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「ところで。あ、食べながらで失礼しますが」
「…いえ。どうぞ」
「折角来てくださったのだから、報告もついでに」
「何か、変わった動きが?」
「これといって動きはないです。物量作戦ですね」
これも井端が持参したペットボトルの緑茶のキャップをゆっくりとねじりながら、山本は言った。
「数で押せると判断したんでしょう。見くびられたもんだ。…いや、冷静だと言うべきかな」
「…というと?」
「挑発に乗ってこないんですよ。…稀にノイズのような動きをする機体があるのは少し気になりますがね。
戦線を随分押したのに、頑としてコンピューター制御をやめようとしません。中佐はどう考えますか」
「それは、山本大尉とまともに戦える者が文京軍にはないのでは」
「ハハハ。年長の部下に囲まれてさぞかし御苦労なさってるんですな、ハハハハハ」
突然響いた山本の大きな笑い声に、室内の誰もが振り返る。言われた井端は全身のゼスチャーを使って慌てて否定した
「違います、そんなつもりは。私はただ…、」
「何も言わんでいいですよ。どうぞ、本音の考察を」
「……持久戦を狙っている、かと」
「そうですね」
サッと頬を引き締めると、山本はゆっくりとうなずく。
「もっと言えば…、機会を窺っている可能性もあるでしょうねえ…」
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