注意: このSSは『無理矢理的アンザク裏SS』です。 苦手な方はご注意下さい。 本編沿いなのでシリアス傾向です。 ぬるいです。 …最初に謝っておきます。 色々ごめんなさい!!!! 頭が割れるように痛む。 この狭い路地裏に充満するように漂う血臭の所為だろうか。 否、この血は自分のものだ。それに血の臭いなど、戦場で嫌と言うほど嗅ぎ慣れている。この程度で頭痛がしていたらきりがない。 (だとすれば…これは…いつもの…) ここ最近、頻繁に頭痛がするようになった。こんなに酷く痛むようになったのはいつからだったろうと記憶を辿れば、ホランダーやジェネシスから己の正体を聞かされてからだと知る。 正体を知る前から…いや、生まれた頃から、頭痛とまでは行かないまでも何かしらの違和感を自分の中に感じていた。 何かが語りかけてくるような、別の意思に思考を邪魔されるかのような。 それでも誇りと夢を追い続けていた頃はそれを封じておくことが出来た。“ 自分 ”を乱されることなく、貫き通すことが出来たのだ。 だが、一度迷ってしまった途端にこれだ。弱いところを突くように、飲み込むかのように、心に巣食っている闇が触手を伸ばしてくる。思考を塗り潰され、自分ではない何かが脳を支配しようと這いずり回るのだ。それが頭痛を引き起こしている。 “ 自分ではない何か ”―― ジェノバ。 『時々頭の中に霧がかかったようになる』 ザックスにはそう説明した。だが、あの時よりも確実に症状は悪化している。 このまま行けば自分はどうなってしまうのか。 本当のモンスターに成り下がってしまうのか。 そんな風に不安に思った側から、そこを突くようにして闇が噴き出す。 もう、どうすることも出来なかった。 (ザックス…っ) 救いを求めるようにその名を呟けば、ふっと心が軽くなった気がした。あの太陽のような明るい笑みの持ち主を思い浮かべると、何故か苦しみが和らぐのだ。必死になって頭にかかった霧を掻き分けザックスとの思い出を辿ろうとすれば、徐々に意識がはっきりしてくる。 (そう、そうだ。今日もあいつと会う約束をしていて…) 今日もザックスとスラムの片隅で会う約束をしていた。しかし待ち合わせ場所へ向かう途中で“ 発作 ”に襲われ、油断した隙に一般兵数人に見つかり、その結果がこの有様だ。一般兵を辛くも撃退し、この路地裏へ逃れたものの、自身もかなりの傷を負ってしまった。 それでもザックスに会いたい一心で体を起こす。彼に会って直にその笑顔を見れば、どんな苦しみも途端に吹き飛んでしまうから。 そう思って塀に手をつき、歩き出そうとしたところで――― 見てしまった。 大通りからこの路地裏へと入る入り口の向こう―― 明るい場所を歩くザックスと、その傍らで穏やかな笑みを浮かべているセフィロスの姿を。長い間親友として付き合って来たが、あんな風に笑うセフィロスを見たことがない。そしてザックスの表情も、信頼する相手に向けるそれになっている。一目見て彼らの絆が深まったのが分かる。 ザックスの隣を離れたのは自らの意思だ。巻き込みたくないからなどと、最もらしい理由をつけて。だが、いざ今まで自分がいた場所に違う人間が立っているのを見ると、どうしようもないほど黒いモノが胸の奥底から湧き上がってくる。 それは、嫉妬とも呼べるドロドロとした感情。 (ザッ…クス…っ) 頭痛と吐き気が酷くなり、目の前が暗転し、そして―― ジェノバの嘲笑が、響いた気がした。 →NEXT |