦国)

統一   ………………(秦・漢)

分裂   ………………(三国・晋・五胡十六国・南北朝)

統一   ………………(隋・唐)

分裂   ………………(五代十国・北宋・南宋・遼・西夏・金)

統一   ………………(元・明・清)

分裂   ………………(アヘン戦争あたりから)

統一   ………………(中華人民共和国)
↓ ←いまここ
分裂?



中国が将来、分裂すると言われている理由の一つは、統一と分裂を繰り返してきた歴史から。
……というおはなし。
(区分については諸説あります)

 

 

 

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