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ガイエルは、スッとした所作でその親書を差し出した。大沼はそれを両手で受け取ると、その宛名書きを見るなり、またガイエルの顔を見た。

「所沢解放戦線青の獅子、大沼幸二総帥、帆足和幸様…?」
「そうです。後ろの御仁にも、ぜひ読んでいただきたいと」
「…失礼」

大沼は腰の短剣を抜いて、糊付けされた親書を開封した。そして中の薄い書簡を取り出し広げると、ガイエルに向かって言った。

「音読してもよろしいですかね」

その必要性がわからず、ガイエルは怪訝な顔をする。それを見て大沼はすぐにこう付け足した。

「部屋の外へ聞こえるような声は出しません。ただ…、こいつは字が読めませんので」
「わかりました。結構。どうせ大したことは書いていないですから」

内心はともかく、大沼の言葉に動じる様子を見せずにガイエルはそう言ってうなずいた。
ここでガイエルが動揺を見せなかったことに帆足はわずかの感謝を覚えると共に、それが驚かれもしなかった自分について、今更のように自省した。

「えー。『このたびは尽力感謝している。しかし我々の戦いはまだ始まったばかりだ。
 これは関東一円の今後を左右する戦いになる。失敗すれば遠からず、聖都も所沢も、そのほかの都市も文京に飲み込まれることだろう』ここまでいいか?」
「…」


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