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やはり連れてくるべきだったか…、だが、いくら広島は危険が多いといったところで自分は戦闘行為を依頼されたのではないし…、目立つ行動は極力避けるべきという判断は妥当だった。目立ちたくなければすなわちドアラは無理だ。それに、人間同士の争いごとにドアラを巻き込むことは主義に反する。
とかく自分の判断で連れてこなかったのであるから、いまさら迷っても仕方がない。
驚くべき速さで腹を決めると、じりじりと時間をかけて一歩、また一歩…、彼は地面を擦るようにして後ずさった。

「一体どうなってしまうのかー」

相手は人間ではないから、急いて動かず、かつ害意のないことを態度ではっきりと示せば襲ってこない。…かもしれない。
間違っても、走って逃げたりしてはいけない。いかに俊足であっても人が犬より速く走れるはずがないからだ。重要なのは驚かさないこと。

…精々30歩で来た道を、7、8分ほどもかけて後退し…、蔵本はどうにかゴーストタウンの端まで辿り着いた。
もう野犬の声は聞こえない。そして、灰色にくすんだみやげ物の店の向こうには、この街に不釣合いなほどに立派な駅舎が、陽光を反射して輝いている。
徒歩5分にして、眩暈のするようなギャップ。果たしてどちらが現世なのか。
その合間、道ゆく人々に混じり銃を担いだ大柄な男たちが大勢うろついている。こんなところで、これから、アテもなく人を探すのだ。先が思いやられるなどという言葉では到底表現しきれない。

「やっぱ断ればよかったかな。でもあの顔はな。相当キテルわ」


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