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今日の帆足はよくしゃべる、岸は右へ切ったハンドルを戻しつつそう思った。あるいは、もしかすると彼は…、元より、イメージほどに寡黙な人物ではないのかもしれない。
思い返せば、昨夜輸送車を待ち伏せているときにも、帆足は小野寺を相手に軽口を叩いていた。

「違う。だいぶ昔の話だが、仲間が秘密警察にしょっぴかれたんで、沼者がブチギレて、取り戻しに行くとか言って外へ飛び出しやがってな。
 あのころはまだ俺達も人間少なくて、みんな家族同然だったからな、気持ちはわかるが…、こっちの居場所変えるのが先だろ。んで、俺が慌ててひっ掴んで力づくで止めようとしたら、奴め。思いっきり暴発しやがった」
「…そんなことが」
「ま、そんな話よりゃ喧嘩でついた傷ってことにしといたほうが、聞こえもいいし、わかりやすいからな。そういう噂になってんなら、まぁ、それはそれでいい。
 わかってたんだよ、俺ごときが身体張ってそんなことすりゃ、どうなるかなんてこたぁな。それなのにお互い何考えてたんだか。何も考えてなかったのか。
 まあ、あれ以来だな……、奴は人前で怒ったり悲しんだりすることはほとんどなくなった」
「へぇ…」

岸の口から思わず感嘆の声が漏れた。大沼がいつもヘラヘラしていることには、そんな理由があったのだ。


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