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その青い毛皮に抱かれた男、梵英心は梵倉寺の嫡子にして、スラィリー折伏術の第一継承者。
兄・義和を差し置き幼少から父の手により鍛えられ、また成長してからは前田智徳門下でさらに鍛えられ、才気豊かで、気性は快活、将来を嘱望された存在だった。
そして親友永川勝浩を、ごく普通の人の道から外したのも、この男だ。そのときは軽い気持ちだった。家に住み込みで、だれか子供を修業させることになると父が言うので、それなら勝浩がいいですと、進言したのは彼だった。
本当なら、もっと幼い子供が適しているはずだった。しかし彼が健在でいる限り、二人目の継承者はさほど実力を持つ必要もない。
そう、本来、永川勝浩は、せいぜい次の世代へ術を継承させることができればいい程度の、スペアでしかない存在だった。

それを、道程半ばにして、己の背負うべき重責を放棄し、挨拶もなしにすべて押し付けて、あまつさえ仇敵となった自分を勝浩は恨むだろうか。恨むだろうか…、恨まぬはずがない。
奴はいつか、自分の押し付けたその使命を帯びて、絶望のいろをした瞳をもって、侮蔑の視線を俺に向けるだろう。
そして、この首を狙うだろう…。


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