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もし本当にそういうことなら、いっそ気が楽というものだ。人の形をしているだけで中身は化け物だというのなら、積極的に討ち倒すことも致し方ないし、それに手を貸すことも…、理屈としては間違っていない。
だが、そう思い込もうとすればするほど、鳴り響くサイレンを真横で聴かされているかのように、イライラと頭が軋む。
山崎には、元からその発想は無理なのだ。スラィリーを一頭駆除したことにさえ、彼の頭脳は戸惑いを感じた。それ以上は云うまでもない
この感情は今夜の戦いにおいて、きっと命取りになるだろう。それも自分ひとりの命ではない。永川や森野の命もまた、間接的にでも、危険に晒すことになるかもしれない。その状態で大役を安請け合いすることは…、できない。

できないと言ったら、永川はどうするだろう。腰抜けと言って罵るだろうか、そして溜息のひとつもつくだろうか。
いや、そんなことを恐れているのではない。永川に比べればどのみち腰抜けには違いないから、そう思われようとも構わない。
素直に罵倒してくれるならまだマシなのだ。山崎にとって面倒なのは、裏切りと思われること。何せ永川はひねくれ者だから、そのくらいの解釈はするかも知れない。
永川に協力できないということで、即ち目の前の永川よりも山中のどこかに潜んでいる梵を惜しんだとは思われたくない。どちらかの味方をしたい訳ではない。そんな訳がない。
どちらの味方もしたくない!

「そもそも戦いが起こらんように、何とか、誘導できひんかなー」

行き詰った思考が逃げ道を探し始める。

「無理かー…」


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