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あなたにとって総帥とは。前夜、胸中に浮かんだその大きなテーマに、岸はアプローチをかけたつもりだった…、
しかし答えを得ることはできなかった。
しばらくの間、沈黙が車内に停滞する。そして…、
一見するとなんの変哲もない街角に、岸は車を停めた。ここが客人との待ち合わせ場所だ。

「…まだ来ていないか」
「そのつもりで出てきましたから。来訪自体がシークレットなのでこんな乗用車で来てますけど。なんせ相手は国賓です。まさか待たせるわけには」
「わかってる」

そのあたり果たして帆足がわかっているのか岸は不安だったが、わかっていると本人が言うので、まずはひとつ息をついた。

「…そんな客の迎えに、よりによってなんでこいつが、って思ってんだろう」
「え、いや…」

帆足の突然の指摘に、岸は口ごもった。それはアジトを出てくるときにまず最初に浮かんだ疑問だったが、顔のアザ、その他の話題に流され、そのままになっていたものだ。
しかし、岸はまたその理由を聞くことができなかった。間もなく、向かいからやはり白い車があらわれ…、後部座席から人が降りるのが見えたからだ。


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