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「…すまない。愚問だな。お前たちは待機していてくれ」
小野寺は自嘲気味に笑ってかぶりを振ると、手勢に指示を出し、そして女の腕を掴み、立ち上がるように促した。
その掴み方を見て、これは不意を突かれたら逃げられると直感した岸は、縛ってある手首を強く掴んだ。女が溜息をつくのが微かに耳に入る。…やはりか。危ないところだった。
「帆者、連れてきました」
「…余計なのがついてきてるようだが、まあいい。出口を塞いでおけよ」
帆足は小野寺に一切問うことをせず、岸に渡された女の襟を乱暴に掴むと…、いきなり、その身体を箱へと打ちつけた。
「うッ」
今まで固く沈黙を守っていた女の口から声が漏れる。
「わかってんな?俺はそこのボンクラとは違うぞ?」
腕を縛られているためうまくバランスが取れず、女は倒れそうになった。その胸倉を掴み直し、帆足は女に顔を近づける。
「この箱の中身は何だ」
女は答えない。顔を歪め、そっぽを向いて視線を横へ逸らす。
「早いとこ答えたほうが身のためだぞ」
…答えない。このままでは本当に何をしでかすかわからない、早く口を割ってくれ…、と、小野寺も岸も、祈るような気持ちで見つめている。果たして次には何を言い出すか…、
「…犯されてぇのか?」
帆足はそう言うと、左手を女のベルトのバックルへ掛けた。女の表情が一層強張る。
「帆者、やめろ!それは駄目だ」
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