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「来てたのか」
「ナー」

永川に声をかけられ、男は立ち上がって応えた、しかしすぐに視線を床へ落として言った。

「俺を、連れ戻しに…、」
「いや偶然だ。お前が仕事を請けるかどうかは俺の知ったことじゃない」

その訳ありそうな様子を意に介することなく、永川は淡々と応えた。

「それに、今度の仕事はこちらさんと組むから、お前は気にしなくていい」
「え、」

男は驚いたように顔を上げて、まず森野の顔を、次に永川の顔を見た。

「組むって…、俺が休んでるからか」
「別に。成り行きだ。こちら森野と言ってな、ま、経験はともかく、実力はお師匠さんも保障してくれてる」
「でも」
「俺だってその気になれば仕事仲間くらい見つけるさ。だから何も気にしなくていい」
「……」

信じられないといった表情で男はしばらく永川の顔を見つめていたが…、やがて森野に向き直ると、深々と頭を下げた。

「森野さん、林昌樹です。よろしく、お見知り置きを」
「こちらこそ…、」

森野もそれに応えて挨拶をしようとしたが…、しかし、その言葉は途中で途切れた。下げた頭を戻した林は森野に視線を向けなかった、それどころか顔も背けてしまったからだ。
その様子を見て、永川が林に声をかける。


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