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☆ ☆ ☆

横浜、海軍第一基地。
普段は屋内まで潮風の薫るこの施設も、この日ばかりは緊張感ですべてが満たされていた。
昨夜の輸送車襲撃事件を受けて、未明からさまざまな情報が錯綜している。下々に流れる憶測はもちろんのこと、軍の上層部にも真相は一切伝わっていないのだから当然だろう。
しかし、それも仕方のないことだ。何しろあの事件には、横浜軍は一切、関わっていないのだから。

「あっ佐伯。なんか新しい話聞いた?」
「なんも」

食堂に置かれた自動販売機から、ちょうどコーヒーの注がれたばかりの紙コップを取り出そうとする佐伯を、同じく海軍将校の石井琢朗が呼び止めた。

「噂はよーさんあるけどな。ちゃんとした奴はなんも」
「ここまでの確実な情報は?」
「輸送車2台が基地の直前の路上で爆発炎上?」
「やっぱそれだけだよなー」

石井は同じ自販機からホットレモンを購入すると、それを手に食堂のテーブルについた。その向かいに佐伯がヒジをついて座る。

「なんで何も聞こえてこないんだろ?」
「わからん…」

湯気をたてるホットレモンを軽くすすり、石井は溜息をついた。


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